連載

なんで上級者のピカチュウはギャラドスに10万ボルトを撃たないの? ポケモンガチ勢が語る「ポケモンバトル」の面白さと奥深さ芸人ヤマクエの「俺のゲーム愛を笑うな」(1/4 ページ)

「ソード・シールド」で「レーティングバトル」デビューしたい人向け。

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 「ポケットモンスター ソード・シールド」が発売されるのは11月15日。「ポケットモンスター」シリーズ待望の完全新作がNintendo Switchで楽しめることもあり、早くも大きな盛り上がりをみせています。

 「ポケモン」といえば、かわいいポケモンたちをはじめとした個性豊かなキャラクターたちが大きな魅力。しかし、ポケモンをこよなく愛するガチ勢たちが特にハマっているのはポケモンたちを対人戦で戦わせる「レーティングバトル」。ニコニコ動画やYouTubeで注目を集めたレーティングバトルは今やポケモン界の中でも人気コンテンツの1つとなっていますが、豊富な知識や鋭い読みが必要となることが知られており、ハードルが高いイメージがあるのも事実。「YouTubeでポケモンバトルの動画を見ることはあるけど、どう戦えばいいか分からない」……そんな人も多いのではないでしょうか。

 「せっかくポケモンの新作が出るんだから、ポケモンバトルのノウハウを教わりたい……!」そう思いたち、「芸人界最強」を自称するポケモン芸人・ヤマグチクエストさんからレーティングバトルの魅力について教えてもらうことにしました。ポケモントレーナーは対人戦でどんな読み合いを繰り広げているのか、上級者と初心者は何が違うのか、そんなバトルの疑問も、これで少しは理解できるはず……!

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ライター:ヤマグチクエスト(Twitter

笑いを忘れたゲーム好き芸人。中でもRPGやシナリオの思い入れが強く、「伏線」「考察」と聞いただけでよだれが出る。あと野球も死ぬほど好き。一番好きなゲームは「ポケットモンスター」シリーズ。
過去にねとらぼで取材した記事:「ゲームやってない奴って話がつまんなくないですか?」 ガチゲーマー芸人「ヤマグチクエスト」のゲームへの異常な愛情

「レーティングバトル」の魅力を解説する人と聞き手


ヤマグチクエスト:
プレゼンする人。ガチゲーマーでお笑い芸人。「カブト」の厳選のために28時間ぶっ通しでプレイするほどのポケモントレーナー。「サワムラー」のことはなんとも思っていない。


たろちん:
聞き役。ねとらぼ編集部で働いてる元ゲーム実況者。ポケモンは「緑」「サン」をプレイしたくらいで、レーティングバトルはやったことがない。好きなポケモンは「サワムラー」。

通常の「ポケモンバトル」と「レーティングバトル」の違い


本日お教えいただくテーマがポケモンの「レーティングバトル」ってことなんですけど、そもそもレーティングバトルって何?


そうですね、レーティングバトルという言い方をするとよくわかんないと思うんですけど、要するに“ルールが競技的に明確化されたポケモンバトル”ってことですね。ガチ勢がやるポケモンバトルだと思ってもらうと分かりやすいかもしれません。


普通にストーリー進めていくときのポケモン対戦とは別のルールが設定されてるの?

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まぁそういうニュアンスで大丈夫です。ちなみにポケモン対戦のことはどのくらい知っていますか?


えっと、ポケモンを6匹連れて行って全部やられたら負け、っていうのは分かるレベル。小学生が通信ケーブルつないでやってるみたいな。


いつの話だ。でも、その通信ケーブルつないで対戦していた時代から、トレーナーがポケモンに道具を使うのは禁止されていましたよね。さらに今は6体連れていってもそこから3体を選んで戦うことになっていて、ポケモンに道具を持たせることはできるけど、同じ道具を2体以上に持たせたり同じポケモンを2体以上使ったりするのも禁止。さらに、どんなにレベルを上げても50レベルに均整化されます。そうしてなるべく平等でかつ自由度を損なわないようなルールが設けられているのがレーティングバトルですね


ああ、なるほど。ゲームのストーリーの中でできることに制限をかけて戦略性を高めたものがレーティングバトルってことね。


そういうことです。「レベル100にして四天王ボコってイエイ!」だけじゃなくて、ガチ勢にとってのポケモンはそんなことになっているんですよ。

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なるほど、ちょっと興味湧いてきた。

人間同士だからこそ生まれる読み合い


ではたろちんさん、ポケモンには炎タイプ、草タイプ、水タイプなどさまざまなタイプがありますが、このタイプ同士の相性はどれくらい分かりますか?


うーん、炎は草に強くて、草は水に強くて、水は炎に強い、みたいなのはなんとなく知ってる。

「ほのお」「みず」「くさ」の基本的なタイプ相性


なるほど、タイプ相性はなんとなく分かっているみたいですね。トレーナーは6体ポケモンを連れて行けるわけなんですけど、今回は炎と草と水の他に、ピカチュウなどの電気タイプ、ピジョットなどの飛行タイプ、フーディンなどのエスパータイプの計6体を連れて行ったとして、相手が炎タイプ6体だったとします。

相手パーティは炎タイプばかり


ええ!? こんなジムリーダーみたいなヤツいんの!?

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これはさすがに極端な例ですけど、レーティングバトルのルール上、タイプに制限はないので同じポケモンでなければ大丈夫です。それで、この対戦相手に対してこちらが3体選ぶときに草タイプは連れて行くべきじゃないってのは分かりますよね?


炎に負けちゃうからね。でも、水タイプ連れていけば楽勝。


はい、そう思うでしょ? でも、ここからが面白いんです。


ほう?


レーティングバトルにわざわざ炎タイプのポケモンを6体連れてくるトレーナーが、水タイプの対策をしていないはずがないんです。水タイプの技を受けても一撃は耐えられるようなアイテムを持たせていたり、水タイプに弱点となる技を先に撃って倒せるよう素早さを底上げしたりして対策してきます。そしてバランスよく見えたこちらのパーティも、まんまと水タイプのポケモンが倒された後では、炎タイプに強いポケモンがいなくなってしまって返り討ちにあってしまうこともあるわけです。

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水タイプを連れていけば楽勝! というわけではない


えっ……こんなに分かりやすいパーティが相手なのに?


言ったらこの相手のポケモンたち、炎技を使おうと思ったら全員使えるわけですから、全員に炎技を覚えさせる必要もないんです。ストーリーの中のジムリーダーとかは炎タイプなら炎の強い技をいっぱい使ってくるだけだったじゃないですか。


そう、だから近くで釣ったタッツーとかを育ててたら勝てた


(笑) それが、レーティングバトルじゃそうはいかないんです。


そうか……CPU相手には読み合いなんかほとんどなかったもんな……。


そういうことです! レーティングバトルは 、こうした“人間同士だからこそ生まれる読み合い”が面白いんです。では、次は分かりやすくするために初代のポケモンで解説をしましょう。

「ピカチュウとギャラドスのジレンマ」


“人間同士だからこそ生まれる読み合い”の象徴的な例として「ピカチュウとギャラドスのジレンマ」を説明しましょう。自分が電気タイプのピカチュウを出して、相手が水/飛行タイプのギャラドスを出してきたという状況だとします。これは素早さの関係でピカチュウ側が先制攻撃できる組み合わせですが……たろちんさん、これはどちらが有利な状況か分かりますか?


たしか水タイプも飛行タイプも電気タイプが弱点だよね? じゃあピカチュウならギャラドスには勝てる。

普通に考えてピカチュウが有利(ポケモン画像は「ポケモンだいすきクラブ」より引用)


そう、この対戦しているポケモンのタイプだけで勝敗を決めるならそうなりますし、ストーリー内のトレーナーだったらそれでいいんですが、人間同士ではそうはいかないこともあるんです。先ほど言ったように、レーティングバトルでは対戦前にお互いの6体を全て見せ合います。


今回ご用意したのはこちらでございます、と。そこから3体選ぶんだよね?


そこの3体を何にするのかという読み合いから対戦は始まっています。その見せ合いをしたとき、もしも相手の6体の中に電気タイプの技を無効化する地面タイプのポケモン、例えばダグトリオなんかがいた場合、相手は人間ですから交代してくる可能性がありますよね?

相手のパーティに地面タイプがいた場合(ポケモン画像は「ポケモンだいすきクラブ」より引用)


確かに、このままだとギャラドス負けちゃうからね。


基本的に、ポケモンの交代は相手が技を撃つより先に行われます。つまりここでピカチュウが「10万ボルト」のような電気技を選んだとき、相手が地面タイプに交代してきたら、ダメージを与えられない上に不利な状況になってしまう、と。


地面が電気に強いからってこと?


その通りです。相手が地面タイプに交代してくるのなら、本来有利だったはずのこちら側が逆に交代しなきゃいけない状況になるんです。


そうなの!? じゃあこっちも地面に強いポケモンに交代すればいい。


……待ってください、肝心なのはここからです。いいですか、今ピカチュウが電気タイプの技を撃たないで交代するというお話をしてましたが、もしそうなった場合、ギャラドス側に残る理由が生まれませんか?


?? ……ああ、そうか、電気技を撃ってこないからか!


そう! ギャラドス側からすれば「電気技が来るなら交代しますが、ピカチュウが交代するなら残りますよ」となるわけです。


ほうほう!


そして、ギャラドスがこのまま残るのであれば、今度はピカチュウにも残る理由ができますよね


……ってことは、考え抜いた結果お互いが交代せずにギャラドスが電気技をくらってやられちゃうこともあるってこと?


全然あります。でも、その事象に行き着くまでにこれだけの読み合いが行われているんです。これで1ターン終わったら、次のターンからまた同じような読み合いを繰り返していくわけです。

ヤマクエ先生による「ピカチュウとギャラドスのジレンマ」解説まとめ
ダグトリオに交代された場合はこうなる


なるほど、複雑な読み合いを重ねていくわけか。……ってことはこれ結局、運ゲーになっちゃうんじゃない?


そうですね。相性の読み合いで勝負が決まるのならば「トッププレイヤーもただの強運の持ち主ってだけなんだろう」と。確かにそういった一面もあるかもしれませんが、それだけではありません。では、ここから数値のお話をしましょう


大学の講義かよ。

運以外の要素が勝負を分ける


例えば先ほどの状況で、ピカチュウが電気技をギャラドスに撃つことができた……つまり、ギャラドスが読み合いに負けた場合に、ピカチュウの攻撃をギャラドスが耐えて、逆にギャラドスが覚える地面技で返り討ちにしたらどうなります?

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