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医療費の膨張が止まらない~“75歳以上2割負担”は踏み切るべき

先送りならその場合は「他の形で(誰かが)負担増」ということに。

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(12月4日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。後期高齢者の窓口負担2割への引き上げについて解説した。


ニッポン放送「ザ・フォーカス」

窓口負担引き上げ見送りの観測~解散総選挙を懸念か

75歳以上の人が加入する後期高齢者医療の窓口負担を、現在の1割から2割へ引き上げる方向で政府が調整している。窓口負担は70歳~74歳が2割、75歳以上が1割だが、人口の多い団塊の世代が75歳以上になる時期が近付いているため、所得の低い人には配慮しつつ、75歳以上の窓口負担も2割にする考え。

森田耕次解説委員)安倍政権が最大のチャレンジと位置付けている、全世代型社会保障改革の柱として、75歳以上の医療費の窓口負担を引き上げるという方針を固めていました。しかし、2020年1月召集の通常国会への関連法案の提出は見送る方針を固めたと、一部メディアが伝えています。高齢者の医療費の自己負担は現在、現役並みに所得の高い人を除いて、70歳~74歳は原則2割、75歳以上は原則1割が自己負担。医療費は全体で43兆円に上っており、このうち75歳以上では約16兆円になります。団塊世代が2022年から75歳以上になり始め、医療費の一層の膨張が見込まれるために、政府はこの時期に合わせて自己負担を2割に引き上げる方針を固めていましたが、先送りということでしょうか。

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河合)(先送りが)正式に決まったわけではなさそうですが、衆院解散・総選挙が近いのではないかという観測もあり、そういった意見が与党内で出ているのでしょう。

森田)国民1人辺りの医療費は、75歳未満が2018年度で22万2000円ですが、75歳以上は93万9000円と、4倍を超えるのですね。団塊世代が75歳以上になると、医療費はどんどん膨張してしまって、このままでは予算も組めなくなると政府関係者も言っているようです。

河合)75歳を超えると、急に大きな病気にかかりやすくなるというデータがあって、若者の医療費の平均に比べ、(75歳以上の医療費の平均は)4倍~5倍かかるとも言われます。それだけ手術などで大きなお金がかかるということです。団塊世代は人口も多いですから、一気に医療費が伸びるのではないかということで、政府はあの手この手で医療費を抑制して行こうとしており、(75歳以上の窓口負担の2割への引き上げは)目玉政策の1つだったのです。


ニッポン放送「ザ・フォーカス」

患者の減少を懸念する医師会の本音

森田)これには、医師会の反対などもあったのでしょうか?

河合)75歳になったら途端に病気になるということではないのですが、どうしても体が弱くなる時期に入って行くので、受診料が高くなって患者さんの数が減ることは、医療機関の収入の減少につながります。お医者さんたちは反対したいという本音があるわけですね。

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森田)もっと来てよ、ということですね。

河合)建て前ではそうは言っていないですけれどね。「病気になった人が誰でも受診できるような負担額にすべきだ」と医療界は説明しているのですが、本音はそういうところにもあるわけですね。

森田)75歳以上の医療費は、全体で16兆円に上ってしまう。国や自治体が拠出していて、75歳以上の保険料もあるのですが、現役世代の健康保険料でかなりの部分を賄っているわけですよね。

河合)75歳以上は後期高齢者医療制度になるわけですが、これには支援金のような形で、現役世代の保険料のなかから拠出されています。いまや若い人たちが払っている保険料総額の4割くらいを、支援金として払ってしまっているのです。若い人にしてみれば、その分の保険料額が毎年のように上がっているということなので、バランスを欠くことになっています。負担できる高齢者には負担して欲しいというのは、政府もそうですが、健保連のような保険を運営している団体からも要望があります。

森田)どんどん高齢化して行くわけですから、この辺は世代間の公平性を考えると、やむを得ないのかなという感じがします。

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河合)政府の説明も、低所得の人には配慮するということですしね。高額療養費制度もあるので、お金がかかり過ぎるような治療が必要となった場合でも、患者負担の上限額は決まっています。2割になっても、すべての治療費の2割を負担するわけではないのです。そういった配慮をしたなかで、若者とのバランスを考えるためには、75歳以上の窓口負担は2割にせざるを得ないかなという話です。


ニッポン放送「ザ・フォーカス」

最終的には他の形で負担増か

森田)医療費を押し上げているなかに、薬の価格が高いというものがあります。

河合)診療報酬改定を2年に1度やるのですが、毎回の大きなテーマになっていて、今回の診療報酬改定でも薬価の引き下げが大きな改革メニューになって来ます。いまや数千万円もする薬が登場する時代になっていて、それを全部保険で賄って行くという話になると、国家の財政そのものがいびつな形になってしまいます。75歳以上の2割負担をはじめとする、他の医療費抑制策とのバランスのなかで、薬価の引き下げも同時に進めて行かなければならないということです。ただ、来年(2020年)の通常国会で75歳以上の窓口負担2割を法案に盛り込まず、見送りという話になると、2022年には間に合わないことになります。こういう制度の法改正は告知期間がどうしても必要なので、法律を改正して直ちに施行というわけには行かないのです。本当は来年の通常国会で法律を通しても、団塊の世代が75歳以上になる段階でギリギリ間に合うかというタイミングだったのです。これがずれて行ってしまうと、医療費の膨張を抑え込むことができなくなります。報道通りなのかはわかりませんが、2割に上げるならば、今回のタイミングできちんと踏み切るべきだと思いますよ。

森田)12月中旬くらいに、全世代型社会保障検討会議の中間報告がまとまるようですが、制度改革くらいは入れるのでしょうか?

河合)2割負担せざるを得ないという方向性までは出すのだと思います。

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森田)実際の法律は通常国会ではなく、さらに先になってしまって、間に合わない可能性もあるということですね。

河合)(中間報告に75歳以上の2割負担の方向性を書きこむだけで終わらせて)法案に盛り込まないのならば、その場合は他の形で(誰かが)負担増ということになります。

ザ・フォーカス

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