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真夜中に握りあった彼女の手と俺の手が、格ゲーの舞台で真剣勝負を迎える「ハイスコアガールII」23話(1/2 ページ)

大野よ、赤きサイクロンとなれ。

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(C) Rensuke Oshikiri/SQUARE ENIX

 ゲーセンで燃やした青春があった。ゲーセンで育った恋があった。格ゲーが盛り上がっていた90年代を舞台に、少年少女の成長を描くジュブナイル「ハイスコアガール」(原作アニメ。ゲームを愛した2人の少女と1人の少年の、エモーショナルな恋の物語。

 22話で、小学校からの因縁を果たすべく大野晶と大阪の「スパIIX」大会に参加することになった矢口春雄(ハルオ)。これで勝ったら、彼女に告白する。そう誓っていた深夜、彼のベッドの中には大野がいたのだった…。

(C)押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガールII製作委員会

ふれあいとじゃれあい

 高校生男女が一つのベッドの中に入って眠るという、ドキドキな引きで終わった22話ラスト。ハルオが大野を女として意識したことで、危うさが加速しました。今まで一緒にいてもこんなことはなかった!

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超近い、ハイスコアガール史上一番近い(23話) (C)押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガールII製作委員会

 今までだってある程度何らかの意識はあったかもしれませんが、大野の行動に対して大抵一歩引いたリアクションしていたハルオ。でもさすがに今回ばかりはたじろぎます。

 注目したいのは、2人の手です。ベッドに入ってから、指と指を絡めあっています。この時彼の口から自然に出たのが「お前は…本当にかわいいな…」という発言。

夢のような時間(9巻)

 ハルオは恋を認めてから、かなり素直です。これも素の発言でしょう。あまりにもロマンティックすぎる。このまま抱きしめてしまうのか!?と思いきや、「ひ…左手の置き場がわからねぇ…」とロマンティックぶっ壊し発言。これも素。大野は彼に噛み付いたりくすぐったりつついたり。寝るのを妨げるようなちょっかいを出し始めます。

勝ち誇りドヤ顔大野さん(23話) (C)押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガールII製作委員会

 お茶目な面を出せるようになったのは、大野の大きな成長です。小学校時代は本気でボコスカ殴っていたものの、中学に入って以降は微妙に距離を置くようになり、そして今やっと、いたずらをしても大丈夫なんだという手応えを得て、ハルオに対してふざけてみたり、格ゲーで勝ったら煽ったりするようになりました。他の人間には絶対見せない姿です。

 今回のベッドインからのわちゃわちゃは、性的なときめきの部分もあるでしょうけれども、大野にとってはスキンシップそのものを取ること自体が最大の目的だったのでしょう。彼女は幼少期から、誰かに甘えたことがない。今、ハルオには甘えることができます。噛み付くのもつつくのも、彼女なりの全力の甘え。ハルオが受け止めてくれることの、なんと幸せなことか。

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 ところでもしハルオがここで左手も使って抱きしめてくるようなことがあったらどうだったんだろう。それは2人にしかわからない。とはいえ、大事なのは「何をするか」ではなくて、ハルオが自分に対して反応してくれることと、甘えてもいい安心感があること。ハルオのことを信頼している大野、どう転んでも幸せだったんじゃないかな。

甘えん坊大野から、孤高の勝負師大野へ

お調子者大野さん(23話) (C)押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガールII製作委員会

 次の日の大会当日まで結局、布団の中でわちゃわちゃしていたしていた2人。大野は寝て、ハルオは寝られなかったとのこと。以前大野が家出をして2人で同じホテルの部屋に泊まったとき、ハルオが寝て大野がなかなか寝なかった状態の逆です。大野は今回の出来事がとても嬉しく大満足で、完全に心を許しきって甘えている姿。

 これがハルオといられる最後の時間。でも言えない。その苦しみと、2人でスキンシップをはかれた幸せとで、戦いの前だと言うのに心が邪念でブレてしまった様子。

岡山ケン、そこそこ強いんだろうか(23話) (C)押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガールII製作委員会

 まさかの予選第一回戦敗退。これはマンガ原作掲載時、ファンの心を動揺させました。彼女が素で負けることなんて今までなかったからです。ザンギエフのスクリューがスカるという失態まで見せた様子(投げを空振りすると隙が生まれ、反撃のチャンスが生まれてしまいます)。

 大野が格ゲー以上にハルオとのつながりを求めてしまって、動揺している心理が見える貴重なシーン。彼女の心の迷いがゲームに出たのはこの予選と、小春との決着の試合の二回くらいです。

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迷わずはじきスクリュー!(23話) (C)押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガールII製作委員会

 ハルオは大野が戦士として全力で立ち上がり、ぶつかってくるのを待っています。そのために何年も待ち、告白の覚悟もして、大会まできました。大野もそれはわかっています。

 大野の心のザンギエフ「お前は赤きサイクロン 日本を発つ前に 未練も何もかもすべてを巻き込み 粉砕するのだ」

 昨夜の甘えん坊な大野はいない。敗者復活戦を難なく駆け上がる。ハルオ曰く、小学生の頃の「何をも寄せ付けなかった殺気に満ちていた頃の大野」が完全復活。

 格ゲーマーにとっての礼儀とは、全力を出して向き合い、戦うことのみです。

認められたい

 大野が本気を出すようスイッチを入れ直した、ということは同時にハルオを対戦相手として認めたということでもあります。

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 ハルオ「認められたかったのはずっと俺のほうだった…」「対抗心というよりも…認められたかった 自分よりすげぇやつに…ただ単純に…」

 大野が本気を出して勝負に来てくれるということは、ハルオを一人の格ゲーマーとして見ている証です。かつてはハルオにとって、自分よりうまくて前を走り続ける邪魔な存在だったかもしれない。でも今この場では、対等な位置に立っています。

手を差し出したのは、大野から(9巻)

 大会準決勝。ついに大野とハルオの決戦。拳を差し出したのは大野の方でした。2人は無言で拳を重ね合います。

 かつて凶悪なまでの強さを誇り、何をやっても勝てる気がしなかったハイスコアガールが、ハルオと同じ高さの目線で、勝負の場に立っている。

 この試合の内容は、2人の今まで育ててきた心理そのものが浮かび上がるものになっています。次回最終回。勝負と恋の行方はどうなるか。「負けたくないやつに負けたくない」ハルオの成長、とくと見よ(そして小春の絶大な成長も!)。

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