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いまだ破られぬ詰将棋の手数最長記録(1525手詰) 作者に聞く「盤上の『ミクロコスモス』はいかにして生まれたか」(2/5 ページ)

約30年前、22歳の若者が打ち立てた詰将棋界の金字塔。

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「私よりもこの作品の方が長生きするだろう」

―― 橋本さんはWebサイト上で「ミクロコスモス」について「私よりもこの作品の方が長生きするだろう」というコメントをしています。この思いは今も変わりませんか

1982年以降の発表作をまとめた「橋本孝治 普通詰将棋作品集」より

 「ミクロコスモス」のアピールポイントは第一にその長手数にあるわけですが、記録自体は更新される可能性があります。しかし、例えば、1755年に発表された伊藤看寿の「寿」(611手詰)は、今も名作として親しまれています。これを超える手数の作品が数多く作られている現代でも、その独創性は詰将棋愛好家に伝わっており、今もなお「寿」の存在感は失われません。

伊藤看寿は江戸時代の詰将棋作家として著名な人物。その年で最も優れた詰将棋作品に贈られる賞に「看寿賞」がある。橋本さんは「イオニゼーション」「ミクロコスモス」などで計4回の受賞経験

 長手数記録の実現に新しい発想が伴っている場合、記録が更新されても作品価値はなくなりません。その意味で、「ミクロコスモス」は私がこの世から去った後も、人々の記憶に残ると信じています。

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―― そんな作品を22歳の若さで完成させたとき、どのように感じられましたか

 とにかく「早く誰かに見せたい」という気持ちでいっぱいでした。『詰将棋パラダイス』誌に投稿していたので、時がくれば発表されるわけですが、詰将棋史に残るかもしれないこの作を、自分の心の中にしまっておくには大変な忍耐力が必要だったのです。

 詰将棋の会合で親しい棋友に詳しく説明するつもりだったのですが、その日は関東に大雪が降り、電車はストップ。代わりにバスを利用するも、それも途中でストップ。やむなく雪の中、徒歩で帰宅しました。個人的なお披露目のチャンスはついえてしまいましたが、雪のおかげで頭が冷えたのか、それ以降は割と平静に発表を待つことができるようになりました。

―― 当時、詰将棋業界はもちろん、一般マスコミからも取材が殺到したそうですが

 確かに新聞や雑誌からの取材がいくつかあり、当時の自分にとっては大変な経験だったのですが、客観的に見れば全然大したことはなかったと思います。当時は下宿で、部屋に電話もなかったので、下宿先のおばさんには結構迷惑を掛けたと思います。最初は何をしでかしたんだと思われたでしょうね。

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