連載

「スター☆トゥインクルプリキュア」が“最高の子ども向けアニメ”である理由サラリーマン、プリキュアを語る(1/2 ページ)

いやだ! スタプリ、終わらないで!! なんでもするから!

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最終決戦に臨む「スター☆トゥインクルプリキュア」の5人

 (しばらく頭の悪い文章が続きます)

 あーーーーっ! もう!

 終わらないで! 「スター☆トゥインクルプリキュア」!!

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 もう第48話まで来ちゃった!! 次が最終回だなんてイヤ!!

 第48話のラスト、言葉が通じなくなったララの精いっぱいの「あり……がと……」。

 そんなの泣くに決まっているじゃん! こちとら1年間ずっと見てきたんだよ!

 おじさん、大号泣だよ!

 ああ、こんなにも終わることが寂しいシリーズ初めてかもしれない……。

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 もっと星奈ひかるの、キュアスターの「キラやば~☆」を見たかった。

 もっと、羽衣ララの、キュアミルキーの「ルン」を聞きたかった。

 もっと香久矢まどかの、キュアセレーネのセレーネアローの凛々しさを見たかった。

 もっと天宮えれなの、キュアソレイユの「チャオ!」を聞きたかった

 もっとユニの、キュコスモとアイワーンとの絡みを見ていたかった。

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 でも、終わっちゃうんだよなあ……。

 寂しいなあ……。

 はぁ……。

kasumi プロフィール

プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。

第48話で泣くおじさん

 2020年1月19日放送の「スター☆トゥインクルプリキュア」第48話「想いを重ねて!闇を照らす希望の星☆」は事実上のラストバトル。1年間かけて描かれてきたプリキュアたちの集大成となるお話でした。


ひかるの中のイマジネーションがプリキュアを復活させる

 倒したかに見えた蛇つかい座のプリンセスにより、大いなる闇が全宇宙を包みこみます。

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 絶望の中、「フワ座」を想像した自分の心の宇宙のイマジネーションに気付き、星奈ひかるは1年間歌い続けてきた変身ソング「スターカラーペンダント! カラーチャージ!」を自発的に歌います。それに呼応するプリキュアの4人。美麗なドレスを身にまとい絶望から立ち上がる5人のプリキュア。「歌」をここに持ってきたの本当にすてき。アツイい展開です。

 今作のプリキュアの復活は「奇跡」じゃないのです。「神から与えられたもの」じゃない。「自分自身の想像力」が彼女たちを絶望から立ち上がらせたのです。

 蛇使い座のプリンセスとのラストバトルも熱い。全てのカロリーをつぎ込んだかのように動きまくり、決め技大放出でスタプリを締めくくる壮大なバトルシーンが展開します。

 「歪んだイマジネーション」をも内包して、全てのイマジネーションを肯定するプリキュアたち。

 「イマジネーションはさ、消すよりも星みたくたっくさん輝いていた方がキラやば~☆っだよ」

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ラスボス、蛇つかい座のプリンセス

 戦いの末、蛇使い座のプリンセスを説得したプリキュア。立ち去る蛇姉さん。フワもカラーペンダントの力でよみがえります。無いとされていたフワの記憶もきっと戻っているのでしょう。だって機械であるAIさんもかつて「キラやば~☆」な記憶を忘れなかったのですから。

 そしてラストシーン。

 惑星サマーンに帰ることを決意したララ。ひかるの手が一瞬動くもののグっとこらえてララを引き止めることはしません。それがお互いのためだと分かっているから。

 フワを復活させるために使いきったカラーペンダントの力はなくなり、それまで翻訳されていたサマーン語は分からなくなります。

 それでも精いっぱい「ひ……かる……」「あり……がと……」と地球の言葉でひかるに伝えるララ。

 ララの触覚とひかるの指を合わせるお別れのシーン。第1話で交わした「2人の物語の始まり」でお別れです。

 40過ぎのおじさん、大号泣。そりゃあ泣くよ。


サマーン式のあいさつは触覚同士を合わせる

「スター☆トゥインクルプリキュア」が示した世界観

 プリキュアシリーズ第16作目「スター☆トゥインクルプリキュア」。

 プリキュア15周年作品である2018年「HUGっと!プリキュア」でプリキュアシリーズが一区切りとなった後の「次の世代」のプリキュアとして、新たな一歩となる作品となりました。

 「宇宙」という女の子向けとしてはやや珍しいテーマを扱いながらもその作風は明るく楽しく、そして「とにかく、子どもたちのために丁寧に作っている」印象を受けました。

 東映アニメーションの柳川あかりプロデューサーは、「スター☆トゥインクルプリキュア」の開始時に、媒体インタビューで「多様性がそこに当たり前にある世界を描く」と語り、事実、アニメ中でも「多様性」を明示的に取り上げるのではなく「宇宙に住む人々」を使い、ぐう話的に「多様性が当たり前にある世界」を描いてきました。


敵組織ノットレイダー側の事情も描かれた

 「スター☆トゥインクルプリキュア」は、地球人3人に異星人2人の5人という構成です。緑のプリキュア「キュアミルキー」はプリキュアでは珍しくスカートではなくズボンをはいていたり変身時に大きく髪が伸びることもありません。青(虹色)のプリキュア、ユニ(キュアコスモ)は学校に行かないキャラだったりと、その構成も例年以上に多様でした。

 また、劇中で使用する言葉一つ一つを丁寧に採択し「宇宙人」と「異星人」の使い分けや、例えばプリキュアの1人「天宮えれな」はメキシコ人と日本人との間に生まれた子どもなのですが、作中では「ハーフ、ミックス、ダブル」などという言葉を使わず、公式設定も「メキシコ人のお父さんと、日本人のお母さんがいる子」なのです。


日本人の母とメキシコ人の父を持つキュアソレイユ

 柳川プロデューサーは、朝日新聞2020年1月10日号朝刊に掲載された「プリキュアはあきらめない」というインタビュー記事において、下記のように語っています。

父親がメキシコ人、母親が日本人という設定の登場人物がいますが、劇中では「ハーフ」や「ミックス」という表現は使わず、ステレオタイプなイメージだけでエスニックな特徴を強調しないようにしています。
どこまで配慮すればよいのか。この問いに対する「正解」はありません。でも、制作する側が考えることを放棄し、開き直ることがあってはならないと思います。誰かを傷つけた犠牲のもとに成り立つ「面白さ」なんて、あっていいわけがないのです。
(引用:朝日新聞 2020年1月10日 朝刊15面)

 子ども向けアニメにおいて、「表現をどこまで配慮すればよいのかの『正解』は無いとしながらも、制作する側がそれを放棄する事なく、表現を模索し続ける事が大事である」としています。

 そう。「正解は無い」からこそ、プリキュアシリーズは時代に合わせて常に表現方法を模索しているのです。

 そして同時に、「誰かを傷つけた犠牲の上に成り立つ「面白さ」は、あってよい訳がない」という思いが「スター☆トゥインクルプリキュア」の根底には流れていたのです。

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