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新型コロナウイルス緊急経済対策~“総額108兆円”の実態を見れば

真水ではGDPの3%程度にとどまるという見方。

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月8日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。新型コロナウイルスの感染拡大に対処する経済対策について解説した。


【新型コロナウイルス】緊急事態宣言から一夜明け。人通りの少ないJR渋谷駅前のスクランブル交差点=2020年4月8日午前8時18分 写真提供:産経新聞社

新型コロナウイルス緊急経済対策に最大108兆円

政府は7日、新型コロナウイルスの感染拡大に対処する緊急経済対策と、その財源を示した2020年度補正予算案を閣議決定した。財政支出の総額は39兆5000億円で、そのうち16兆8000億円は補正予算を活用。事業規模はおよそ108兆円で、補正予算額とともに過去最大規模となる。

飯田)4月中旬に国会提出、今月(4月)中に成立を目指すということです。大きい数字が並んでいるけれども、いずれも疑問が残るというか、他から寄せ集めたのではないかと。

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高橋)本当はマスコミの取材で報じてくれれば楽なのですが、108兆という事業費で、「GDPで比較すると」などと言うこと自体に驚いてしまいます。

飯田)GDPの2割だなんて。

高橋)GDPは利益に相当するのですが、事業費は売上のような話です。性格が違うでしょう。利益には真水という概念があって、それを見るのですが、どこかの新聞に財政支出39兆円と出ていました。

飯田)そうですね、39兆5000億円が財政支出の総額だと。

高橋)財政支出としてはそうでしょうが、ここには前年度の未執行分も、一緒に数字に入れてしまっています。

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飯田)2019年度補正の未執行分を入れているということですね。


加藤勝信厚生労働相と西村康稔国務大臣らが出席し行われた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議=2020年3月19日午後、東京都千代田区

真水での財政出動は16兆円~GDPの3%

高橋)今度の補正予算書を見ればわかります。前の未執行分が10兆円くらいだから、財政支出としては29兆くらいでしょうね。でも財政支出の場合は、一般会計と特別会計で別れています。それで見ると、財政投融資が12~13兆と書いてあります。

飯田)そうですね、12.5兆円の財政投融資だそうです。

高橋)これは融資であり、真水ではありません。補助金は真水になりますが、融資は真水になりません。そうすると、29兆円から12兆円を引いて、17兆円ぐらいが真水でしょう。

飯田)今回提出する補正予算は16兆8000億円だから、符合しますね。

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高橋)そうでしょう。国債発行で16兆円くらいということです。真水は16兆~17兆くらいしかありません。年度初めに余っているということはないので、他から財源を持って来ることはできません。そうすると、国債発行額がだいたい真水になると覚えておけばいいのです。

飯田)大きく触れ回った割には、化けの皮をはがすとものすごく小さい。財政出動で16兆円ぐらいということは、GDPで考えたら3%くらいですよね。


【新型コロナ感染拡大】東京・銀座ではマスク姿の人が目立った=2020年4月2日、東京都中央区 写真提供:産経新聞社

16兆では消費の落ち幅も補えない~失業率が上がる

高橋)3%くらいだと、消費の落ち幅も補いきれません。GDPギャップが広がると、半年~1年後に失業が増えるというパターンです。

飯田)いまは失業率2.4%~2.5%で何とか保っているけれど、悪くなるということですか?

高橋)半年後くらいには、4%近くになるでしょう。

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飯田)就職氷河期やリーマンショックのレベルですね。

高橋)数字的に言うと、いまから60万人~100万人近くが失業する予測ができます。

飯田)雇用環境が違いますが、アメリカで失業保険の申請者数が爆発的に増えたというのと、同じような形ですか?

高橋)そうです。だから、どこの国も失業を増やさないために経済対策をします。そのためにはGDPギャップ、GDPの落ち込みくらいを真水で埋めるのが普通です。この予算だと真水で埋めきれないので、後で失業が大きくなります。

飯田)失業などの後から効いて来る数字は、いま対処しないと大変なことになりますよね。

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高橋)そうですね。失業が増えると、社会不安が大きくなります。いまは一時解雇ということで安心していますが、後で失業になる可能性が高いです。


参院決算委員会で言葉を交わす安倍晋三首相(左)と麻生太郎副総理兼財務相=2020年4月1日午前、国会・参院第1委員会室 写真提供:産経新聞社

経済活性には一律給付が効果的なのだが

飯田)政府の対策として、雇用調整助成金を使う案が出ていますが、どうなのでしょうか?

高橋)ビジネスがうまく行かなければ、再雇用することは経営者としては難しいです。ビジネスをうまく行かせるには、全国民に一律でお金を配ることが簡単なやり方です。それを今回やらないから真水も少なくなるし、悪循環になるのです。真水を大きくすると経済がよくなって、後で税収が増えるのですが。

飯田)今回の少ない真水のなかには、感染が収束した後の景気浮揚まで見据えたものが盛り込まれていますよね。これは、いまやることだったのでしょうか?

高橋)まあ、後の話でしょう。

飯田)そこに真水を持って行かれたら、いま困っている人たちは「おいおい」となりませんか?

高橋)一律という形の現金給付はしないですよね。1世帯30万円と言いますが、計算すると1000万世帯だから、6世帯に1個くらいしかやりません。もともと所得制限ができないのに、いまの所得は来年(2021年)にならないと行政府はわかりません。それなのに所得制限をやろうとするから…無理ですよね。


日経平均株価 新型肺炎感染拡大で世界経済への影響懸念で一時1,000を越える大幅下落~ 取引開始直後、1,000円以上急落した日経平均株価を示す株価ボード=2020年2月25日午前、東京都中央区 写真提供:産経新聞社

景気対策には消費税減税がいちばん簡単な方法

飯田)景気対策のために、「消費税を減税したらどうだ」という声が与党からも上がっていますが、動きませんね。

高橋)それがいちばん簡単なやり方ですがね。2年間でいいから5%にすれば、1年間の有効需要は15兆円になります。これだけで真水が30兆円ほどになるのです。

飯田)これを阻むのは、財務省がやりたがらないという部分があるのですか?

高橋)そうでしょうね。

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