いま「Zoom演劇」が面白い 打ち合せから本番まで全部リモートで活動する「劇団ノーミーツ」に注目集まる(1/2 ページ)
ビデオミーティングで繰り広げられる新しいエンターテイメント。
ビデオ会議サービスの「Zoom」を使い、打合せから本番まで1回も会わずに活動するフルリモート劇団「劇団ノーミーツ」がネット上で徐々に注目を集めています。制限がある中で生まれた新しいタイプの演劇は、これからどんな世界を見せてくれるのか。
多くのエンタメ業界がCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大による影響を受けている中で、「NO密で濃密なひとときを」をテーマに動画投稿(Twitter/YouTube)という形で活動する劇団ノーミーツ(no meets)。キャスト全員がそれぞれの自宅からZoomのミーティング画面上で演技しているのですが、リモート演劇ならではの展開が新鮮で面白く、さらにリアリティーの高さが共感を生み、「楽しみが増えた」「好きすぎる」と人気を呼んでいます。
投稿されたZoom演劇は、いま話題の“リモート飲み会”を4人でしていたら謎の怪奇現象に襲われるというホラーモノから、背景を自由に変える“バーチャル背景”を利用したビデオ会議あるある(?)などさまざま。特にホラー系は身近な雰囲気も相まって強烈で、「これ実話じゃないですよね?」「これガチ?」という声も上がるほど。
そんな現在ネット上のみで活動する同劇団について、主宰の広屋佑規さん、林 健太郎さん、小御門優一郎さんに始動の経緯や今後についてお話を伺いました。
広屋佑規さん
1991年生まれ。没入型ライブエンタメカンパニーOut Of Theater代表。ストリートを歩きながらミュージカルの世界を体験できる「STREET THE MUSICAL」、東京喰種の世界に没入できるイマーシブレストラン「喰種レストラン」など、公共 / 都市空間を活用したエンタメ作品のプロデュースに従事。(Twitter:@hiroyayuki)
林健太郎さん
1993年生まれ。駆け出し映画プロデューサー/映像監督。プロデューサー作品として映画『書くが、まま』(MOOSIC LAB2018観客賞)『根矢涼香、映画監督になる。』ショートフィルム『純猥談 触れた、だけだった』。欅坂46個人PVの企画脚本など。(Twitter:@KentarooH)
小御門優一郎さん
1993年生まれ。普段はサラリーマンとして映画会社に勤務しつつ、劇団「21g座」を主宰する脚本家、演出家。全日本大学生演劇選手権大学生演劇インターカレッジ2015年、16年審査員特別賞受賞。神奈川かもめ「短編演劇」フェスティバル2019本選出場。(Twitter:@KoMIkado_21g)
“これは埋もれてしまっている才能を世に放つチャンスだ”と逆手にとってもいいかもしれない
――劇団立ち上げの経緯を教えてください
広屋さん:主宰の3人は、それぞれライブエンタメ業界、映画業界、演劇業界に属しているのですが、今回のコロナの影響でどの業界も大きなダメージを受けてしまい、仕事が止まっています。その時、ただ自粛するのではなく、今だからこそできる表現はないのかを考え、Zoomを使った演劇作品を作り始めました。
――メンバーはどうやって集めたのでしょうか?
林さん:今だからこそ作れるエンターテイメントがないか、と没入型ライブエンタメカンパニー「Out Of Theater」代表の広屋から林が相談を受け、劇団をやっている小御門を誘い3名でスタートしました。その後、毎日Zoomで打ち合わせ、制作を繰り返しながらメンバーが増え現在の構成になっております。
――現在の劇団員の人数や構成を教えてください
林さん:劇団員は現在7人。
- 主宰・企画・プロデュースの広屋
- 主宰・監督・プロデュースの林
- 主宰・脚本・演出の小御門
- 制作・プロデュースの菅波
- 演出家・プランナーの岩崎
- プロダクションマネージャーの梅田
- 俳優のオツハタ(@otsuhatact)
出演俳優に関しては毎回オファーをしており、流動的です。
※ちなみに直接会ったことがない人も関わっているそうです。キャストやスタッフの名前は動画ツイートのスレッドに掲載
――脚本や演出などスタッフワークについてどういう流れで打ち合わせから動画配信までを行っているのか教えてください
広屋さん:すべてZoom上で完結しています。大筋の話を脚本家に書いてきてもらい、それをZoom上で役者達が読み合わせ、エチュード(※即興劇)などを行います。
その様子を見ながら、スタッフもZoom上から意見を出し合い、稽古を重ねていきます。劇団ノーミーツのZoom演劇作品はTwitter上でまず公開するので、140秒におさまりそうな尺が見えてきたら、本番のレコーディングをZoomの機能で行います。本番中はスタッフの音声は入れられないので、チャットを用いて指示出しやタイムキープなども行い、OKテイクがでるまで撮影を重ねています。
――他にも資金面や稽古の時間などで、実際の公演との違いがあれば教えてください
林さん:実際の演劇と違い現場の空気感が共有できないため、丁寧にコミュニケーションを取る必要があります。
他にも声量バランスなどZOOMならではの制約が多々。しかし、制約があるからこそ生まれる発想も多いです。
――収益化の方法について教えてください
広屋さん:現在は無料でZoom作品を公開していますが、多くの方に劇団ノーミーツを知っていただいた後は、生配信演劇に挑戦したいと思っています。生配信演劇であれば、チケットを有料で販売できる可能性もありますし、本物の舞台興行に近しい考え方になると思います。
――今後どういう活動をしていきたいか教えてください
林さん:これまで140秒の動画作品を10本投稿しました。その過程で見えた課題や可能性を元に、今後はYouTube上での生配信にも挑戦いたします。エチュードをベースにした定例配信を行いつつ、5月23日・24日に行う旗揚げ公演「門外不出モラトリアム」(初の長編生配信)を成功させることが直近の目標になります。そしてこの自粛期間に表現の場を失ってしまっている俳優・クリエイターたちを発信するプラットフォームを目指します。
この状況が終わり、また現場でものづくりを行えることを願う日々です。でも、現実はいつになったら明けるのかすら分からない。であれば“これは埋もれてしまっている才能を世に放つチャンスだ”と逆手にとってもいいかもしれない。これからも楽しみながら、自宅よりエンターテイメントをお届けします! Twitter/YouTubeのチェック、何卒よろしくお願いします!
公式サイトによると、初の長編生配信公演となる「門外不出モラトリアム」は、4年間のキャンパスライフのすべてをリモートで送った“私”が「この部屋から、未来を変える」物語。止まってしまった現実を変えるために始動した劇団ノーミーツは、どんなフルリモートな世界を見せてくれるのか、いまから楽しみです。
取材協力:劇団ノーミーツ(@gekidan_nomeets)
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