あおり運転は「酒酔い運転と同等の重罰」に 改正道交法が2020年6月30日施行 つまりどういうこと?
最大で5年以下の懲役または100万円以下の罰金、一発免許取り消しです。
あおり運転を「妨害運転罪」として定め、罰則を設けることを明文化した改正道路交通法が2020年6月2日に衆院本会議で可決、成立しました。今回はこのたび新たに設けられた「あおり運転」の定義や背景、罰則についてまとめます。
「あおり運転」が罰則化、成立の背景と概要
2017年6月に起こった東名高速夫婦死亡事故や、2019年8月に常磐道で起こった暴行事件など、近年「あおり運転」の被害、およびそれが原因となった痛ましい事故や事件の発生が大きな社会問題になっています。
警察庁が2020年2月に公表した統計資料「令和元年中における交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」によると、2019年に高速道路で摘発された道路交通法違反のうち、車間距離不保持は1万3787件と前年比16.9%増でした。あおり運転の被害が広く社会問題化したことによる取り締まり強化の結果とも推定しますが、一方でそれは氷山の一角であることも伺えます。
特に東名高速夫婦死亡事故では、悪質なあおり運転が事故の原因でしたが、「あおり運転をした車が停車しているときに、別のトラックが追突して被害者が死亡した」事案だったことから、あおり運転した者に対し「危険運転致死傷罪は認められない」となるゆがみが生じました。この事案は現行法では対応しきれないケースの死亡事故であったことから、法改正を望む声が高まりました。
なお、あおり運転の社会問題化とともに、警察庁がまとめた「あおり運転の被害経験を聞いた調査結果」(警察庁「第201回国会提出 道路交通法の一部を改正する法律案の参考資料」)によると、約35%が被害経験を持ち、そのうち15%が3回以上被害に遭っていました。
今回の法改正によって、どんな行為が「あおり運転」になるのかを定め、それを違反した者に対する「罰則」が新たに設けられることになります。
具体的に、何をしたら「あおり運転」の罪になるのか
今回の法改正で、10項目の具体的な違反行為を「あおり運転」と定義しています。
端的にまとめると、「ほかの車両の通行を妨害することを目的」とした、
- 急ブレーキ
- 車間距離を著しく狭める
- 急な進路変更
- 危険な追い越し(左側からの追い越しなど)
- ハイビームの継続や不必要なパッシング
- 執拗なクラクション
- 幅寄せや蛇行運転
- 高速道路での低速走行や駐停車
- 不必要な右側通行
- その他危険な運転
が「あおり運転」になります。
刑罰は最大で5年以下の懲役または100万円以下の罰金、一発免許取り消し
罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金、高速道路や一般道で停車させたり急ハンドルを切らせたりするなど著しい危険を生じさせた場合は、酒酔い運転と同等の5年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられます。
また、あおり運転をしたことで交通に著しい危険を生じさせた場合にも、行政処分として免許取り消しの上、3年以上の欠格期間を新たに設けて厳罰化します。
特に、酒酔い運転と同等の厳しい罰則となる「高速道路や一般道で停車させたり急ハンドルを切らせたりするなど著しい危険を生じさせた場合」の項目は、東名高速夫婦死亡事故を踏まえた具体的な改正と言えます。
施行は2020年6月30日から
妨害運転罪を創設した改正道交法は2020年6月10日に公布、6月30日に施行されます。
一方で、法の運用や証拠などの面で不安視する声もあります(関連記事)。今後は一般車におけるドライブレコーダー類の設置などもより加速・一般化していくかもしれません。
(少年B)
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