AIが現実世界のボードゲームで一緒に遊んでくれるARアプリが注目集める 「すごいし、かわいい」「この子と遊びたい」(1/2 ページ)
AIがぼっち遊びをサポートしてくれる……!
テーブルに並べたトランプで、AIの女の子と神経衰弱で遊ぶアプリの試作品動画が公開され、「思い描いていた未来がすぐそこ」「この子とあそぶアプリはどれ」など、注目と期待が寄せられています。
動画を公開したのはAI系企業エンジニアのフィット(@fit_tif_fit)さん。アプリが始まると、妖精のような小さい女の子が登場し「遊びたいボードゲームを見せてね!」とガイドしてくれます。スマホのカメラをボードゲームにかざすと、「カタン」「リバーシ」「トランプ(神経衰弱)」と、ゲームの種類を認識。カタンなどは開発途上らしく、ここではトランプを選択しています。
ゲームを開始すると、女の子がテーブルを走り回り、めくってほしいトランプを指示。言われたとおりにカードをめくると「違った…残念! 君の番だよ!」とコメントします。めくったカードの柄をしっかりと認識しているだけでなく、一度めくったカードの位置も記憶。女の子が正解して「やったー! また私の番ね!」と喜んだり、プレイヤーにカードをとられると「えー!!! また君の番だね…」と悔しがったり、リアクションがかわいらしいので楽しく神経衰弱を遊べそうです。
フィットさんは「人と共生するAIを開発するのが好き」とのことで、プレイヤーのレベルに合わせて良い感じにオセロを打ってくれる「リバーシFIT」、AIと麻雀を打って一緒に強くなる「育てて対戦!コンビ麻雀」などのスマホアプリをリリースしています。また、ARによるぷよぷよのリアルタイム連鎖解析、麻雀のAR Viewで目指す手牌を教えてくれる試作品など、AIをサポーターにつけてボードゲームを遊べるAR技術を紹介する動画を公開してきました。
今回注目を集めた現実世界のボードゲームを一緒に遊んでくれるAR/AIアプリについて話を伺うと、新規開発はあまり多くなく、既存技術をうまく組み合わせることで実現したと教えてくれました。
対応しているボードゲームは今のところ神経衰弱のみで、リバーシのようなテーブルに情報が開示されている展開型ゲーム(完全情報ゲーム)やそれに近い種類のカタンなどは、対応できる可能性が高いそう。逆に、ババ抜きや麻雀のような、場が見えないゲームへの対応は難しいようです。
開発は3つのステップで行っているとのこと。まず「Unity」で作った神経衰弱でキャラクターが動いて神経衰弱を遊ぶ部分を開発。次に、神経衰弱を「Unity ARKit Plugin」を使い、平面認識(ここでは茶色いテーブル)をさせてARで遊べるようにする。そして最後に、トランプとボードゲームを現実世界のものに差し替えます。最後のステップでは、トランプとボードゲームの画像認識を行う部分の開発が必要となるので、深層学習手法として既存技術の「MobileNetV2 SSD Lite」を使用したそうです。深層学習にありがちな大量のデータをタグ付けする作業(アノテーション)を避けるために、画像を1000枚程作成し上記の学習手法で認識部分を開発したといいます。3つの開発ステップは独立していて、組み合わせることにより動く仕組みになっているので、バグの修正がしやすく、開発時間も大きく減るそうです。
今回のアプリにかけた開発期間は約1週間。ですが、フィットさんはちょうど先月にお子さんが生まれ、育児をしながらの開発だったといいます。ご本人曰く「学習させている時は待ちになることがあったので、子育てと相性が良かった」とのこと。
今回は目に見える部分だけを一気に開発したので、直近ではリリースを予定していないそうです。一般に公開して遊んでもらうには、多くの端末に対応することや操作感を使いやすくするなど越えなくてはならない壁がいくつかあるといいます。リリースする際は神経衰弱だけでなく、もっとワクワクするような何かを実装してから行うつもりのようで、公開した際は「是非使ってください!」と意気込みを語っています。
現時点で実現できないが、今後実装したい機能について伺うと「ゲームに限らずAIが人間と行動ができたり助言ができそうなものを作れるなら開発したい」とのことで、例えば子どもの成長をAIが認識して「先週より1cm伸びたよ!」「おでこのできものが昨日よりよくなってきたね!」と教えてくれるようなものがあったらうれしいと、AIやARと暮らす新しい世界が楽しみになる展望を明かしてくれました。
画像提供:フィット(@fit_tif_fit)さん
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