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コロナ禍でピンチの職人がTwitterで発信→売れ行きが前年の1000倍に 貝の内側を加工した伝統工芸が魔法みたいな美しさ(2/3 ページ)

京都は嵯峨嵐山の工房、「嵯峨螺鈿野村」の野村拓也さんに話を聞きました。

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ネットでの売上が前年同月比で1000倍に

―― Twitterを始めたいきさつを教えてください

野村 きっかけはコロナの影響で4月から売上がほとんどなくなったことです。春の行楽シーズンの売上は大きいので、とてもつらい状況でした。6月に県またぎの移動が解禁になったときに、今までの売上減を少しでも取り戻したい気持ちでしたが、ほとんど回復しませんでした。このままでは非常にまずいと思い、最初はGoogleのリスティング広告を出しましたが良い結果は出ず、お金だけが消えていく日々でした。そこで、お金をかけずに、今までやってこなかったことをしなければならないと考えたのです。

―― さまざまなSNSの中からTwitterを選んだ理由は何だったのでしょうか?

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野村 工房名義のFacebookやInstagramは既にありまして、個人名のFacebookアカウントは仕事用として稼働していない状況でした。今までしていないやり方ですし、最後の頼みの綱として、個人名でのTwitterという形で始めました。

―― Twitterを始めてから売れ行きはどのくらい増えましたか。コロナ前と比べた場合はいかがでしょうか

野村 恥ずかしい話ですが、昨年(2019年)8月のオンラインストアでの売上は8316円でした。それが今は前年同月比で1000倍を超えるご注文をいただいています。代表の父と姉、私の3人が、職人として製作しているのですが、年明けの納品まで待っていただかないとお届けできないほどの注文数を頂戴しています。

―― どんな商品が人気ですか? Twitterを始めてから売れ筋商品や客層は変わりましたか

野村 自分が作っている螺鈿のシルバーリングが一番人気です。当初は店頭販売のみで、ツイートで画像だけ紹介していたのですが、多くの問い合わせをいただきました。そこで急いで撮影してオンライン販売を始めてみるとすごい反響でした。店頭の売れ筋はネックレスが全体の30%くらいで、リングは5%以下なのですが、オンラインだとそのネックレスを抑えてリングがトップです。

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 指輪はペアでお買い求めいただくことも多く、20代ぐらいの若い方が暑い中ご来店いただいて、サイズや色をご検討いただいていたりします。また、以前のお客様は女性が中心でしたが、男性の方がタイピンやカフスなどご購入いただけることも増えました。

七宝文様がモチーフのラペルピン
アワビを細く切り出し、ストライプ柄に仕上げたタイピン

―― Twitterは炎上や中傷などネガティブな側面もありますが、始めるにあたって不安はありましたか?

野村 ありました。炎上や中傷以外にも、デザインや技術が盗用されてしまうのではないか、業界の方に何か文句を言われるのではないかと不安でした。

野村さんはネットでの発信について、ツイートでも意見を述べています。「伝統工芸こそ発信すべき」

―― 実際に始めてみていかがでしたか?

野村 雑多な製作現場や製作風景の写真に、ここまで興味を持っていただけると思いませんでした。「使っている材料や道具をもっと見せてほしい」「動画で作っているところを見てみたい」とリクエストまでいただけます。職人の日常は一般の人の非日常のようで、興味深いと関心を寄せていただけています。

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 誹謗中傷のイメージはありましたが、みなさまとても優しいです。「コロナで大変だと思いますが応援してます!」「暑いなか製作お疲れさまです、どうかお身体にお気をつけください!」と、いつも元気をいただきます。「注文が殺到していると思うので、急いでませんので私の注文分は後回しでいいですよ」「たくさんDM来ていると思うので返信はいらないです」など、私の現状をご配慮くださる方もいらっしゃって、あたたかい気持ちが伝わってきます。でもそう言っていただけると絶対に後回しには出来ませんし、ついお礼のお返事をしてしまいますね(笑)。Twitterにも優しい世界があるのだと職人に広まってほしいです。

嵯峨螺鈿野村の作品集

野村さんの父が手がけた万年筆(店頭販売のみ)
イヤリングやピアスは、フックタイプか、注文時に直接耳へ留めるタイプか選択可能
貝をモザイク調に並べた幾何学ネックレス
紅葉がまぶしいバレッタ
大きな琥珀にsakuraをちりばめたネックレス
螺鈿で描いた菊の花をゴールドが彩るゴージャスなブローチ
べっこうに花七宝をデザインした帯留め
螺鈿と蒔絵で蝶を描いた、べっこうのかんざし
ステンドグラス調のピアス
抹茶を入れる茶道具、大棗(おおなつめ)
夜光貝を貼り合わせて花を描いた香合

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