連載

意味がわかると怖い話:「ミサキの悪夢」(2/2 ページ)

謎の女がささやく名前は……。

advertisement
前のページへ |       

「ミサキの悪夢」解説

 死ぬ人間の名前を告げる「夢の女」は、果たして語り手が思っていたような、「ミサキ=命を奪う呪い」だったのでしょうか? 女の夢は単に、語り手の周りで死ぬ運命の者の名を予言していただけで、「その命を助けるチャンス」を彼に与える一種の守護霊だったのだとしたら。

 彼は「2回殺されかけた」のではなく、「2回死の運命を回避した」のです。しかし霊能者によってはらってしまったことで、3度目の死の運命は予告されませんでした。彼は、自身を救う機会をみすみす手放してしまったようです。

 今回のお話のテーマは「七人ミサキ」(お話の中ではミサキではなかったわけですが)。実際の伝承は作中の設定とは少し違い、ミサキは7人1組で、誰か1人を取り殺すと、うちの1人が成仏して代わりに殺された者の霊が新たなミサキとして加わるという、卒業と新加入を繰り返すアイドルグループのようなシステムを取る妖怪です。「ミサキ」という語はそもそも「御先」と字を当て、神霊の使い、降臨の予兆を指していたそうですが、「小規模な神霊」というイメージが各地で転化し、概ね「眼に見えぬ精霊で、触るれば人を害すべきもの」(柳田国男)を表す意味の幅広い言葉になったそうです。

advertisement

 ミサキになるのは、水難事故の犠牲者や主君の不興を買って自害させられた武士、殺された旅人や平家の落人などバリエーションはさまざまで、いわゆる「六部殺し」譚や「船幽霊」伝説などと有機的に習合している例が多いのが面白いところです。

白樺香澄

ライター・編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリ・クラブ」に所属。怖がりだけど怖い話は好き。Twitter:@kasumishirakaba

前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. 刺しゅう糸を20時間編んで、完成したのは…… ふんわり繊細な“芸術品”へ「ときめきやばい」「美しすぎる!」
  2. 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」【大谷翔平激動の2024年 現地では「プレー以外のふるまい」も話題に】
  3. 後輩が入手した50円玉→よく見ると…… “衝撃価値”の不良品硬貨が1000万表示 「コインショップへ持っていけ!」
  4. 友達が描いた“すっぴんで麺啜ってる私の油絵"が1000万表示 普段とのギャップに「全力の悪意と全力の愛情を感じる」
  5. 毛糸6色を使って、編んでいくと…… 初心者でも超簡単にできる“おしゃれアイテム”が「とっても可愛い」「どっぷりハマってしまいました」
  6. 「これは家宝級」 リサイクルショップで買った3000円家具→“まさかの企業”が作っていた「幻の品」で大仰天
  7. 「人のような寝方……」 “猫とは思えぬ姿”で和室に寝っ転がる姿が377万表示の人気 「見ろのヴィーナス」
  8. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  9. 山奥で数十年放置された“コケと泥だらけ”の水槽→丹念に掃除したら…… スッキリよみがえった姿に「いや〜凄い凄い」と210万再生
  10. 13歳少年「明日彼女に会うから……」 パパを説得してヘアカットへ→大変身した姿に「生まれ変わった」「全く別人みたい」【海外】