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【追記あり】江戸川乱歩の『人間椅子』を体験できる企画展が誕生! さいたま文学館に体験の感想や見どころを聞いた(1/2 ページ)

人間椅子、座ってみるか、座られてみるか。

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【追記】新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から延期されていた『人間椅子』体験会について、さいたま文学館より開催決定のアナウンスが行われました。開催日は2022年1月30日、2月26日。参加には事前の電話申し込みが必要です。(11月27日 11時5分)

 江戸川乱歩の『人間椅子』を実際に体験できる催しが、Twitter上で話題になっています。この催しは、さいたま文学館の企画展「没後55年記念 江戸川乱歩と猟奇耽異(Curiosity Hunting)」の一環として行われるもの。企画展では、主題となっている乱歩はもちろん、「猟奇耽異(りょうきたんい)」という軸から芥川龍之介や谷崎潤一郎、佐藤春夫などにゆかりの品も紹介されます。

こちらが今回使われる人間椅子です(画像提供:さいたま文学館)

 江戸川乱歩の『人間椅子』は、著名な作家の元に謎の手紙が届く、という内容のスリラー小説です。その手紙には、差出人の男が椅子の中で暮らし、座る人の感触を楽しんでいるのだという赤裸々な告白が記されていました。手紙を読み進めるうちに、作家はだんだんと「自分が座っている椅子の中に、この男が隠れ住んでいるのでは?」という恐怖に駆られていきます。その後、作家の元に男から新しい手紙が届くが……? という、身の毛がよだつ描写が光る作品です。

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 その人間椅子を実際に体験できるのが、今回の企画展。本展を企画するさいたま文学館の企画担当者・影山亮さんに、人間椅子を体験した感想や、展示の見どころを聞きました。

――まず、今回開催される企画展の見どころを教えてください。

 江戸川乱歩に関する展示は数多いですが、本展では差異化を図るために、いわゆる一般文壇の文豪といわれる、芥川龍之介・佐藤春夫などが手掛けた探偵小説に関する展示も数多く用意しています。活躍した時代が違ったり、生前交流がなかったりした作家でも、猟奇耽異や探偵小説という補助線を引くことで、同じモチーフでつながることができるという展示にしております。

――2020年の「太宰治と埼玉の文豪展」に引き続き、今回も文豪に関するPCブラウザゲームとタイアップされていますね。前回の評判を受けて今回もタイアップに至ったのでしょうか?

 はい。特に若い方に展示を見てもらいたいということで、今回もタイアップさせていただきました。

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――「太宰治と埼玉の文豪展」は、私も実際に足を運びました。前回は学芸員の方による展示説明ツアーなどがあり、とても楽しかったのを覚えています。こういう状況下ではありますが、今回もそういった取り組みをされる予定はありますか?

 人数制限をして感染症対策をした上ではありますが、なるべく同じようにやりたいと考えています。行われるはずだった講演会やトークイベントなどはYouTubeで生配信しており、コロナ禍に対応したイベントは行っています。しかし、展示は実際に足を運んでいただいて、生のものを見ていただきたいと思いますし、こうした取り組みを両輪で行っていきたいと思います。

――『人間椅子』を体験できる企画が話題になっていますが、職員の皆さまはもう体験されましたか?

 Twitterで思っていた以上の反応をいただき、驚いています。われわれは椅子を作っていただいた際に『人間椅子』を体験しました。当館は桶川市民ホールに併設された施設なので、椅子はステージのセットなどを製作している方に作っていただいたのです。

――座ったり座られたりするのは、どのような感じがしましたか?

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 やはり、気持ちが悪いなと思いました(笑)。私はもちろん同性の人間と一緒に体験しましたが、同性とではないと厳しいですし、乱歩特有の「椅子の中に入ろう」という発想自体に加えて“皮膚感覚”を体験できたので、より一層作品に関する理解が深まったと思います。乱歩の研究においては“皮膚感覚”が注目されておりまして、いわゆる「ぬめっとした」感じなどが指摘されています。布一枚を通してみた皮膚感覚で、乱歩の世界に一歩近づけたように感じました。

――その感覚をぜひ体験してみたいと思います。この企画は相手との距離感がかなり気になりそうですが、知らない人同士の場合は了承の上でやってもらう形になりますか?

 そうですね。主に想定していたのは、複数人で来場していただいて交代でやってもらう形ですが、お一人様の場合は「こちらの方と一緒でよろしいでしょうか?」という形で体験していただくことになると思います。この状況ですので、防護服を着た上でやっていただく予定です。

――人間椅子になる側ですが、大柄な人間でも入れますか?

 程度にもよりますが、身長180センチくらいまでの方なら問題ないかと思います。

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――最後に、来場者に向けて一言お願いします。

 乱歩が探偵小説を書いているのは世界中の誰もが知っていることと思います。一方で、芥川龍之介や谷崎潤一郎などが探偵小説を執筆していたことはあまり知られていないように感じます。そもそも、企画展のタイトルに入っている「猟奇耽異」は、佐藤春夫が“Curiosity Hunting”を訳して、日本における探偵小説を定義づけたものです。つまりわれわれが使う「猟奇的」という言葉は、春夫が生み出したんですね。「猟奇耽異」とは、奇妙なことをあさって、人と異なることにふける、という世界のことを指します。このテーマは乱歩だけではなく、大正~昭和初期の文豪には共通するモチーフでした。そういったことを、今回の展示を通じてぜひ知っていただければと思います。

乱歩が自身に関する手書き資料や、雑誌新聞に載った記事をスクラップした自製本『貼雑年譜』の復刻版ゲラ画像(資料:個人提供、画像提供:さいたま文学館)
『貼雑年譜』の復刻版ゲラ画像その2(資料:個人提供、画像提供:さいたま文学館)

乱歩と「猟奇耽異」の世界

 本展は、江戸川乱歩のみならず、「猟奇耽異」に関する著作を発表していた文豪たちも取り上げられます。「猟奇耽異」の世界に浸ることで、新たな発見がありそうです。どんな作品が取り上げられるのか、楽しみな方も多いことでしょう。なお、開催期間は3月24日~4月18日の予定ですが、社会情勢の変化に伴い変更になる可能性があります。最新の情報はさいたま文学館公式サイトをご確認ください。

さいたま文学館外観(画像はさいたま文学館公式サイトより引用)
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