「夢は叶う」は呪いの言葉? 歌手になる夢を諦めた日、最後の路上ライブで歌う女性の漫画がグッとくる(1/2 ページ)
その言葉は夢の支えか苦しい呪いか。
「夢は叶う」という言葉はある種の呪いといえるのかもしれません。10年間追い続けた“歌手になる夢”を諦めた日、同じ夢を持つ小さな子どもと出会った女性の漫画が、誰かの背中を押すことについて考えさせます。
歌手になる努力を10年間続けてきた主人公の女性。しかし、集大成として全力を出し切ったオーディションの結果は不合格でした。あっけなく迎えた最後とその解放感から、長年かけて追いかけた夢が呪いだったことを実感します。
最後の路上ライブをしながら思い返すのは、学生時代の先生の言葉です。「私歌手になりたいんです!」と告げる女性に対し、先生は「何にだってなれるよ あなたなら」と背中を押してくれました。その言葉を胸に頑張ってきた結果が現在の自分。あの瞬間こそが呪いにかけられた瞬間だったのかもしれません。
「あの先生がさー無責任なことゆーから10年もやっちゃったんだよ」ともやもやする女性。すると、通りすがりの少女が「お姉ちゃん お歌上手いねぇ!」と頬を赤くしながら声をかけてきます。
「私歌手になりたいの」と打ち明ける少女に、女性はかつての自分を重ねます。とっさに「なれるわけないじゃん」と心の声が反応しますが、彼女の口から出た言葉は、かつての先生と同じ「何だってなれるよあなたなら」と背中を押す一言でした。
呪いの連鎖を作ってしまったかもしれないと悩みつつも、無垢な少女の笑顔を思い返しながら「あなたの夢が叶いますように」と願う女性。少女の背中を見送って、リクエストされた「ムーン・リバー」を最後の曲として歌いきるのでした。
女性が言うように「あなたの夢は叶う」という言葉が呪いに転じることもあるでしょう。しかし「あなたの夢は叶わない」という言葉もまた、その人を束縛する呪いになりえます。同じ呪いであっても、現実の厳しさを知りながら少女の背中を押した主人公の言葉には、10年間夢を追い続けた人の強さと優しさが感じられました。
作者は漫画家の一秒(@ichibyo3)さん。在宅勤務中のOLの日常を描いた漫画『在宅勤務子ちゃん』が発売中です。
作品提供:一秒(@ichibyo3)さん
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