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アニメ「ザ・シンプソンズ」で再び吹き替え声優変更か 「ファンの気持ち置き去り」「考えられない」と悲鳴上がる(1/2 ページ)

まさかの形で判明した新キャスト起用が物議。

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 ディズニープラスで配信中の人気アニメ「ザ・シンプソンズ」の日本語吹き替え版キャストが、変更されることが分かりました。同作を巡る日本語吹き替え版の声優変更問題は2度目で、ファンからは、「ファンの気持ちを置き去りにしたキャスト総入れ替えを受け入れることはできない」との声が上がっています。


世界中で愛されている「シンプソンズ」(C)2017-2018 Fox and its related entities. All rights reserved.

ザ・シンプソンズとは――

 「ザ・シンプソンズ」は、世界70か国以上で愛されているコメディーアニメ。アメリカのごく一般的な中流家族、シンプソンズ一家の暮らしをブラックユーモアと風刺たっぷりに描き、アメリカアニメ史上最長長寿番組としても知られています。

 日本ではサントリー「C.C.レモン」「ミスタードーナツ」のCMキャラクターに起用されたことがあるほか、人気ファッションブランドとのコラボレーションも積極的に行っているため、目にしたことのある人も多いのではないでしょうか。

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ザ・シンプソンズ MOVIE(amazon.co.jpより)

 そんな「ザ・シンプソンズ」ですが、2007年に初の映画化が決定した際には日本語吹き替え版キャストとして、芸能人の起用が発表されたためファンが猛反発。

 「シンプソンズファンクラブ」の前身「映画版『ザ・シンプソンズ』声優変更を考える会」が、大平透さん(ホーマー役)、一城みゆ希さん(マージ役)、堀絢子さん(バート役)、神代知衣さん(リサ役)らの続投を求めてマーケティング調査や署名活動を行い、「ザ・シンプソンズ MOVIE」のDVD版とBlu-ray Disc版には、劇場公開版(芸能人版)とオリジナル版、そして字幕版の3種類が収録される異例の対応が取られました(関連記事)。


ファンから集まった嘆願書(当時のもの)

 一方、テレビバージョンの吹き替え版制作についてはシーズン14を最後にストップしており、以降のエピソードは字幕対応が続いていたため、シンプソンズファンクラブをはじめとするファンは「シンプソンズ日本語版の魅力はベテラン声優陣による吹き替えの巧みさにあるといっても過言ではない」として、オリジナルキャストでの日本語吹き替え版復活を強く望んできました。


シーズン15以降のオリジナルキャストでの吹き替え版制作を望むファンの声

まさかの形で発覚した新キャスト起用――

 そんな中、事態が大きく動いたのは7月7日のこと。

 マーベル作品とのクロスオーバーとなる「ロキとバートたちの大乱闘(原題:The Good, the Bart, and the Loki)」がディズニープラス・アメリカ版にて配信された際、日本語吹き替え版が収録されていることが判明し、浦山迅さん(ホーマー役)、高倉有加さん(バート役)、うのちひろさん(リサ役)と、オリジナルキャストとは全く別の声優がキャスティングされていることが分かったのです。

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明らかになった新キャスト(アメリカ版ディズニープラスより)

 また翻訳も長年日本語吹き替え版を担当してきた徐賀世子さんから亀井玲子さんへ変更された一方、シーズン6以降のキャスティングなどを担当してきた演出の向山宏志さんは続投となることも明らかになりました。


大平透さんが「下品で面白い翻訳をしてくれる」と絶賛していた徐賀世子さんもスタッフリストから名前を消していた(アメリカ版ディズニープラスより)

 もし今後のシリーズも含めてレジェンドとも言えるオリジナルキャストの跡を引き継ぐとすれば新キャストへの重圧は計り知れませんが、ファンからは「声優変更はちょっと残念だけど、また吹き替え版が見られるのは嬉しいしとてもありがたい」と肯定的な意見がある一方で、「吹替声優が全員変わってるってどういうことですか?」「あの声優さん達だからこそのシンプソンズなのに…」「シンプソンズで育ったので声優変え地雷すぎる…」との声も。「堀さんのバートシンプソン好きだったのに普通に悲しい」「リサは神代知衣さん以外考えられないよー!声優さん変更しないで」との悲鳴も上がっています。

 また2019年に21世紀フォックス(現・FOXコーポレーション)がウォルト・ディズニー・カンパニーに買収されたことを受けて、「ついに踏み切ったかディズニー」「シンプソンズの声優陣が一新されたのはやっぱD社だからそこら辺の関係かねえ」といぶかしむ声も上がっています。

 ホーマー役の大平透さんが2016年に惜しまれつつ天国へと旅立った後も、オリジナルキャストの多くが第一線で活躍しているため、一部のキャストのみを変更して吹き替えを続けることはできるのではないかとの意見も出ている今回の決定(マージ役の一城さんは「名探偵コナン」のジョディ・スターリング役、リサ役の神代さんは「きかんしゃトーマス」のパーシー役など)。

 ファンとの交流を行ってきた経緯の中で制作側が「日本のファンがオリジナルキャストでの日本語吹き替え版制作を熱望している」と把握していたにも関わらず、何の発表もなく、日本語吹き替えを新キャストで制作し、アメリカ版ディズニープラスで先行公開したことについては、「悪手だ」と怒りの声も上がっています。

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 こうした声を受け、ねとらぼ編集部は吹き替え版の制作を行っているグロービジョンとディズニープラスに対して「ザ・シンプソンズ 日本語吹き替え版キャストの変更は『ロキとバートたちの大乱闘(原題:The Good, the Bart, and the Loki)』1作限りのことなのか(マージ役についても今後変更予定があるのか)」「オリジナルキャストを別役で出演させる可能性はあるか」について取材を申し入れました。

 これに対してディズニープラスは「キャスティングに関する経緯について、詳細はお答えしかねますが、日本語吹替版の制作スケジュールなどにより、別の方を起用する場合がございます」と回答を寄せました。

シンプソンズファミリーとして

 以前ねとらぼ編集部が取材した際には、「声優人生の中で『どうしてもやりたい!』と願った唯一無二のキャラクター、それがマージです。ですから、もし今後日本語吹き替え版を製作するとなったときにはどうしてもまたやりたいんです」と語っていた一城さん。

 レジェンド声優だからこそのギャラについても「この作品はね、お金じゃないんです。声優の立場からこういうことを言っていいのか分からないけれど、パパ(大平透さん)が大切にしてきたこの作品に携わることが私達ファミリーにとって大切なことだから、もしすごく安い金額で『お願いします』って言われても私は出ますよ。だってシンプソンズのことを心から愛しているから」と胸の内を明かしていました。

 リサ役の神代知衣さんも一城さんと同様の見解を示しており、「やっぱり私たち吹き替え版キャストは“ファミリー”だという感覚がすごくあるし、そこにはスプリングフィールドの住民として『シンプソンズファンクラブ』をはじめとするファンの皆さんもいらっしゃるんです。だからもし将来、リサの役を離れる日が来たとしても、何らかの形で『ザ・シンプソンズ』に関わり続けていきたいです」と語っていました。

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 そしてホーマー役の大平透さんも生前、シーズン15以降の吹き替え収録再開を心待ちにしており、その際「ギャラは問わない」と明言していたことが逸話として知られています。残念ながらその願いは叶いませんでしたが、有志によって開催された「シンプソンズファン感謝祭」に大平さんは5回全てに出演し、ファンへの感謝とホーマーへの思いを紡ぎ続けていました。

シンプソンズファンクラブ「賢明なご判断を」

 シンプソンズファンクラブのメンバーは新キャストの吹き替えを視聴したうえで取材に対し、「14シーズン分の積み重ねがあるのに声が全て変わるということは即ち、作品の演出、空気感までガラッと変わり、せっかく築き上げてきた作品の財産をすべて捨ててしまうという非常に勿体ない行為です。我々をはじめ、ファンの意外と多くの人が、DVDを持っているのにわざわざディズニープラスに加入しています。それはやはり、シーズン15からのオリジナル声優起用での日本語吹き替え版制作に期待しているからです」とコメント。

 シンプソンズファンクラブとして独自のエピソードガイドを制作するなどしてきた活動経験を踏まえて、「長きにわたって応援し続けてきたファンの気持ちを無視すれば、予算と時間をかけて吹き替え版を制作した新吹き替え版によって加入者を減らしかねない」との見解を示しつつ、「吹き替えキャストの総入れ替えに反対すると同時に、シーズン15以降にもこれまでのキャストを継続して出演させていただけるよう要望します。ディズニー社には今一度賢明なご判断をしていただけることに期待します」としました。

 ファンにとってもオリジナルキャストにとっても待望だった「ザ・シンプソンズ」日本語吹き替え版の制作は今後、どのように進むのでしょうか。制作側がファンの声を聞くチャンスは今なのかもしれません。


大平さんをはじめ多くの声優さんがファンのために集った感謝祭(シンプソンズファンクラブ提供)
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