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人ではない生き物に変わってしまった姉は「以前と同じ姉」なのか? 凄惨な過去と姉妹の絆を描いた漫画に「尊い」「感動した」の声(1/7 ページ)

非常に古くから伝わる、難しい問題です。

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 ある物体において、それを構成するパーツがすべて置き換わったとき、過去のそれと現在のそれは「同じ」と言えるかどうか。「テセウスの船」と呼ばれるこの問題は、おおむね「たとえ部品がすべて入れ替わったとしても、その根底さえ変わらなければ同一と捉えられる」とされているようです。

 今回ご紹介する作品は、とある姉妹をめぐる「同一性」の問題、同時に思い出される凄惨な「過去」、そして「姉妹の絆」を描いた漫画です。

 妹の帰省によって、久々に顔を合わせた姉妹。妹は都会へ、姉は実家で……彼女らはそれぞれの道を歩んでおり、各々に自分のやりたいことを追求しているようです。

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 両親とは自動車の事故で死別しており、実家には姉が1人で住んでいるだけ。妹は「ここは自分たちがつらい思いをしたところ、早く出た方がいい。事故の後遺症で片足が動かないんだからなおさら大変だろう」と姉を諭します。ですが姉は「都会よりも田舎のほうが暮らしやすい、それに自分の研究にも合っている」と返すのでした。

 ところで姉は「粘菌」の研究者で……、「動く植物」とでも言えばよいでしょうか、その不思議な魅力に取りつかれており、独自に研究を行っています。やがて話題は姉の研究、そして彼女の発見した新種の粘菌の話になるのですが……。

 姉いわく、その新種の粘菌は「食べたモノの形質を模倣する、簡単に言えば食べた生物にそのまま成り代わる。それだけではなく、食べたモノの記憶や行動もすべて引き継ぐ」と言うのです。そして姉は自身の頭をもぎり取り、自らの手で持つと、妹の目の前へ差し出しました。

 なんと姉の身体は、新種の粘菌によって食べ尽くされ、成り変わられ、人間の部分は1つも残っていない、と言うのです。ですが先の説明通り、彼女は粘菌となったものの人間の形状を保ち、意識や記憶、行動や趣味嗜好といった「人間の姉」としての要素をすべて引き継いでいるのでした……。

 粘菌が姉に成り代わり、同じ人物として目の前にいて、自身が確かに「姉」と認識できる人物。でもそれは、本当に同じ姉と言えるのか。まさに「部品がすべて入れ替わった船は、果たして同じ船と言えるのか」という「テセウスの船」のパラドックス……。現状を受け入れられない妹は、ついには姉の正体を疑い、拒絶してしまうのでした。

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 ここから明かされる姉妹の記憶……ふたりが両親から暴力を振るわれ、妹は特にひどい虐待を受けていたこと。妹が顔に重い火傷を負わされ病院へ搬送されたその日、両親と姉が事故に遭った理由。姉が新種の粘菌を拒まず、あえて全身を食らわせた思いとは……。気になる展開とその結末は、漫画を読み進めてお確かめください。

 作者は小野未練(@tikuwa_surimi)さん。本作品は第84回ちばてつや賞ヤング部門にて佳作を受賞したもので、こちらを含めた複数の漫画作品をBOOTHにて販売しています。

作品提供:小野未練(@tikuwa_surimi)さん

記事:たけしな竜美(@t23_tksn

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