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「駅の待合室をバケモンが占領している」→“謎の生き物”の正体について大分県立美術館に話を聞いた(1/2 ページ)

3月30日まで大分駅ホームで鑑賞できます。

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 駅の待合室をバケモンが占領している――。そんなまさかの投稿がTwitter上で話題になっています。編集部ではこの「怪物」の正体について大分県立美術館に話を聞きました。

駅に現れた“謎の生き物”(画像提供:ティッシュ(@SPEED_isPOWER)さん)

 話題のきっかけとなったのは、Twitterユーザーのティッシュ(@SPEED_isPOWER)さんが、「待合室をバケモンが占領しているせいで客が寒空の下待たされるの良いな」というコメントと共に投稿した写真。駅の待合室のようなスペース(正しくは元喫煙所)に鎮座する迫力ある怪物の様子が写っています。

 この投稿に対してネット上では、「明らかに序盤で勝てる強さじゃない序盤のボス感」「入ったら窓が血だらけになるやつ」「さすがにバケモノも寒いのは苦手か…」「ラスボスより強くて倒してもストーリーに影響のないタイプの敵」など、ゲームのボスになぞらえた声が多く寄せられました。たしかに、強ボスの風格を漂わせていますが、一体何者なの……?

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 その正体は、絵本作家/美術家である2人組ユニット「ザ・キャビンカンパニー」による、「キメラブネ」というアート作品。JR大分駅3・4番線ホームの元喫煙スペースを活用して展開する、JR大分駅と大分県立美術館(OPAM)との共同企画の展示作品です。

(画像提供:大分県立美術館)

 同企画は、大分ゆかりのアーティストが、JR大分駅のプラットフォームに大分県立美術館をイメージして作品を制作する「OPAM at Platform of Oita Station」というもので、キメラブネはその記念すべき第1回目の作品です。こちらは、OPAMのイメージを同県にゆかりのある南蛮船に重ね合わせ、元喫煙所を南蛮船に見立てた作品。南蛮文化が由来の「虎」「象」「孔雀」を混ぜ合わせたキメラが運ばれてくる様子を表現しています。

 編集部ではこうした取り組みについて大分県立美術館に取材を行いました。

――駅の元喫煙スペースを活用しているとのことですが、どういう経緯でアートを展示するようになったのですか。

担当者:大分駅の禁煙化に伴い、大分駅の4カ所にそれぞれ設置されている喫煙スペースの使用を中止することになったそうなのですが、そこを何か活用できないかと大分駅の駅長から相談がありました。

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 そこでこちらから、大分ゆかりのアーティストの発表の場、インスタレーションの場として活用することなどを提案し、採用された次第です。展示期間は半年間で、半年おきに新たなアーティストの作品発表を予定しています。

――作者のザ・キャビンカンパニーは大分県の廃校をアトリエとして活動しているユニットですが、「OPAM at Platform of Oita Station」第1回目の作品に彼らが選ばれた理由は何ですか。

担当者:ザ・キャビンカンパニーは若手ながら既に30冊の絵本を発行しているほか、各地で展覧会を開催し、山田うんさんの舞台「オバケッタ」の舞台美術や、あいみょんさんのツアーパンフレットを手掛けるなど、 若手ながら十二分の実績と実力を持つユニットです。

 駅の元喫煙スペースという特殊な環境で、OPAMをイメージした作品という決して容易ではないテーマでしたが、きっと期待に応えてくれると思いお願いしました。何より、こちらが見たことも考えたこともないようなクリエーションを発揮してくれるという期待がありました。

――同作品を鑑賞するポイント、注意事項などはありますか。

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担当者:JR大分駅を利用する方はどなたでもご覧いただけますし、定期券や切符などをお持ちでない方も入場券を購入すればご覧いただけます。特に注意点などはありませんが、列車などにはお気を付けいただきたいと思います。

 四方ガラス張りですので、どの面、角度からも、いろんな表情をご覧いただけます。日中もよいですが、陽が落ちると、4隅からのライトアップでより作品の迫力が増すかと思います。

ライトアップされたキメラブネ(画像提供:大分県立美術館)
キメラブネ、正面から見るか、横から見るか(画像提供:大分県立美術館)

――Twitter上で大変話題になっていますが、反響は届いていますか。反響についてどう思われましたか。

担当者:考えたこともなかった反響の大きさでした。ザ・キャビンカンパニーを知る関係者や、メディアの方々からも多数問い合わせがあり、 正直びっくりしています。

――「OPAM at Platform of Oita Station」の4月以降の展示の予定は決まっていますか。

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担当者:4月から半年間の展示を担当して頂くアーティストには既に制作に入って頂いております。その後も、いくつか候補のアーティストを考えております。

――最後に、記事をきっかけにOPAMを知った読者に伝えたいことがあれば教えてください。

担当者:今回、JR大分駅というある種予想外の空間で、アートを展開する機会をいただきました。単に当館で開催する展覧会のポスターを並べ連ねるだけのものや、お決まりの当館の写真や紹介文を貼り込んだパネルなどを掲示するだけでは面白くない(自分たちとしても情けない)と考え、どうせやるなら、OPAMやるなぁというものをやりたいと考えました。

 それがこんなかたちで、多くの方々に知って頂くことになり、大変うれしく、光栄に思っています。それも、ザ・キャビンカンパニーの力によるものです。

 ぜひ、機会がございましたら、また、今回のことで当館を知った方、ちょっと行ってみようかなと思われた方、気軽にお越しいただければと思います。皆さまのお越しをスタッフ一同、心よりお待ちしております。

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(画像提供:ザ・キャビンカンパニー)

「街に開かれた縁側としての美術館」

 OPAMは「出会いと五感のミュージアム」をコンセプトに2015年に開館。建物の設計は世界的に活躍する坂茂氏によるもので、「街に開かれた縁側としての美術館」を体現すべく、建物の外壁面をガラス張りにするなど、開放感のある空間を創出しています。

 大分ゆかりの作家の作品を中心にしたコレクション展と、国際的な視野に立った自主企画展、さまざまなワークショップなどを開催するほか、県民の創作活動の発表の場としても広く活用されており、年間50万人以上の来館者が訪れているそうです。

 今回のような取り組みだけでなく、美術館においても、カフェやショップを併設し、展覧会や教育普及の企画などの取り組みを行っています。ちなみに現在は「相田みつを全貌展」「生命のれきし―君につながるものがたり―」など複数の展覧会を開催しており、2月14日からは「庵野秀明展」も予定されています。

OPAM 1階アトリウム(画像提供:大分県立美術館)
OPAM 外観(画像提供:大分県立美術館)
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