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間違っていたって構わない、だから言語解読アドベンチャー「7 Days to End with You」は今の時代に遊ばれるべき傑作ゲームなのだやや最果てエンタメ観測所(1/3 ページ)

『解体新書』を翻訳した杉田玄白や前野良沢の気分になれるゲーム。

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 また、大好きなゲームに出会ってしまった。その名も――「7 Days to End with You」iOSAndroidSteam)。知的で、エモくて、切ない。心の大事な場所にしまっておいて時々取り出して眺めたくなるような、そんな一本だった。

「7 Days to End with You」タイトル画面)

ライター:砂義出雲

作家・シナリオライター。はてなダイアリー「やや最果てのブログ」の運営を経て、2011年に小学館ライトノベル大賞・優秀賞を受賞し『寄生彼女サナ』でデビュー。なんだかんだ10年以上業界の片隅でラノベを書いたりゲームシナリオを書いたりしてきました。映画とゲームとsyrup16gが生きる糧。人生ベストゲームは「Outer Wilds」です。

Twitter:@sunagi

 

全く新しいパズル&ノベルゲーム体験

 本作は、iOS版&Android版が2022年1月24日に、Steam版が2022年2月6日に発売になった個人制作のインディーゲームだ。ドットを基調としたグラフィックのためスマホやタブレットでも動き、値段も定価500円程度(iOS、Android 490円/Steam 520円)と手ごろであるためプレイのハードルは低いだろう。今後、さらに人気が出ていく予感がしている。狭い範囲でのタップを繰り返すので、個人的にはマウスを使えるSteam版や画面の大きなタブレットなどの方が遊びやすい気はする。

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 それでは、本作がどういうゲームなのか説明しよう。ゲームを始めると、いくつかの説明文のあと、主人公は記憶を喪失した状態で目覚める。目の前には、物憂げにこちらを見つめる赤髪の女性。そして、「その人」は話しかけてきてくれるのだが――まず、あなたは驚くに違いない。

 彼女の話す言語が独自の記号で表記されており「何一つ理解できない」ことに。

これが、最初に話しかけられる言葉。この調子で文章が続いていく

 

 そう、このゲームは目の前にいる相手が何を喋っているか文脈から推理しながら物語を読み解いていく、全く新しいジャンルのパズル&ノベルゲームなのだ。

 最初は誰もが何一つ分からないままゲームを進めていくことだろう。だが、毎日の会話を繰り返すうちに、相手が喋っている言語はどうやらいくつかの単語の組み合わせでできているらしいことが分かってくる。

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 そして、ふと気付く。

 恐らく、毎朝起きた瞬間に発されているこの単語は「おはよう」なのではないか? 相手に感謝される行為をした直後に発されているこの単語は「ありがとう」に違いない。あるいは、同じシチュエーションで指さすものだけ変えて会話をしたとき、その差分がそれらの「単語」を表しているのだろう……など、こんな推論を積み重ねて、相手が話している言語を自分で翻訳していくことになる。

 また、ゲーム内で翻訳した単語にラベルを貼りつけるようにルビを振ると、それ以後も文中でルビが表示され続ける。この際、単語を任意に色分けすることもできるので、その機能もフル活用して解読していくといいだろう。色分けは名詞や動詞などの品詞推定に使ってもいいし、筆者の場合は単語の「確信度」で色分けしていった。

ネタバレ配慮のため一部加工済。ラベルに(仮)と付けたり二つの単語を併記しておくのがあるある

 

 このように、取りあえずでも単語を埋めながらゲームをプレイしているうち、不格好ながら相手が話している言語の翻訳が徐々に完成していく。そして、それに伴って、このゲームを貫く一つの「物語」の輪郭らしきものが見えてくる。

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 これがまさに新感覚の面白さなのだ。単語を推察する度、パズルのピースがはまるように分からなかったことが分かっていく感覚――それはまるで、江戸時代にオランダ語の医学書を文脈から読み解いて翻訳し『解体新書』を出版した杉田玄白や前野良沢にでもなった気分だ。子供のころ、歴史の本で「杉田玄白らは『フルヘッヘンド』という単語を、木の葉が積まれる様子にも使われていることから『うずたかく盛り上がる』という意味だと解読しました」というのを読んだとき、「しんどかったんだなあ」と思ったが、その気持ちの一端が分かった今、「……あれ? それって意外と楽しんでた面もあったんじゃない?」なんてことをちょっと思ったりもした。

 

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