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自分を変えるチャンスもあるー「神は見返りを求める」吉田恵輔×「空白ごっこ」セツコが明かす激動の時代の創作(1/3 ページ)

世代の異なる2人で違った見解も。

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 「ヒメアノ~ル」(2016年)や「BLUE/ブルー」(2021年)などの作品で知られる、吉田恵輔(「吉」はつちよし)監督の最新作「神は見返りを求める」が6月24日に全国公開されます。

 万引き疑惑のかかった少女の死を発端とした前作「空白」(2021年)から一転、カラフルでポップな印象を与える同作はYouTubeを舞台にした男女の悲喜劇。底辺YouTuber・ゆりちゃん(岸井ゆきのさん)の動画制作をひょんなことで手伝うことになった、イベント会社の中年社員・田母神(ムロツヨシさん)がある“出来事”をきっかけに豹変していく姿をカラフルかつ緊張感あふれる映像で描いていきます。

 また、ボーカリストのセツコさんを中心に、ボカロPのkoyoriさん(電ポルP)、針原翼さん(はりーP)の3人からなる音楽プロジェクト「空白ごっこ」も同作に参加。書き下ろしの挿入歌「かみさま」と主題歌「サンクチュアリ」は、ともに激しさと切なさがただよう楽曲へと仕上がっており、着地点が見えない2人の物語をグッと盛り上げています。

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 吉田監督とセツコさんの2人に、両者が幸福な出会いを果たすまでのいきさつ、作品テーマのひとつでもある“クリエイターが創作する上で立ちはだかる壁”などについてうかがいました。


吉田恵輔監督と「空白ごっこ」セツコさん

初コラボで「身構えていた部分も正直ありました」

―― 吉田監督の過去作、「純喫茶磯辺」(2008年)ではクレイジーケンバンド、「BLUE」では竹原ピストルさんといった“渋め”のベテランアーティストの楽曲が使われていました。結成3年目の「空白ごっこ」を同作で起用したいきさつは?

吉田恵輔(以下、吉田) 「空白」という重く暗い作品を撮った反動で、次作では振り切りたくなったんですよ。iPhoneでの撮影を導入したり、キモカワな着ぐるみを登場させたり、今までやったことのない試みをいっぱいやりたいと思った中で、自作に使ってこなかったアップテンポな挿入歌も入れてみたくなって。「君の名は。」の「前前前世」ぐらいの勢いがある曲を(笑)。


存在感が強すぎる着ぐるみ

 映画に合いそうなアーティストを紹介してもらったところ、「空白ごっこが多分イメージにピッタリなんじゃないか」ということで曲を聞いてみたところ、「めちゃくちゃ期待値高いぞ!」って。スケジュールがタイトだったのですが、いい出会いができたなって思っています。

―― 同作に寄せた「空白ごっこ」のコメントでは、「楽曲についてディスカッションし、とても身の引き締まる制作期間だった」とありました。監督側から最初にお話をいただいたときの思いをうかがえますか?

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「空白ごっこ」針原翼(以下、針原) 要望された楽曲のイメージが「19」だったんです。スタイリッシュな映画の雰囲気からして、やっぱり「カッコいい曲」「エモさ全開でガツンといく曲」を求められるかと思ったんですけど「そっちか!」って。「空白ごっこ」にとってチャレンジの意味もあっただけに、「これは難しいかも」と思いました。

「空白ごっこ」セツコ(以下、セツコ) 監督の今までの作品を見返したときに、クセの強さや皮肉っぽさをかなり感じつつ、大人向けっぽい部分もあるなと。「ちゃんといろいろ人生経験を踏んだ人たち」が見ているイメージを持ったので、身構えていた部分も正直かなりありました。

―― 「身構えていた」というのは?

セツコ 結構な要望が来るのでは、と思っていました。それだけに、どういう作品なのか知ったときは、「結構新しい方向性でいくんだな……」って。そもそも、作品の雰囲気が過去作品と違ってポップでしたし。

 やりとり自体も「自由にやっちゃっていいよ!」という空気感があって、思っていたよりわりと自由だなと。

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針原 この“自由”が難しいんだよね。

セツコ (笑)。難しいですけど、監督とのファーストコンタクトの際、「あ、こんな感じでいいんだ!」って肩の荷が下りた分、よけいな力を抜いて思うようにできた気がする。

完成品から“本物の愛に近い”何かを感じた

―― グループにとって、「かみさま」「サンクチュアリ」は実写映画へ初提供した楽曲となります。自分たちが今まで作ってきたものと比べて、やり方などで違った点はありましたか?

セツコ 私はゼロからイチにするのがわりと苦手で。あるテーマを与えられて深く考えてみたり、相手とディスカッションしたりする方が好きなんです。だから、自分で無の状態から曲や歌詞を書かないといけない場合と比べて、主人公たちの思いになりきっての制作は案外やりやすかったし、面白かったです!

―― なるほど。吉田監督は2曲をもらったときの印象を覚えていますか?

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吉田 いただいた楽曲をシーンに落とし込んだとき、田母神とゆりちゃんとの間にある距離がものすごく美しく、そこに一瞬「本物の愛に近い何か」が発生しているって思えたんですよね。

 楽曲がアップテンポなのにセツコさんの声と歌詞が切ないから、ワクワクドキドキさせつつどこか甘酸っぱさも感じられて。「俺が作った映画だけど、なんかすごい良いものになった」「すげぇいいの来た!」っていう思いです(笑)。「なんかアガる……!」って大事じゃないですか?(笑)。

―― 確かに(笑)。吉田監督が絶賛していますが、話を聞いていていかがですか?

セツコ 完成した作品を見るまでは「どうなるんだろう?」という思いがかなりあったんです。というのも、映像だけだったら2人の間柄が純朴でキレイに見える一方で、どこかよそよそしいというか、微妙な距離も感じてしまっていて。

 でも、映像と楽曲が組み合わさったものを見たとき、「ここからいい関係性に転じる2人になるのかも」っていう期待感が生まれましたね。監督と同じ感想なのですごくうれしいです!

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