JR6社の特別チケットで同性カップルが対象外になると波紋 JR東日本は「『法律上の婚姻とは異なる』ため該当しない」と回答(1/2 ページ)
背景には「LGBT差別禁止法」が導入されていないなどの問題もあります。
東日本旅客鉄道(JR東日本)などJR6社が、“2人の年齢を合わせて88歳以上の夫婦”を対象に提供している「フルムーン夫婦グリーンパス」において、自治体による「パートナーシップ制度」を利用している同性カップルが対象外になる――。三重県議会議員の稲森としなお氏(@inamori2009)による投稿がSNS上で波紋を広げています。
「フルムーン夫婦グリーンパス」は、JR6社が2021年10月1日から2022年6月30日まで提供している、JR線のグリーン車(新幹線「のぞみ」号「みずほ」号など、一部の列車を除く)を自由に乗り降りできるきっぷです。
投稿は、同性パートナーがいる知人がJR東日本に「フルムーン夫婦グリーンパス」の利用について問い合わせたところ、「これまで男女のご夫婦を対象として設定してまいりました」「同じ性別のパートナーのお客さまにつきましては『フルムーン夫婦グリーンパス』のご利用はできかねます」という回答を得たというもの。
今回、特に疑問視されているのは「事実婚」「内縁関係」など婚姻関係のない異性カップルと、同性カップルでの対応の差異です。異性カップルの場合、乗車時に年齢を証明できる公的証明書(健康保険証など)を所持する必要があるだけで、「事実婚」「内縁関係」などでも問題なく利用できます。一方で、同性カップルの場合、自治体による「パートナーシップ制度」を利用していても対象外です。
編集部がJR東日本にこのような運用になっている理由を聞いたところ、「同性婚に対する一部自治体などの取り組み(渋谷区など)は、現時点で『法律上の婚姻とは異なるもの』として位置付けられるため、同性婚(※)の方については、『フルムーン夫婦グリーンパス』の利用資格要件に該当しないという整理にしております」と回答しました。
※正しくは「パートナーシップ制度」です。JR東日本の回答のまま掲載しています
続けて、JR東日本は「(異性カップルの)『事実婚』『内縁関係』については、生計を同一にしている事実上の夫婦であり、婚姻届を提出すれば受理が可能であることから、利用資格要件に該当するとしております」と述べています。
これらのJR東日本のコメントを踏まえると、「フルムーン夫婦グリーンパス」の対象・対象外の判断は、「婚姻届を提出すれば受理が可能である」かどうかが決定打になっていると考えられます。ただし、日本では「同性婚」は導入されていません。
JR東日本は任意団体「work with Pride」がLGBTQ+など性的マイノリティへの取り組みを評価する「PRIDE指標」で、2016年から2021年まで5年連続で「ゴールド」を受賞しています(※)。社内では先進的な取り組みをしているものの、今回の利用客への対応には「遅れてる」「この対応はひどい」との声が寄せられています。
※JR西日本も2020年から2021年まで2年連続で「ゴールド」を受賞しています
また、背景には政府や自治体が抱える問題もあります。日本の「パートナーシップ制度」は、現在では人口カバー率は5割を超えていますが、普及率はまだ十分とは言えないでしょう。今回のような民間サービスも対象になると考えられる、性的マイノリティに対する差別を禁止する「LGBT差別禁止法」も導入されていません。
今後、同性カップルは「フルムーン夫婦グリーンパス」の対象外であるという運用を変える予定があるかと聞くと、JR東日本は「国などの法律整備状況などを注視しながら、JR6社で議論していきます。当社単独で発売している特別企画乗車券で、『夫婦』を対象に販売しているものはありませんが、社会の状況などを踏まえ今後当社として検討を進めてまいります」と述べています。
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