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バーチャル空間でのクラブイベントが人気加速中! 第一人者DJ SHARPNELに聞く、インターネットとVRのDJ30年史(2/4 ページ)

VRのクラブなら、おうちから0秒で遊びに行けます。

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――VRでクラブをやろうという考えは当時からあったんですか?

 そのときからありましたね。アバターで入るイメージもあったんですけど、そんなにすぐには実現しないだろうっていうのは分かってはいて、2014年ぐらいにVR視聴機の体裁で、新譜の視聴ができるというものをM3(音楽系の同人即売会)で発表しました。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)をかぶってステージを見ると初音ミクのモデルがいて、それがDJしているのが見られる。当時ゲーミングノートPCとVR一式をM3の会場に持って行って、ヘッドフォンとHMDをドンとかぶせて1人ずつ見てもらうっていう体験会をやってましたね。VRを初めてやる人たちばかりだったので、反応は面白かったですね。

2014年、M3でのVR試聴機。当時としてはかなり珍しいアイテム
2017年のM3ではVR試聴機として「着るウーハー強化版」が作られた

――2017年に「仮想化します」と発表されて、結構文言としてもセンセーショナルに感じました。あれはどういう意図でしたか?

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 2016年くらいには「このままずっとリアルでやり続けてもそんなに今までやってきたことと変わらない」というのは当然分かってはいたんですね。リアル側では後輩の人たちがすごいしっかりしたイベントをやっているし、カルチャーとしてだいぶ盤石な状態になっているので、自分がそこで活動していても1プレイヤーになるだけだと思ったんです。それよりはむしろ、「VR×クラブDJ」は今まだ誰もやってねえぞっていうね。2016年なんでまだVRChatがまだいまのような状態ではなかったので、そのときは360度カメラで撮影したものを見てVR体験ができる、っていうイメージで「音楽活動の仮想化」っていうメッセージを出しました。

怒涛の変化を遂げた2016年以降を語るDJ SHARPNEL

――メタバース上でDJができるようになったのはいつぐらいなんですか?

 実際は早いところで2017年の終わりぐらい。2018年には今のようにVR上でDJをする形になりました。やっぱりVRChatの存在が大きいですね。

――2017年末となると、VTuberが話題になったのと同じタイミングですね。

 そうですね。特にキズナアイさんやいわゆる四天王と呼ばれる人たちが話題になったのが2017年の終わりぐらい。ねこます(※4)さんが筆頭ですけどVRChatにみんなで遊びに行く流れもあったんですが、VR機器を持ってる人は全然いなかった時代です。初代VIVEを2017年に買ってた人たちがVRChatで遊んでいましたが、ほんと限られた人たちしかいなかったですね。

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※4 「バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん」としてVTuber活動をしていた人物で、今はVTuberを引退している。男性であることを明かしつつ女性アバターで活動するスタイルが衝撃を呼んだ。日本にVRChatの話題を拡散した第一人者でもある

20世紀のハードコアシーンとインターネット黎明期

――いったん過去にさかのぼって、DJ SHARPNELさんの活動履歴をお聞かせください。音楽に触れたのはいつくらいですか?

 アマチュアで最初に楽曲を発表したのは94年とか5年ぐらい。パソコン通信のライブラリーと呼ばれるところにMIDI音源をアップロードしていましたね。95年当時影響を受けてたのは電気グルーヴなどで、テクノトラックや「新世紀エヴァンゲリオン」のサウンドトラックを耳コピしたりとかやってました。

――その当時はアニメ系のものとクラブ系のものをぶつけようっていう動きはなかった気がします。

 そうですね。面白テクノ系みたいなのは電気グルーヴの独壇場っていうイメージで、テクノシーン自体は結構真面目でした。クラブでも面白系はかからなかった時代ですね。

――その当時のDJ SHARPNELさんは、クラブ文化もオタク系文化もどちらもかじっていた感じなんですか?

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 当時はアニメのサンプリングで曲を作るのは手法的なところが大きかったです。テクノはMIDI機材で打ったりするんですけど、これだとサンプリングを乗せられないので、ModPlug Trackerを使っていました。Impulse Tracker(※5)っていう、WAV音源を積み重ねて曲を作るトラッカーで曲を作り始めたのが96年ぐらいです。アニメの声とハードコアテクノやガバ(※6)の音楽を組み合わせてやりはじめました。

※5 1995年に公開されたマルチトラックミュージックトラッカー。DOSプラットホームで動かすことができる

※6 ハードコアテクノは、早めのBPMと強めのビートが特徴の攻撃的なテクノサウンドのこと。派生ジャンルとしてガバ、ブレイクコア、スピードコアなどがある。ガバはBPMが非常に早く、激しいキックドラム音(ガバキック)が特徴

――ハードコアとかガバという音楽は当時そこまで一般的ではなかったですよね。

 当時は「リッジレーサー」のサウンドトラックで、細江慎治(※7)さんがガバを作っていたぐらいしか世間とガバの接点はなかった状況でした。僕は関西にいたので、大阪で始まっていたガバのムーブメントには足しげく通っていて、ライブでアニメサンプリング+ハードコアでやられてる諸先輩方を見ていました。

※7 ゲームで特徴的なサウンドを生み続けている作曲家。「リッジレーサー」ではガバ、ロッテルダムテクノを盛り込み話題に。後にテクノポップバンドやテクノDJとしても活躍している

こんな形でインタビューしました。左がDJ SHARPNEL、右が取材中の筆者たまごまご

――今でいう「ナードコア」(※8)はすでにあったんですか?

※8 テレビ、アニメ、サブカルチャー方面の音をサンプリングしてテクノサウンドに乗せる手法のカルチャーの総称

 「ナードコア」は文脈が違うんです。アニメやゲームのサンプリングを使ってクラブミュージックをミックスする人たちはすでにその時点ではいらっしゃいました。その手の音は98年以降は雑誌の『クイックジャパン』によって「ナードコア」ってカテゴライズされるようになるんですけれども、正直自分たちでは「ナードコア」っていう風に言っていないです。オランダとかドイツのガバやハードコア、スピードコアのジャンルの文脈に乗せて制作してます。

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――なるほど、あくまでハードコア音楽にサンプリングとして面白いものを入れようと。

 そうですね。向こうのスピードコアやガバとかでも、向こうで流行ってるテレビとかヒップホップとかをサンプリングして自分たちの新しい音楽を作る活動が始まっていました。仲良くさせていただいているSpeedFreak(※ドイツのガバ・ハードコアの有名プレイヤー。サンプリングを多様し、強めのガバキック音で盛り上げるのが特徴)もサンプリングのスキルが非常に高くて、そこに影響を受けて僕らや先輩たちはやっていましたね。93年から96年にかけてガバ・ハードコアの流れがあって、当時はお客さんだった僕も曲を作るようにもなって、リリースしはじめました。

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