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画像生成AIで描かれた『サイバーパンク桃太郎』、実験的な漫画制作から見えたこと Rootportインタビュー(2/3 ページ)

『サイバーパンク桃太郎』誕生秘話。

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画像生成AIの登場で人間の漫画家やイラストレーターが絶滅? 「あり得ない」

―― Rootportさんのブログで「絵ではなく“物語”を売ることが、私の仕事です」というフレーズを拝見しました。漫画原作者の視点で、生成AIの可能性やポテンシャルについて感じるところを教えてください。

Rootport 画像生成AIに限らず、ジェネレーティブAIは「人間の可能性を広げてくれる道具」だと私は考えています。

 マンガ原作者の立場から見た画像生成AIは、作曲家から見たMIDIのようなものです。現在のMIDIは素晴らしい音質で音楽を演奏できるようになりました。しかし、だからといって「MIDIがあれば人間のオーケストラは要らない」「初音ミクがいれば人間の歌手は要らない」と主張する作曲家はまれでしょう。むしろ蓄音機やテルミンの時代から、技術革新は音楽の世界に新たなジャンルを生み、作品の多様化を促進してきました。

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 同様に、画像生成AIの登場で人間の漫画家やイラストレーターが絶滅することは「あり得ない」と断言できるでしょう。技術革新は表現の幅を増やし、マンガやイラストの世界を豊かにしてくれるはずです。

 既に創作スキルを持っている人には、時短の道具として。創作スキルのない人には、新しい表現手段として。これら2つの方向から、ジェネレーティブAIは人間の可能性を広げてくれると考えています。

 プロのイラストレーターの間では、自分のイラストを追加学習させたAIで、作業の効率化を図る人が増えてきています。AIに自分の“画風”を覚えさせれば、大幅な時短ができるからです。この点では、経験豊かなベテランほど有利です。自分の“画風”を確立しており、かつ、追加学習に必要なイラストを既にたくさん描いているからです。

画像生成AIは、ただでさえすごい日本のマンガを、もっとすごくできる技術

―― 画像生成AIで漫画制作の現場はどう変化していきそうでしょうか。

Rootport マンガ制作の現場は過酷です。長時間労働が常態化し、徹夜が続くことも珍しくありません。原作者である私が言うべきではないかもしれませんが、特に週刊連載のマンガ制作は労働環境として人間の限界を超えています。

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 もちろんベテラン漫画家の中には、1日8時間労働・週休2日制を実現している先生もいます。しかし大半の漫画家にとって、それを実現するまでが(非現実的といえるほど)大変です。

 画像生成AIは、このような劣悪な労働環境を劇的に改善できるはずです。これは、漫画家が楽になることだけを意味していません。アイデアを取捨選択してネームを練る作業にも、今までより時間を割けるようになります。つまり、マンガの“面白さ”そのものを底上げすることにつながるはずです。

 さらにAIの普及は、マンガの表現そのものの幅を広げてくれるでしょう。

 現在、大半の読者はマンガをスマートフォンで読んでいます。つまり、今のマンガのライバルは紙の印刷物ではありません。YouTubeやTikTokのような動画アプリ、あるいは『ブルーアーカイブ』や『原神』のようなゲームアプリと、「1枚の画面」というリソースを奪い合う関係です。

 にもかかわらず、マンガは今でも、基本的には19世紀のマンガ雑誌『PUNCH』と同様の白黒二色刷りで制作されています(編注:『PUNCH』は1841年に創刊された英国の週刊風刺漫画雑誌)。私は、マンガが古いと言いたいのではありません。19世紀と同様の白黒二色刷りでも、ド派手な『原神』のゲーム画面と張り合えていることに、日本のマンガの底力を感じているのです。

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 そして画像生成AIは、ただでさえすごい日本のマンガを、もっとすごくできる技術なのです。

 例えばマンガ家の中には、イラストレーターとしても活躍している方がいます。しかしフルカラーの美麗なイラストを描ける先生でも、マンガを描くときには白黒二色刷りが基本です。その最も大きな要因は、労力の高さ。フルカラーのイラストは作画にかかる労力があまりにも重いため、同じ品質の絵でマンガを作ることは難しく、週刊連載はほぼ不可能でした。

―― 画像生成AIを使うことで不可能が可能になると。

Rootport はい。それどころか、今までできなかった表現も簡単に実現できるようになるでしょう。アニメも、3DCGも、音楽も、現在ではAIで生成できるようになりつつあります。できない理由が「労力」だったあらゆる演出が、AIの発展にともない可能となり、純粋なアイデアの勝負になっていくはずです。

―― 演出が豪華になったからといって、面白くなるとは限らないのでは?

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Rootport 選択肢が増えることは基本的にはいいことだと私は考えています。できることの幅が増えれば、それだけ「面白いもの」が生まれる余地も広くなるはずですから。

 余談ですが、スマートフォンで読まれることを前提としたマンガとして、WEBTOONが挙げられます。ただし、WEBTOONはスマートフォンに過剰最適しており、他の媒体で読みにくい問題があるのですが……。AIの発展は、既存のマンガでもWEBTOONでもない「新しい何か」を生み出せる可能性を秘めていると私は考えています。

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