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唯一無二の衣装を生み出すサンディ・パウエル、英アカデミー賞でもセンス爆発

3月31日公開の映画「生きる LIVING」でも天才的なセンスを発揮。

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 3度のアカデミー衣裳デザイン賞受賞や史上最多のノミネート回数でも知られる英国の衣装デザイナー、サンディ・パウエルが、2月に開催された英国アカデミー映画賞(BAFTA)で、最高栄誉賞に当たるフェローシップ賞を授与されました。授賞式では他の受賞者と比べてもひときわ目立つ個性的なファッションがさすがの貫禄です。


英アカデミー賞受賞者会見でのサンディ・パウエル(筆者撮影)

 パンツの形に合わせ、前髪もうねうねと立たせ、足元はこれまた波打つようなカーブの厚底がついたレースアップシューズで英アカデミー賞に現れたサンディ。黒タイ、黒スーツに黒レースアップシューズで正装の要素を満たしながら、一歩間違えばお笑いになりそうな攻めたファッションを着こなす姿に注目が集まりました。

 授賞者会見では、自身のキャリアを振り返ったパウエル。1960年に英国ロンドンに生まれ、名門セント・マーチン美術大学で学んだ後、デヴィッド・ボウイのメンターとしても知られる舞踏家リンゼイ・ケンプの映画「真夏の夜の夢」(1984年)に参加。シェークスピア劇の中でも最も幻想的と言われる作品でアバンギャルドな衣装を披露しています。

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 パウエルが長編映画で衣装デザインを手掛けるようになったのは、LGBTQ+人権活動家でもあったデレク・ジャーマン監督の作品から。1986年公開の映画「カラヴァッジオ」から3本のジャーマン監督作品で衣装を担当した後、サリー・ポッター監督「オルランド」(1992)では米英両方のアカデミー衣装デザイン賞にノミネートされました。

 「オルランド」は、ヴァージニア・ウルフの小説をベースに、男性から女性に変身を遂げたエリザベス朝の貴族オルランドの数百年におよぶ時空を越えた旅の物語。数百年に渡るファッション史のような「オルランド」の中でも象徴的なのが、18世紀のたっぷりとしたドレスに盛り上げた髪型のオルランドが、迷路を駆け抜けるうちに、19世紀のより軽やかなドレスと髪型に変わっていくシーン。2020年のメトロポリタン美術館エキシビションでも使われています。

 「オルランド」以降、マーティン・スコセッシ監督、トッド・ヘインズ監督など世界の名匠と組むようになるパウエルの感性はさえ渡り、「恋に落ちたシェイクスピア」(1998年)、「アビエイター」(2004年)、「ヴィクトリア女王 世紀の愛」(2009年)と3度の米アカデミー賞、「ベルベット・ゴールドマイン」(1998年)、「ヴィクトリア女王 世紀の愛」(2009年)、「女王陛下のお気に入り」(2018年)で3度の英アカデミー賞を受賞するなど活躍が続きます。

 ブラッド・ピットとトム・クルーズのヒラヒラフリフリ姿が恐ろしくも麗しい「インタビュー・ウィズ・バンパイア」(1994)、毛皮やセットアップでケイト・ブランシェットの大人の魅力、ボンボン付きベレー棒やジャンパースカートでルーニー・マーラのかわいさを際立たせた「キャロル」(2015)など、衣装を抜きにしては語れない映画ばかりです。

 多くの鬼才たちとの仕事を「すごくラッキーだったと思います。すばらしい旅路、とてもラッキーでした」と回顧したパウエル。「どれも大変でした。どの作品もチャレンジがあります。十分な予算、十分な時間がとれることはありません。いい意味で全部難しいです」と唯一無二の衣装を生み出す苦労も吐露しました。

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 そんなパウエルが衣装デザインを手掛ける最新作が、オリヴァー・ハーマナス監督「生きる LIVING」(3月31日公開)です。

 同作は、黒澤明監督「生きる」(1952)の英国版リメイクで、脚本はノーベル文学賞受賞作家のカズオ・イシグロ。1952年のロンドンを舞台に、主演ビル・ナイの絵に描いたようなイギリス紳士ぶりをはじめ、古き良き時代の英ファッションにもパウエルの天才的なセンスが発揮され、作品を際立たせています。

<予告>『生きるLIVING』【3/31公開】

ライター:山口ゆかり

在英ライター。日本語が読める英在住者のための映画情報も書いています。http://eigauk.com

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