カエルの体が風船のように膨れ病院へ、不安な1年を送り…… 家族同然に愛した7年の苦楽に胸が詰まる
「ペットロスとの寄り添い方」第8回はアフリカウシガエル・カワズコくんです。
多くの飼い主が一緒に暮らす動物を“大切な家族の一員”として捉え、人生をともに歩んでいます。動物と暮らした時間は長くとも短くとも、深い愛情を持って接した分、飼い主にとって人生のかけがえのない一部となり、別れは深い悲しみとなって心身に押し寄せます。
愛する動物との死別による喪失感や混乱、後悔など、抱えきれないほどの悲しみによって心身が不安定になる状態を指す「ペットロス」「ペットロス症候群」。2023年、20歳~69歳のペットを飼っているまたは飼育経験がある391人を対象に実施された「ペットロス」に関する調査では、「約8割が『ペットロス』という言葉を見聞きしており、約4割が実際に経験している」と発表されています(サンセルモsorae調べ)。
飼い主にとって非常につらい経験となり、カウンセリングを要するケースもあることから、「ペットロス」「ペットロス症候群」は今、メンタルヘルス上の大きな課題として多くの人が向き合っています。動物とのこれまでの日々を忘れたり、死を乗り越えたりすることはできないかもしれませんが、時間の経過とともに受け入れ、いつかふと思い出したときにあたたかい涙がこぼれるような“寄り添い方”はあるはずです。
そこでねとらぼ生物部では「ペットロスとの寄り添い方」をテーマに、読者にアンケートを実施。寄せられたさまざまなエピソードから、愛する動物との思い出や別れ、当時の心境や救われた出来事をご紹介していきます。現在動物と暮らしている人や、悲しみの渦中にいる人に寄り添うヒントとなれば幸いです。
第8回 飼い主・安原愛(chappy527)さん/アフリカウシガエル「カワズコ」ちゃん
―― カワズコくんのプロフィールと出会い、思い出や印象的なエピソードを教えてください
安原愛:カワズコとは7年前の夏、ホームセンターで出会いました。当時は体が500円玉くらい小さく、アマガエルの仲間か何かだと思っていましたが、帰って調べるとアフリカウシガエルというめちゃくちゃBIGになるカエルであることが判明しました。
メスのカエルだと思っていたため「カワズコ」(通称:ズッちゃん、ズッコ)と名付けましたが、立派な雄たけびをあげるオスでした。
カワズコを迎えた半年後、同じホームセンターでカワズコの兄弟アフリカウシガエルと出会いました。目が若干近く顔がかわいいので、誰かにすぐ飼われると思っていましたが、半年たっても売れ残っており、かわいそうなのでわが家の一員にすることを決めて引き取ることに。「ジャメオ」(通称:コズっコ、コズちゃん、ポーグ、プーパッポン)と名付けました。
つらいときも楽しいときも、苦楽を共にした家族の一員でした。毎日語りかけると目をパチッとさせるなど、カワズコは特におとなしくて賢く、本当にカエル以上のカエルでめちゃくちゃかわいかったです。いろいろなカワズコの歌を作って、寝る前によく聞かせていました(笑)。
―― カワズコくんと別れてからの心境や、救われた出来事などがあれば教えてください
安原愛:カエル人生6年目の2022年、カワズコは胃が異様に膨れる症状(おそらく慢性胃炎)が見られるようになりました。良くならないまま平行線をたどり、動物病院へ連れて行っては薬をもらって帰ってくるという不安な1年を送りました。その間は人工餌を辞め、餌を変えるなど試行錯誤しました。
2022年末、カワズコが「スースー」と言うようになり、病院へ行き薬を2週間飲ませることに。その結果「スースー」は言わなくなり、ごはんを食べたり糞を出したりしていましたが、胃の膨らみは依然取れませんでした。
そんなある日、カワズコの体が風船のように膨れてしまい、かかりつけの病院へ連れて行くことに。注射を打つなど緊急処置をしてもらいましたが、もらった薬をあげようと口を開けても飲ませることができず、翌日その病院と提携している近所の病院へ連れて行きました。
近所の病院の獣医師はカエルの診察経験がなく、処置中に息を引き取るかもしれないとのことでしたが、「取りあえず薬を飲ませてあげてほしい」「昨日と同じ注射を打ってほしい」とお願いしました。祈るような気持ちで処置室の扉を締め、涙目になりながら待合室で待っていると、無事に処置が終わったとのことでカワズコを連れて帰りました。
帰ってすぐに薬浴をさせようとしたら、カワズコは閉じていた目を見開き、口で呼吸をすると、そのまま私の手の中で7年というカエル人生を終えました。きっと暖かい家で息を引き取りたかったのでしょう。もう無理に起こすこともせず、すぐに目を閉じてあげました。
亡き骸を見るのがつらいので、死後硬直が始まる前にプランターに埋め、花を上に植えるプランター葬にしました。それは、私がこれからもカワズコと一緒にいたいからです。そのとき不思議なことに、横に置いていた加湿器が壊れました。プランターには毎朝、毎晩必ず霧吹きをかけて、「おはよう」「おやすみ」と伝えに行っています。
息を引き取る前日、ジャメオとゲージ越しに対面させたら、カワズコがつぶっていた目をパチッと開けてました。私にはそのとき、兄弟同士の最後のあいさつのように見えました。「母さん頼むよ!」「おう! 任せとけ!」みたいな感じだったのかな……。
カワズコが虹の橋を渡ってから、気持ちを切り替えるためにわざと早めにお別れして、使用していたゲージなども片付けました。虹の橋を渡ってから1週間たちますが、2匹分の世話が1匹分になり、めちゃくちゃ寂しいです。でも、残されたジャメオの健康をより一層気を付けて、カワズコの分まで長生きさせてやりたいです。
―― 現在の心境を教えてください
安原愛:両生類の医学治療分野はまだ進んでいないらしく、手探りのようです。獣医科大学や獣医師さんには、両生類の医学治療にも本当に力を入れていただきたいです。ペット保険も爬虫類はあっても両生類がないのは不思議です。両生類のネット情報もあまりにも少なすぎます。カエルも今やペットであり、家族なんです。
私は初めて、ペットの面倒を7年、毎日休むことなく世話をしました。ここ数年はカエルたちのゲージの横で寝て、異変などにすぐ気付けるようにしたり、朝方何回も起きて霧吹きをかけてあげたりしていました。それぐらいでき愛していました。
この1年は出掛けているあいだ、「カワズコに何か起きていないか」という心配が常に頭の中にあり、短時間しか出掛けられなかったです。それぐらい存在感があり大好きでした。
―― カワズコくんに伝えたいメッセージ
安原愛:今度、この世に生まれてくるときは必ず人間でありますように。カワズコありがとう。ずっと大好きです。最後はつらい思いさせて本当にごめんね。私も頑張るよ。
(了)
「ペットロス」「ペットロス症候群」になった場合、その苦しみを閉じ込めたり自身を責めたりせず、家族や仲間と共有する、生活に支障を来す場合は専門家のカウンセリングを受けるなど、焦らずに“死”を受け入れていくことが大切だといわれています。
また現在動物と暮らしている人は、「いつかは別れがくる」と理解し後悔のないよう接すること、同じ動物と暮らしている友人や仲間を見つけ、喜びや悲しみを分かち合うことが、いつかくるそのときと向き合う心身の準備へとつながるかもしれません。動物と暮らす喜びをかみしめながら、心のよりどころとなる思い出や関係を作っていきたいですね。
ねとらぼ生物部では、引き続き「ペットロスとの寄り添い方」をテーマにアンケートを実施しています。犬猫、小動物、爬虫類など、動物のジャンルは問いません。愛する動物との思い出や別れ、当時の心境や救われた出来事など、【こちら】までお寄せください。アンケート内容とお写真は部内で審査の上、記事で紹介する可能性があります。
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