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えっ、意外と残っている! 水深5000メートルに眠る空母「赤城」詳細解説(1/2 ページ)

深海で撮影された「赤城」映像について解説する。

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 1942年6月4日に起きたミッドウェー海戦で沈んだ旧日本海軍の航空母艦「赤城」と「加賀」が潜水艇「Nautilus」の探索によって映像に収められたのは概報の通りだ。海中探索の模様はリアルライブで配信されていたが、現在はNautilusを運用する海洋調査団体「Ocean Exploration Trust」の公式YouTubeチャンネルで24分に編集された動画が公開されている。本記事ではこの動画の内容について解説する。

「高角砲にしては小さすぎる」(調査者談)

 最初に出てくるのは連装の火器だ。動画の解説では12センチ連装高角砲、もしくは、25ミリ連装機銃のどちらかと推測している。解説者は、撮影された火器のサイズが高角砲ほど大きくないので機銃ではないかとの見方を示しているが、火器を載せた台座の形状が円形であることや設置された場所が高くない(火器の上方に舷外通路らしきラッタル=梯子状の通路がかぶっている。機銃の設置位置ならその上に舷外通路を置く高さの余裕がない)ことから、赤城の中央から後方に設置された「四十五口径十年式十二糎高角砲」と推測する。

赤城の「四十五口径十年式十二糎高角砲」と「九六式二十五粍機銃」

 なお、仮に右舷に設置した高角砲であるなら(台座の形状から、その可能性は高い。左舷側なら、外舷側に切れ目があるはず)、それらは煙突の真後ろにあるため煤煙除けの覆いがあったとされているが、撮影画像では確認されていない。ただ、沈没時の爆発によって軽装の覆いだけが吹き飛ばされた可能性もあるため断言はできない。

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 次のシーンでは撮影箇所が判明しなかったのか動画の解説では特に言及されていない。中央には短いラッタルが映っていて、その脇にはかすかながら連装の火器が認められる。このことから、左舷中央から前部の飛行甲板すぐ下層に設置された「九六式二十五粍機銃」の連装砲座の可能性が高いと思われる。

菊の輝きは残った

 次のシーンは「巡洋戦艦として建造を開始して、その途中から空母として改装された赤城の船体」とされるが、機銃、もしくは高射装置(機銃や高角砲の照準を設定する射撃指揮装置)などの台座支柱らしきものが確認できるので、構造的に船体より弱い格納庫側壁の部分の残骸と思われる(台座支柱の形状から右舷5番高角砲の台座支柱最下部付近の可能性が高い)。

艦首錨甲板と菊花紋章

 次のシーンも動画では撮影箇所を特定していないが、格子状のフレームから飛行甲板の裏側の可能性も考えられる。その次のシーンも場所を特定するコメントはない。映像を見ると、確かに破壊の程度がひどくて、場所を特定するのが容易でないのがうかがえる(ただ、ボラートなど係留に使う設備が確認できるので左舷船尾付近ではないかと思われる)。

 なお、この部分のコメントで、ミッドウェー海戦における搭載機数を「零式艦上戦闘機24機、九九式艦上爆撃機18機、九七式艦上攻撃機18機」と述べている。ミッドウェー海戦時における赤城の搭載機数には諸説あるが、当時赤城が所属していた第一航空艦隊作成の戦闘詳報などから、当時、赤城の飛行隊として作戦で使用できたのは零式艦上戦闘機18機、九九式艦上爆撃機18機、九七式艦上攻撃機18機と考えるのが妥当だ。ただし、当時赤城にはミッドウェー島を占領した後に現地の航空基地を守る第六航空隊に所属する零式戦闘機6機を積んでおり(この6機を加えると24機となる)、そのうち3機が上空直衛に参加している。

 次のシーンでは、艦首を正面からとらえた映像が流れる。日本の軍艦の象徴ともいえる「菊花紋章」がはっきりと確認できる。一般的に大型軍艦の菊花紋章のサイズは1200ミリとされており、チーク材の本体に金箔を張っている。映像では紋章周辺に残っている金箔の輝きも見ることができる。

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艦首の「菊花紋章」(画像は動画から)

調査者は「八九式射撃盤」と述べているが……?

 次のシーンでは、艦橋構造物を左舷側(外舷側)から撮影した画像が流れる。画面中央やや右下寄りに見える円形の構造物は、主砲用の射撃盤を載せていた台座だ。近代化改装でそれまで搭載していた一三式方位盤は一四式方位盤に換装されている。

主砲射撃指揮用一四式方位盤と4.5メートル測距儀の跡

 動画の解説では「八九式射撃盤」と述べているが、これは近代化改装前に存在していたとされている高角砲用の射撃式装置の名称だが、赤城にはそれとは異なる(その前身の可能性もある)“名称不詳”の国産高角砲用方位盤が搭載されていた。近代化改装後は九一式高射装置に置き換えられ、搭載場所も右舷と左舷の艦首側になる。

 画面左端に見える円形の構造物は一四式方位盤とセットで主砲の射撃指揮に用いる4.5メートル測距儀だ。覆いが失われて内部の観測機器の一部が見えている。

 次のシーンでは艦橋構造物を左舷側上方から見下ろす画角で撮影している。赤城の艦橋は下から搭乗員待機室→海図室作戦室→操舵室→羅針艦橋の4階建て+屋上の防空指揮所とさらにその上に4.5m高射測距儀という構造だった。しかし、画像では3階の操舵室の一部までしか残っていない。

 最も長く見えるのは2階部分の海図室作戦室で、左下に延びる部分は露天の見張り指揮所だ。その右上には3階の操舵室の前壁が倒れている。画面中央右寄りから右下に出ている張り出しは探照灯が設置されていた。円形に見えるのがその架台だ。一番高く見えるのは操舵室の後端で、健在であったならばこの上に操舵室とほぼ同じ床面積の羅針艦橋が載っていたはずだった。その屋上が防空指揮所で、その後端(操舵室で残っている後端と同じ場所)に設けた塔状構造物に4.5m高角測距儀が載る。

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3階部分の一部まで残っていた艦橋構造物

そうかもしれないし違うかもしれない

 次のシーンは、下層格納庫とされている(格納庫を支えていた柱のようなものが確認できる)。赤城の格納庫は前半部分が二層(後半の一部が三層となっている)となっているので、下層部分の甲板部分と側壁の一部が残っていることになる。ミッドウェー海戦で被弾した赤城は飛行甲板と格納庫にあった航空機の燃料や搭載していた魚雷と爆弾の誘爆による火災が鎮火できずに自沈することになるが、側壁の一部しか確認できないことが、破壊の大きさを示している。

 次のシーンでは艦尾舷側にあった艦名表記と防諜のために白く塗りつぶした状況が撮影されていた。塗りつぶされてはいるものの、「あ」「か」「ぎ」の字体は認識できる。

塗りつぶされた艦名表記(画像は動画から)

 次のシーンは後部にある短艇甲板が映っている。載せていた艦載艇は1隻も確認できない(総員退艦時に使われたのと被弾時の火災で燃え尽きたのと)が、画像左寄りに見えるトラス構造の支柱と画面中央に写っているV字状の艦載艇架台で判断した。

 次のシーンでは艦尾の状況が映されている。映像では艦尾にあった錨用の錨鎖を通すホースパイプと艦尾の形状、そして海底に落ちてしまった艦尾副錨が確認できる。艦尾副錨のアップではホールズ型(シャンクに走錨防止の突起=ストークを持たない形状の錨)アンカーのシャンク(柄)とそのトップにあるシャックルの形状と接続の状況、左右に開いたアンカーエンドの形状が把握できる。

艦尾と副錨。速度信号灯にもみえるが柄の部分の太さがわずかに変化しているのでシャンクと判断した

 Ocean Exploration TrustはNautilusがとらえた空母「加賀」の映像も公開しており、こちらについては別の記事で取り上げている。→加賀編を読む

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