ニュース

東京五輪女子体操の金メダリスト、腎臓病で“体重20キロ増” 治療法ないままパリ目指す20歳にエール殺到(1/2 ページ)

モン系アメリカ人初の金メダリストとなったスニサ・リー。

advertisement

 東京五輪・体操女子個人総合で金メダルを獲得したスニサ(スニ)・リーが、2023年に腎臓に関わる病気が原因で体重が約20キロ増えたことを告白。2024年に開催されるパリ五輪への出場に照準を合わせているリーが、大きな目標に向かう中で経験した恐怖や不安、心の持ち方について語っています。


東京五輪では女子個人総合の金メダルを獲得(画像はスニサ・リーのInstagramから)

原因がなかなか判明せず、母親にすら打ち明けられなかった

 10月4日に公開された米SELF誌とのインタビューで病気の詳細を語ったリー。最初に異変に気が付いたのは2月、朝起きると足首が腫れていたときだったといいます。そのときは競技生活においてしばしば起こりうるものと気にしていませんでしたが、さらに翌朝は顔や手や足など全身が腫れ上がり、まるでひと晩のうちに大幅に増量したようだったと例えています。

 どうしてよいのかわからずジムへ向かったリーを目にすると、コーチは彼女の状態に驚きすぐに米国体操女子代表チームドクターが診察。医師もまた彼女を診察したときのことを「最初に考えたのは、どうやって答えを出すのか、誰と話すべきかということ」と振り返ります。

advertisement

 リーはそれでもコーチと相談しながら練習を続けていましたが、腫れあがった指は何度も段違い平行棒のバーから剥がれ、振り上げ倒立といった基本的な動きさえできない状態だったそうです。11月16日の米USA TODAYとのインタビューでは「どの服も着られなくなりました。目は腫れあがって、とても怖かった」と回想しています。

 最初はアレルギーが疑われたものの腫れは2週間たっても引かないどころかますますひどくなったとリー。原因はなかなか突き止められず、体重もその時点で18~20キロほど増加し、「全身に影響し、見た目も体調も悪くなった」と3月の試合は欠場となりました。

 注目が集まる金メダリストという立場から大会出場はさけられず、人前に出たくないという気持ちとの葛藤もあり、また母親にも「心配をかけたくない」としばらく打ち明けられなかったそうです。そのころは「もう体操ができなくなったら?」「もうオリンピックに出られなくなったら?」という不安でいっぱいに。しかし複数の検査を受けてもなお原因は判明せず。

 そして2週間ほど尿が出ていなかった彼女は尿検査を受けていないことを指摘され、ようやく腎臓に問題がある可能性へたどり着いたそうです。4月3日には、体操とは関連のない腎臓に関わる健康の問題でNCAA(全米大学体育協会)最後の年と定めた2023年のシーズンを不完全燃焼のまま終えることを発表しました。


リーの最新投稿(画像はスニサ・リーのInstagramから)

 腎臓の生検を行ったリーは、まだ追加の検査があるためと結果を公式には発表していません。しかし彼女の体験した一連の症状は非常にまれなもので、いまのところ治療法もないといいます。薬を服用しつつ、食事や練習方法を変えながら努力を重ね、8月には競技へ復帰し全米選手権の出場権を獲得。

advertisement

 このときの気持ちを米SELF誌へ向け「ここに来られるとは思っていなかった。何が可能なのかもわからなかった。何がうまくいかないのかもわからなかった」と語ったリーは、このあと世界選手権の全米代表選考合宿に招待を受けましたが、2024年のパリ五輪へ備えるために辞退。五輪選考会は6月、彼女の故郷ミネソタ州ミネアポリス・セントポールで開催予定です。

 パリ五輪出場を目指す彼女はいつも頭の片隅に五輪があるとしつつも、「先のことを考えすぎないようにしてる。余計なプレッシャーやストレスを増やすだけだから」と以前とは異なった心構えで挑んでいることを明かしました。

7月に投稿した練習動画

 現在20歳のリーは東南アジアや中国南部の山岳民族モン族にルーツを持ち、モン系アメリカ人としては初の金メダリストでもあります。東京五輪では優勝最有力候補だった女王シモーネ・バイルズの途中棄権で米国は騒然としていたところ、リーの金メダル獲得が同国におけるモン族コミュニティーに大きな感動を与えることとなりました。

 またこのとき種目別では段違い平行棒で銅、団体総合では銀を獲得しており、大会後一躍脚光を浴びることに。しかし1年半後に突然訪れたこの試練については、メダル獲得にとらわれ過ぎず、メンタルヘルスを大切にするよう行動することで自身を守っているそうです。

東京五輪代表米チームと、右から2人目がバイルズ

 「もし何も起こっていないふりをすれば、五輪に出場できたとしてもそのときまでに悪化してしまうでしょう」と心の在り方について語り、「体操は私の人生全てではないし、この先もそうはならない。でも今のところは、これが私の人生なんです」と競技についての姿勢を述べました。

advertisement

 また、リーのInstagram最新投稿には、ニュースを見たファンからの「大丈夫そうでよかった」という安心の声や、またいつもと変りなく見える彼女の姿に「「20キロも体重が増えたようには見えないよ」「20キロ増えても健康そう」という声も。これには「ほとんどむくみと水によるものだからだよ。腎臓に問題があると水分をため込みやすくなってしまうんだ」「低ナトリウム食を提供するレストランはほとんどないんだよね」など自身も腎臓に問題を抱えているという人たちからのコメントが寄せられています。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  6. 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  7. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  8. “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  9. 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  10. 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」