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三井不動産が作品を無断改変か アーティストが謝罪受け入れ終結へ 「重圧に押し潰されそうな日々だった」……(1/2 ページ)

渋谷駅に直結した「渋谷ヒカリエ 8/CUBE」で開催する「渋谷猫張り子と仲間たち」で作品が展示されます。

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 アーティストの吉田朗さんらは、三井不動産らにラッピングシートなどを用いて無断で改変されたと訴えていたアート作品について、修復が完了したと発表しました。2024年1月3日から1月9日まで、渋谷駅に直結した「渋谷ヒカリエ 8/CUBE」で開催する「渋谷猫張り子と仲間たち」で作品が展示されます。

「まるで別の姿に無断で改変された」と訴え

 吉田さんとそのマネジメントを手がけるユカリアート代表の三潴ゆかりさんが「まるで別の姿に無断で改変された」と訴えていたのは、巨大な招き猫のような見た目の「渋谷猫張り子」。三井不動産が所有する商業施設やホテルなどが一体となった「sequence MIYASHITAPARK」(東京都渋谷区)の最上階にあるバー「SOAK」に設置されていました。

 吉田さんらが2023年2月に公式サイトなどに掲載した声明によると、吉田さんは2019年8月、設置当時SOAKの運営会社だったBAKERU(当時は東京ピストル)から制作依頼を受け、作品を制作。その約2年後の2022年9月、ユカリアートのスタッフがSOAKのInstagram投稿を見て、作品の改変に気づいたといいます(関連記事)。

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 その改変は、白色の文字やマークが多数描かれた真っ黒なラッピングシートで、作品全体と台座部分を覆い隠すというものでした。吉田さんは著作権や著作者人格権は納品後も作者に帰属しているため、作品に変更を加える場合は許可が必要にもかかわらず、無断で作品が改変されたと主張していました。

 吉田さんらがその当時、BAKERUに連絡すると、SOAKの事業をマザーエンタテイメント(以下、マザー社)に譲渡したと知らされたとのこと。また、改変はマザー社が三井不動産の許可を得たうえで実施したとの回答を、三井不動産とマザー社の両社から得たとしていました。

 その後、2023年3月、吉田さんらはオンライン署名サイト「Change.org」で三井不動産に作品の返還と所有権の作者への返還を求める署名活動を開始。1万筆超の署名が集まり、2023年4月12日に吉田さんのもとに作品が返還されました。吉田さんは半年以上にわたり修復作業に取り組む様子を特設サイトで公開し続けていました(関連記事)。

三井不動産、事実関係を認めて謝罪文を提出して補償 → 合意書締結へ

 吉田さんらは2023年11月22日に、『渋谷猫張り子』無断改変事件に関するご報告と、作品の修復完了・お披露目展示について」と題した文章をユカリアートの公式サイトで公開。「作品につけられてしまった傷に作者自らが向き合うことは辛く苦しいことでしたが、献身的な作業を半年超に渡り続けた甲斐があり、この度作品の修復が無事に完了しました。皆様方のひとかたならぬご声援に改めて、心から感謝申し上げます」と報告しました。

 また、修復作業を続ける一方で、三井不動産とマザーエンタテイメントとの間で問題解決に向けて交渉を続けてきたとして、三井不動産が改変にいたる事実関係を認めて謝罪文を提出すると言及。三井不動産が「当初の合意に基づき、本件作品を良好な状態に維持管理すべき立場にあったにもかかわらず、改変が行われることを認識していながら積極的に確認するに至らず、その点の対応について、不十分なものであった」などと認めたとしています。

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 そのうえ、吉田さんが修復作業のために作家活動を制限せざるを得なくなったことによる経済的損失、本件解決のために1年以上にわたり捻出した弁護士費用といった経済的負担の一部についても、三井不動産が補償すると明かしました。

 一方で、マザー社からは2022年10月3日、「三井不動産から許可を得て改変を行った」という旨の回答を得たものの、作品返還後の交渉では「マザー社と共に確認した」として、三井不動産から回答が届くのみだったとのこと。BAKEKRUとマザー社の間でどのような引き継ぎがあったのか、ユカリアート側が問い合わせた後に改変した作品の写真を自社のウェブサイトのトップページやSNSなどに掲載したことについて、どのような見解を持っているのかなど、質問する段階にはいたらなかったとしています。

 吉田さんらは「正直なところ、本件に関わる3社による説明の全てに納得したわけではありません」としつつも、三井不動産から謝罪文の提出があり、損害の一部も補償されること、何より作品の修復が完了したことから、「これ以上本件の追及を行い、時間を費やすことは賢明ではない」と判断したと説明。三井不動産との間で、本件を終結させるための合意書を締結する運びになったと報告しました。

 「この1年超に渡り、本件を最善の形で解決しなければならないという責任の重さを感じ、重圧に押し潰されそうな日々を過ごしてきました。この事件が、この先の日本における個人や企業等団体のアートに対する関わり方や、知的財産権に関する意識の向上に、少しでもお役に立つことができたら幸いです。その時はじめて、私達はこの辛く苦しい体験から報われ、『自分達の闘いは決して無駄ではなかった』と感じられることでしょう」(吉田さんら)

 吉田さんらは同作品について本件を経て「皆様あっての作品」になったと振り返り、「今後、この作品がたくさんの福を呼び込む存在になり、ご支援くださったお一人お一人に恩返しをすることができたら、そんなに嬉しいことはありません」と、現在の心境を述べています。

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