火の国・熊本県が今とにかく熱いらしい→手作りの「KUMA-ATSU METER」で熊本のアツさを計測してきた
冬でも心はアツアツになる旅!
熊本県に「阿蘇」という場所がある。阿蘇山の大噴火によってできた巨大な凹地(カルデラ地形)に位置しており、草原が広がる雄大な風景があり、数多くの温泉があり、「あか牛」などのおいしい名物もある。
そして熊本県では現在「KUMA-ATSU PROJECT」という観光プロジェクトを実施している。熊本県は「火の国」とも言われるだけあり、心をアツくしてくれるものがたくさん待っているというのだ。
季節は冬だから寒いはずだけれど、多くの魅力が「少しも寒くないわ」としてくれる。今回は熊本県の阿蘇エリアを訪れて、そのアツさをたっぷり紹介したいと思う。
阿蘇に行くぞい
阿蘇エリアは熊本県、いや九州の中でも人気のある観光地の一つだ。景観、食、温泉など、我々が旅行に行くときに求める多くのものがそろっている。毎年3月に行われる野焼きは1000年以上の歴史を持つ。そんな文化もまた阿蘇の魅力の一つだ。
今は12月だ。私は東京に住んでいるのだけれど、日々寒い、寒いと思いながら生活している。だって冬なんだもん。アツくなりたいのだ。そんな私に「KUMA-ATSU PROJECT」の話はぴったりだった。
熊本県の新しいキーワードは「アツい県」。アツさが足りていない私が今もっとも求める場所だった。だって寒いのは嫌なんだモン。アツくなりたいんだモン。くまモン。熊本県は新幹線も通っているし、2023年には阿蘇くまもと空港に新しい旅客ターミナルがオープンした。遠方からでもアクセスしやすく、すでに「観光地としてアツい」と言える。
カルデラの中心、阿蘇中岳火口
火山の噴火によって形成される凹んだ地形を「カルデラ」と言う。阿蘇山では約27万年前に火山活動が始まり、そこから4度の大規模な噴火を経て、世界有数の規模を誇る巨大なカルデラ地形が形成された。
「阿蘇中岳火口」はその中央にあり、今も活発に噴火活動をしているようすを間近で見られるスポットだ。
ここに着くまでの道は草原地帯だった。有名な観光地はもちろん、道中の名もなき草原の風景にも感動した。人と自然が生み出してきた景観なのだ。
日本は温暖湿潤な気候であるため、本来なら森林が形成されやすい。このような草原の景観を維持するためには、放牧、採草、野焼きなどの人々の営みと管理が必要となる。
野焼きによりこの景観は作られる。このような景観を二次的自然と呼ぶ。近年の研究では、阿蘇のように火山灰からできた土壌は野焼きを行うことで、炭素を多く溜め込んだ土壌となり、温暖化の原因となる二酸化炭素の吸収効果があることがわかっている。
さらに驚いたのは、中岳火口に至るまでは草原だったけれど、中岳火口に着くと植物は全然生えていなくて、全く違う景色が広がっていたことだった。モクモクと噴煙が出ており、硫黄の匂いもする。ドラマチックな景色の変化と、噴火活動を続ける火口の雄大な景観が私の心をアツくした。
もっともアツくなったのは私の心の中の話であり、物理的には寒いです。とても寒いです。気温計を見ると6度となっていた。風も吹いていたので体感温度はもっと低いかもしれない。
しかし心がアツくなるのだ。だってこの、東西18km南北25kmという巨大な凹地を作った大元の火山なのだ。それが目の前でモクモクと噴煙を上げている。日によってはガス発生のため入山規制も行われるというほど今も活発に活動している。
自然のスケールの大きさを目の当たりにして、心がアツくなれば体もアツくなるというものだ。その証拠に気がつくと私は半袖になっていた。
今回はどのくらいアツいのかを、私独自の「KUMA-ATSU METER」で表したいと思う。気温計ではわからない温度を私が可視化するのだ。その結果、38度だった。猛暑日である。それは半袖になるに決まっている。
ちなみに「KUMA-ATSU METER」は顔ハメになっていて、顔をハメると涅槃になる。これは阿蘇五岳がお釈迦様の寝姿のようだ、と言われているからだ。
「あか牛」を食べる
阿蘇を代表するグルメの一つが「あか牛(うし)」だ。名前からもわかるように褐色をしており、起源は韓牛と言われている。1944年に登録された和牛だ。阿蘇を走っているとよく「あか牛」と書かれたノボリや看板を目にした。
阿蘇を車で走っていても、放牧されている牛や馬をたびたび見かけた。
今回訪れた「まかない屋matsu」は10年ほど前にオープンしたお店だ。店主は料理人になって40年以上で、そのうち30年は阿蘇の食材を使い料理をしているそうだ。阿蘇を堪能するには最高のお店と言える。
頼んだのは「お山のあか牛丼」。平日限定10食、土日祝限定20食の人気の一品だ。
「あか牛」だけではなく、ほかの野菜なども地元のものを使っている。玉ねぎを醤油ベースのタレで煮込みその上に白ごはんと、もはや芸術のように「あか牛」が乗せられている。山のようになっているのが阿蘇を表現していてアツい。
食べてみると、それはもうおいしい。肉がとろける。「あか牛」は赤身が多く、脂肪分が適度であるというのが特徴なのだけれど、まさにそれをたっぷり堪能できる。和牛でも脂肪分が過度ではないので、どんどん食べ進められる。満足感はしっかりあるのに、重たさがない。店主の腕と「あか牛」がそうしてくれているのだろう。
本当においしくて、いくらでもいけそうだったので「カルデラプレート」も頼んだ。阿蘇のトマトをふんだんに使った特製ハヤシソースをかけて食べる一品だ。やっぱりおいしい。ハヤシソースの酸味が「あか牛」に合う。幸せを料理で表現したらこんな感じになると思う。
「KUMA-ATSU METER」は57度となった。理由はこのお店が国道57号線沿いにあるからなのだけれど、そのくらいのアツさを感じたのだ。これを書いている今もまた食べたくなっている。夢にも出る。幸せな夢だ。
杖立温泉ですべてを蒸す
阿蘇の魅力の一つはやはり温泉! ということで杖立(つえたて)温泉に行ってきた。杖立川の両岸に温泉宿があり、白い湯気が上がっている。
平安時代にこの地を訪れた弘法大師が、「杖をついてやってきた人が帰りにはその杖を忘れて帰るほどの温泉の効能だ」と句に詠んだとか、弘法大師が持っていた杖を立てると節々から枝や木が生えたとか、「杖立」の名前の由来としてさまざまな伝説が残っている。1800年以上の歴史を持つ、いにしえからの温泉地だ。
まずは温泉を堪能する。150年以上の歴史を持つ老舗宿「泉屋」では、日帰りでの入浴もできる。天然のサウナである蒸し風呂も楽しめる。泉質は塩化物泉で源泉は98度と高温、文字通りアツアツだ。
ひのきで作られた箱の中に入り、顔だけ出して温熱で蒸される。最高のひとときだ。顔が出ているのがポイントで、通常のサウナよりも長く入っていられるのだ。気持ちがいい。体の芯からアツくなるのを実感できる。骨からアツくなる感じだ。
メガネが曇るのも良い。曇りなき眼で世の中を見たいと思っているけれど、温泉で曇ったメガネ越しに見る世界も幸せなのだ。幸せがメガネを曇らせるのだ。アツくなった証拠でもある。阿蘇に来てからずっとアツい。
湯船も広くて、アツい。杖立温泉の言い伝えによると、応神天皇の産湯としても使われた湯なのだという。優しいお湯なのだ。つかっているとそれを感じられる。アツいけれど、優しさに包まれている気もするのだ。
「泉屋」を後にしたら、温泉街の中にある「むし場」に行く。杖立温泉にはいくつかの無料で使える「むし場」がある。ここで食材を蒸すことができる。せいろなども無料で置いてあり、食材だけを持っていけばいい。近くには食材の無人販売機もある。
蒸し卵なら15分、さつま芋なら30分くらいかかる。その間に杖立温泉を散策した。
街の作りも面白いのだ。家と家のわずかなスペースが道になっていて、迷路のようにつながっている。こんな裏路地を、杖立温泉では「背戸屋(せどや)」と呼ぶ。趣がある風景がまたアツい。
背戸屋にも湯気が上がっていて温泉街であることを感じる。同時に生活の匂いもする。観光地ではあるけれど、そこに人々の営みの息遣いを感じる。それが杖立温泉の魅力ではないだろうか。問題は、街歩きが楽しくて蒸し時間を過ぎてしまいそうになることくらいだ。おいしく食べられる時間を忘れずに戻らなければならない。
塩化物泉の蒸気なので、蒸したものにほんのり塩味がつく。それが素材のおいしさをさらに引き立ててくれる。さつま芋が特においしかった。阿蘇で育ったさつま芋を、阿蘇の温泉で蒸す。最高の贅沢なのではないだろうか。
杖立温泉の「KUMA-ATSU METER」は64度となった。理由は「蒸し」で「64」。温泉で体がアツくなり、街の作りが心をアツくし、蒸し料理でお腹までアツくなる。64度という数字は的確な気がする。真夏日の倍くらいの温度だ。
熊本地震震災ミュージアム KIOKU
2016年4月14日、熊本地震が起こった。観測史上初の、28時間のうちに2度の震度7の揺れが発生した大地震だった。阿蘇大橋をはじめとする交通インフラ、水や電気のライフラインが寸断する大きな地震で被害は甚大だった。
地震の記録や記憶、経験を教訓として後世へ伝承するために2023年7月に「熊本地震震災ミュージアム KIOKU」がオープンした。南阿蘇村の旧東海大学阿蘇キャンパス内にある。当時のようすを記録したパネル展示だけではなく、実際に被害を受けた校舎も遺構として保存されている。
敷地内には、地表地震断層を見ることができる場所がある。その断層の上にあった校舎が特に大きな被害を受けた。地震断層のずれと建物被害との関係を詳しく観察できる施設は、日本国内ではここしかないそうだ。
このミュージアムは、震災の被害についてのみ展示しているわけではない。熊本の大地の動きや特徴を学んで地震との関連性を解き明かしていくブースや、復旧や復興の歩みを通して「自然とともに生きるにはどうしたらよいか」を考えるブースも充実している。
地震が頻発する日本で、このような施設が果たす意義は大きい。このようなミュージアムを作り、被害を忘れないようにしながらも前を向いて自然と生きていこうとする熊本の人々のことを思うと、胸にアツくなるものがある。アツいにもいろいろあるのだ。私は実家が九州なのでこの地震についてはよく覚えている。
「KUMA-ATSU METER」は今回はなしだ。数字に表せないアツさもあるのだ。地震のことを忘れず、しかし前を向いて復興に力を注ぐ人々のアツさは数字では言い表せない。決して寒いわけではない。物理的にもアツかったしね。建物が光をふんだんに取り入れる設計で心地よいアツさがあったのだった。
高菜を食べる
阿蘇の郷土料理に「高菜漬け」がある。特徴の一つは辛味が強いことだ。その高菜漬けを使った日常食に「高菜めし」というものがある。高菜漬けを細かく刻んで油で炒め、ご飯に混ぜたものだ。それもおいしいのだけれど、その進化版といえる、もっとアツいメニューがあった。
50年を超える歴史のあるお店で、20年以上前から「石焼たかな飯」というメニューを出している。その名の通り石焼ビビンバのように食べる一品だ。洋風に味付けされた「石焼たかな飯」がクセになるおいしさなのだ。
おこげがたまらない。卵にご飯に絡んでいくのもたまらない。高菜の匂いが辺りに漂う。つまりめちゃくちゃおいしいのだ。高菜めしは食べたことがあったけれど、石焼は初めてだった。近くで同じようなメニューを出しているお店はほぼないそうだ。
高菜漬けはもちろん地元、阿蘇のものだ。すべてがおいしくてアツくなった。そもそも石焼の時点でアツアツなわけだけれど、地元のお店ならではのメニューに出合えたうれしさで心もアツくなった。
「KUMA-ATSU METER」は50度だった。50年以上の歴史から50度にしたわけだけれど、本当にアツくなる一品なのだ。郷土料理というのは旅先では外せないもの。それも地元のお店ならではのメニューで、しかも最高においしいってアツくならないはずがないのだ。
阿蘇がとにかく「アツい」
阿蘇は魅力が多すぎる。ここに書いた以外にも多くの場所を訪れた。どこに行っても画になるダイナミックな景色ばかりで飽きることがない。
「砂千里」は火星のような景色をしていた。阿蘇に来ているのに宇宙を旅している気分を味わえる。阿蘇は草原のイメージが強いけれど、このような景色もあるのだ。景色のバリエーションが多いのもアツいポイントだ。
こちらは3300年前の噴火で形成された、高さ約80mの「米塚」。その名前の通り形が米粒のように感じられる。草原の中にひょっこりあるので目に付くし、かわいく感じられる。
そしてこれは赤ワイン「RED cow」。当初はふるさと納税の返礼品でのみの取り扱いだったけれど、そのおいしさから問い合わせが多く、道の駅「あそ望の郷くぎの」限定で2023年から販売を始めたという人気のワインだ。
南阿蘇という高冷地特有の昼夜の温度差を活かし、糖度20度以上の質の高いブドウが使用されている。オーク樽でしっかり熟成されており、これがまたおいしくて、アツい。
阿蘇をとにかく満喫した。魅力ある場所やものが多くて、朝から見て回っていてもあっという間に日暮れになる。アツいのだ、ずっとアツい場所が阿蘇なのだ。
空港に戻り、この旅を思い出すと「KUMA-ATSU METER」は120度になった。寒いと言っていた日常が嘘みたいで、阿蘇ではずっとアツかった。楽しくてアツい、美しくてアツい、おいしくてアツいなど、アツい以外の感想が出てこない。私も半袖になっていた。アツいから。ぜひ熊本に、阿蘇に来てアツさを体験して欲しい。半袖も持って。アツいから!
提供:熊本県
アイティメディア営業企画/制作:ねとらぼ編集部/掲載内容有効期限:2024年1月11日
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