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» 2012年07月04日 09時19分 公開

「Web制作の現場で起きているのは、クリエイターのたたき売り」 元フリーランスの開発部長が描く「Webの仕事探し」の理想形Web業界の仕事探し事情(2/2 ページ)

[岡徳之,ITmedia]
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 もう1つの背景は、職種という硬直的な概念。現在は「Webデザイナーとも、プログラマーとも形容されない、横断的なスキルが求められるシーンが頻出している」という。例えば、スマホアプリの開発にはユーザーにとっての使いやすさ、つまりUI(ユーザーインタフェース)を設計するスキルが求められる。しかしUIは、デザインのセンスとプログラミングのノウハウなしには設計しづらいため、従来の職種では規定できない。すると、なんとなくデザイナーという職種にあてはめられ、報酬も従来の水準を超えていきづらいという事態が発生するのだそうだ。

 このように、Webクリエイターを取り巻く業界の仕事探し事情には、複数のプレイヤーが絡み合って起こる根深い問題が存在する。

価格競争にならない仕組みを目指す「スキルプル」

 こうしたクリエイター同士が値を下げ合う状況を打破するために、赤澤さんが開発したサービスが「スキルプル」。企業とクリエイターが、スキルと制作実績でつながるリクルーティングサイトで、7月3日にオープンした。クリエイターは過去の制作実績とスキルを無料で登録する。スキルには開発時に使用したプログラミング言語やツールが含まれる。一方、企業は自社に必要なクリエイターを制作実績とスキルで見極めオファーを出す。実際に制作したサービスやアプリをURLから遷移して確認することができるため、技術的なミスマッチングは起こりにくい。企業は制作実績とスキルを無料で閲覧でき、オファーを出す際に費用が発生する。

左:スキルプルのトップページ 右:プログラミング言語などのスキルで検索したプロジェクト一覧

 これがなぜクリエイター同士の価格競争を打破することになるのか。1つは、企業がクリエイター個人を指名してオファーを出す仕組みなので、従来の相見積もりを取ることが前提という仕組みとは異なるからだ。もう1つは、企業はクリエイターにオファーを出すたびに費用が発生するので、企業はできる限り少ないオファーで1人でも多く採用したいというインセンティブが働く。すると企業は、クリエイターに対して魅力的なオファーを出そうとするようになる。

スキルプルの仕組み

 しかし、それでは企業にとって人材を獲得するためのコストが上がるのでは? そんなサービスが受け入れられるのだろうか。

 「もちろん片方にだけいい顔をしてもう一方に損をさせるわけにはいきません。企業にとっても費用をかけずに人材を得られる仕組みです」と赤澤さん。オファーの権利は1万円で5回、2万円で30回、5万円で100回、初期費用ほか追加の費用は一切かからないということなので、これだけ見ると確かに安い。クリエイターからは料金を取らないという。

「企業は採用にかけるコストを削減し、その分をクリエイターに還元してほしい」と赤澤さん

 「よく言われるんです。本当はどこで稼ぐんですか、と。でも、このオファーの権利の販売しかスキルプルの収入源はありません。運用コストを徹底的に下げているので、この金額でご提供しても十分ビジネスになるのです」

 確かにLinkedinは同様の価格帯でビジネスをしている(スカウトメール1通900円)。この価格帯はインターネット上だけで完結する人材サービスにとっては当然のものなのかもしれない。

これからWebクリエイターは真の実力が試される

 スキルプルでは、クリエイターが企業の案件情報を閲覧したり、企業にプッシュ型でアプローチすることができない。サービス名の通り、クリエイターは自分のスキルで企業からのオファーをプルできる(引っ張ってこられる)人にならなければならない。クリエイターにとっては、まさに完全実力主義のサービスなのだ。オファーがかからないクリエイターにとっては退屈なサービスになるかもしれない。それであれば、クリエイター側からもアプローチできるようにしたほうがよいのでは? それは「クリエイターのたたき売りを防ぐために、サービスとしてやってはいけないこと」だと赤澤さんは言う。

クリエイターは、企業からのオファーを引っ張ってこられるだけの実力を磨くことが求められるようになる

 米国では、クリエイターが自分のポートフォリオを掲載し、スキルを公開する「GitHub」というサイトで、企業の採用担当者から優秀な人に声がかかることも少なくないそうだ。また、国内でもグリーやサイバーエージェントなどクリエイターを自社で抱える企業が、履歴書や面接ではなく実務テストで評価する仕組みを導入している。スキルプルが提唱する完全実力主義のクリエイター採用が、クリエイターの奮起と、企業とクリエイターの適正な関係をもたらすことを期待したい。

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