これは福音である 「プリキュア男子」という多様性についての考察:サラリーマン、プリキュアを語る(3/4 ページ)
プリキュア男子のジェンダーロール
プリキュアという女児向けアニメーションにおいて、敵として対峙する以外の「プリキュア男子」に与えられていたジェンダーロール(性的役割)は「父性」か「被保護者」でした。
プリキュアを「導く存在」か
プリキュアに「守られるべき存在」か
その相反する2つだったのです。
余談ですが、「ハピネスチャージプリキュア!」において「導く」というジェンダーロールを放棄することになった神様ブルーは、同作品内でプリキュアにすら批判されることになり、「守られる」というジェンダーロールから脱却しようとした相楽誠司は悪に堕ち、プリキュアと対峙することになったのですよね。
逆に「導く存在」と「守られる存在」を同一妖精キャラ(ココ、ナッツ)で表現し、女児の心をつかんだ「Yes!プリキュア5」といった作品もありました。
いわば、女児にとっての「父親役」と「子ども役」。
その2つの役割を「プリキュア男子」は担ってきたのです。
リオくんは、福音である
今回、リオくんがプリキュアと同じ力を得ることにより、新しい「プリキュア男子」像が加わりました。
そう、「プリキュアと同じ立場の男の子」です。
プリキュアに憧れ、
プリキュアになる努力をし、
プリキュアになれなくて挫折した男の子が、
いま、プリキュアと同じ力を得て、
プリキュアと同じ地平に立つ。
女の子がプリキュアに憧れ、プリキュアになったように、
男の子もプリキュアに憧れ、プリキュアと同じ力を得たのです。
ついに男の子が「プリキュアと同じ地平に立つこと」を許されたのです。
プリキュア男子のジェンダーロールとして従来あった、
「導く存在」
「守られる存在」。
そして、リオくんが獲得した、
「同じ地平で戦う存在」。
それはつまり、
「父親役」
「子ども役」
そして
「友達役」。
これこそがプリキュア男子の新しいジェンダーロールなのです。
かつて「映画プリキュアオールスターズNewStageみらいのともだち」で、キュアミューズは言いました。
「友達を守りたい。そんな優しい心があれば、女の子は誰だってプリキュアになれるのよ」。
その言葉は、プリキュアは特別な存在ではなく、全ての女の子に与えられる権利である、という1つの答えを出しました。
しかし逆説的に「男の子」はプリキュアにはなれない、という呪いを生み、多様性の抑圧の一因となっていました。
しかし、今回リオ君は「プリキュアと同じ力」を得たのです
これは福音なのです。
「虹色」のキュアパルフェ。
「白」のリオくん。
「虹」という、あらゆる可能性を内包した女の子、キュアパルフェ。
「白」という、これからの可能性を内包した男の子、リオ。
女の子がそうであるように、
男の子だって、プリキュアに憧れ、プリキュアを目指し、プリキュアになっても、いい。
終わりに
もともと2004年に、6歳〜8歳女の子向けアニメとして始まった「ふたりはプリキュア」。
そこから14年たち、今やプリキュアを見始めるのは3歳から、といわれるまでに対象年齢が下がってきています。
同じ対象年齢の「アンパンマン」や「おじゃる丸」が性差を意識せず、男の子向け、女の子向けアニメと区分されることがないように、
あと何年かすればプリキュアも今の「女児向けアニメーション」から「親子で楽しめる子ども向けアニメーション」へと変遷してくものと自分は推測します。
そして
「男の子がプリキュアになる日」も、そう遠くないものと思います。
リオくんが、その新しい時代のプリキュアたちの道しるべになることを願わずにはいられません。
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