福岡から大宮へ15時間! 伝説の「はかた号」を越える新生「キング・オブ・深夜バス」はどれくらいエクストリームなのか試してみた:最後は謎の感動(2/4 ページ)
走行距離1170キロメートル、乗車時間は15時間10分。昨年12月にオープンした「日本最長」の深夜バスに乗って、福岡から東京まで帰ってみました。
午後8時10分(天神バスセンター)
座席は前から3列目の窓側シートだった。ラッキーだったのは、繁忙期なのに車内はけっこうガラガラで、隣に誰も座ってこなかったこと。すかさず「隣の席が空いてるのは嬉しい。ゆったり」とTwitterにつぶやいたら、知人から「そんなぬるま湯のような環境でキングに勝利したと言えるのか」と突っ込まれる。
座席に座り、上着を脱いだり、スリッパに履き替えたり(各座席にひとつ用意されていた)して戦いの準備を整えていると、特に出発のアナウンスなどもなく、ゆるやかにバスが動き出した。かくして長い戦いのゴングは鳴ったのである。
午後8時30分(博多バスターミナル)
しばらく博多の街を走った後、やがてバスは博多のバスターミナルへとすべり込んでいった。なるほど、乗客が少ないと思ったら、どうやら天神と博多の2カ所でそれぞれお客さんを拾う仕組みらしい。しかし、幸いなことに博多から乗る人は意外に少なく、隣の座席は相変わらず空いたままだった。
博多バスターミナルを発ったところで、乗務員さんから旅程について簡単なアナウンスがあった。今のところ道路状況は順調で、予定どおり大宮には翌日午前11時20分に到着予定、次の休憩は山口県の下松(くだまつ)サービスエリアで取る予定とのこと。到着はたぶん午後11時くらいか。しばらく大きな動きはなさそうなので、本でも読んでヒマをつぶすことにする。
午後9時00分(九州自動車道のどこか)
ところで実は、僕にはさっきから気になっていることがあった。
「座席に……コンセントが……ない……」
そう、2日前にはあったはずのコンセントが見あたらないのである。はなから車内で充電するつもりだったので、昼間から使いっぱなしのiPhoneはもうバッテリーが20%しかない。乗務員さんに聞いてみた。
「すいません、コンセントが付いてるのは新車両からなんです」
なん……だと……。いきなり計画が狂ってしまったが、ないものはしょうがない。とりあえずiPhoneについては、万が一に備えてエネループのスティックブースターを持ってきていたので、途中のサービスエリアで電池を買いまくればなんとかなりそう。しかし、この時点でノートPCがヒマつぶしアイテムから脱落した。バスはまだようやく九州自動車道に入ったところであった。
午後9時50分(どこかのサービスエリア)
どこかのサービスエリアで一旦停車。もう下松? と思ったけど、どうやら乗客は外には出られないらしい。外では乗務員さんたちがなにやら電話中。待っている間、あったかいお茶がもらえた。ほどなく、バスはまた九州自動車道へ。
午後11時00分(下松の少し手前)
走り始めてからそろそろ2時間が経過。窓の外を見てもまっ暗で、今どのへんを走っているのか分からない。そろそろ下松に着くころだと思うんだけど……って、そうか、iPhoneのGPSを使えば場所が分かるじゃないか。
さっそくiPhoneを立ち上げ、マップアプリで確認してみると、バスは現在山陽自動車道を走行中。下松まではあと30分くらいか。ちょっと尻が痛くなってきたので、サービスエリア到着が待ち遠しい。Twitterを見ると「(下松サービスエリアは)牛骨ラーメンが名物です」との情報。何それおいしそう!
午後11時30分(下松サービスエリア)
下松サービスエリアに到着。頭の中はすでに牛骨ラーメンで一杯だったのだが、残念ながら休憩時間は10分しかないらしい。さすがに10分でラーメンは無理だ! と潔く諦め、まずは最優先の電池を確保。あとは売店で飲み物と夜食のパン、おにぎりを買ってバスへ戻る。時計を見るとジャスト10分! 休憩時間、もう5分くらい欲しいです……。
午後11時40分(山陽自動車道)
つかの間の休憩が終わり、再びバスは山陽自動車道へ。サービスエリアを出て少しすると、車内灯がオレンジ色になり、車内は一転して夜モードへ。運転席と客席の間のカーテンも閉められてしまい、外界の様子はもはや完全に分からなくなってしまった。しばらくすると、乗務員さんの1人が後ろの仮眠室へ入っていった。おつかれさまです。
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