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2ちゃんねる発“実況文化”の興隆 「ンゴwwww」「麿」「マモノ」もここから広まったそれは感動の共有(2/2 ページ)

2ちゃんねるからネットの実況文化はまさに“感動の共有”。実況があればスポーツはより熱く、アニメはよりドラマチックに、B級映画はより名作になる。

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実況文化の発展

 かつては2chに集中していた「実況」もネット文化の発達によって、様々な場へと広がっている。次にそちらを確認していこう。

  • ニコニコ動画

 ご存知の通り、コメント機能が充実している「ニコニコ動画」では、時間差がありながらも場を共有できる「疑似同期」が可能だ。またニコニコ生放送も実況において圧倒的な力を誇っている。2012年1月に配信された「アイドルマスター」の特別番組では、4時間半の間に200万ものコメントを獲得した。

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THE IDOLM@STER組曲〜アニメ配信無事完了記念!打ち上げスペシャル〜
  • アニメ実況のまとめサイト

 2009年に放送されたアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」では、2カ月に渡ってほぼ同じ話が繰り返される「エンドレスエイト」が展開された。その際、2chまとめブログが実況板の状況をまとめたことで、一部のネットユーザーの関心は、本編そのものより、むしろ視聴者たちへと移っていた。アニメのキャプチャ画面と共に実況民の反応が見えるようになったことで、新たな楽しみが生まれた。「エンドレスエイト」を1つのきっかけに、以降、アニメの実況は各所でまとめられるようになっている。

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涼宮ハルヒの憂鬱 エンドレスエイト8週目 オレの夏はまだ終わってない(【2ch】ニュー速VIPブログ(`・ω・´)より)
  • Twitter

 Twitterを筆頭とするソーシャルメディアの登場は、実況文化にとって革新的な出来事といえる。リアルタイムに情報をシェアすることは、今や当たり前のことになっていて、かつてとは比べ物にならない量の情報が発信されている。なかでも日本はちょっと不思議な方向に盛り上がっているのが興味深い。「天空の城のラピュタ」が放送された時に記録した、1秒間あたりに2万5000ツイートはTwitterの歴代記録になっている。

  Twitterの歴代TPS記録
1位 天空の城ラピュタ/バルス 日本 2万5088 2011/12/9
2位 あけおめ 2012 日本 1万8438 2012/1/1
3位 State of Union 米国 1万4131 2012/1/24
4位 SuperBowlXLVI 米国 1万2233 2012/2/6
5位 NFL Play Off 米国 9402 2012/1/8
6位 MTV Video Music Award 米国 8868 2011/8/28
7位 FIFA/なでしこ決勝 日本 7196 2011/7/17
8位 ブラジルチーム敗退 ブラジル 7166 2011/7/17
9位 スティーブ・ジョブズ氏の退職 米国 7064 2011/8/25
10位 あけおめ 2011 日本 6939 2011/1/1

感動を共有するなんJ

 こうした実況の高まりは広告会社をはじめとする各企業の研究対象にもなっている。人々の生の声を収集し、分析する「ソーシャルリスニング」は、マーケティングに欠かせない存在であり、その解析結果からは、生放送のスポーツ番組とソーシャルメディアの相性が特に良いことも分かってきたという。Twitterなどで繋がりながら視聴するスタイルを指す、「ソーシャルビューイング」という言葉も生まれている。

 このことは、2chにおける「なんでも実況J(ジュピター)」の隆盛と無関係ではないだろう。実況chには、なんでも実況するS/V/J/Uの4種類の板があり、一時期のなんJは、なんUに吸収されかけるなど、過疎板もいいところだった。しかし2009年、野球chに厳しい規制がかかったことから、野球実況を生業とする層がなんJに進出し、今や2chでも有数の勢力となっている。2008年に、当時楽天に所属していたドミンゴ投手が、9回裏2点リードから登板するも、ワンアウトもとれないまま逆転サヨナラ弾を浴びたことから生まれた「ンゴwwww」という用語は、未だに多くの場所で使用されている。

 なんJが人気な理由は、野球というコミュニケーションツールが背景にあり、さらに踏み込むと、スポーツを一緒に見ることによって得られる「感動の共有」が根本にあるのだと考えられる。これはもちろん、実況全般に関わることでもあるが、スポーツにおいてより顕著に見受けられるようだ。TwitterのTPS記録の上位にスポーツ関連が多いことも証左であろう。

 さて、2012年といえば、ロンドンオリンピックが開催される年である。ソーシャルメディアの充実により、かつてない規模で実況が行われることは間違いないだろう。その時、2chの実況板でも新たな文化が生まれるのか――要注目の夏になる。

著者紹介

高橋史彦。1985年生まれ東京育ち。「ねとぽよ」などで活動する駆け出しライター。カジノ解禁の行方をウォッチしながら、喧嘩商売の連載再開を心待ちにする日々を過ごしている。


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