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アニメーションは「世界の秘密をのぞき見る」仕事――宮崎監督が語った、引退、ジブリのこれから、作品への思い(1/3 ページ)

長編映画からの引退を決めた宮崎駿監督は、会見で何を語ったか。引退の理由、ジブリの今後、作品への思いなどについてのコメントを、まとめました。

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 「スタジオジブリのプログラムから、ぼくをはずしてもらうことにしました

 世界的なアニメーション作家・映画監督である宮崎駿監督は9月6日、都内のホテルで行われた記者会見で、スタジオジブリ長編映画からの引退を発表しました。

 宮崎監督は「あと10年は仕事をしたい」「やってみたいことや試してみたいことがいろいろとあります」とも話しており、これからも同氏の作品を見ることができそうです。しかし、今後の活動はジブリ長編映画の枠組みとは少し離れたところで進むようです。

 宮崎監督は1945年、東京都生まれ。63年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社し、アニメーションの世界に入りました。84年にスタジオジブリの母体となるトップクラフトで劇場版「風の谷のナウシカ」を発表し、翌年にスタジオジブリを高畑勲監督らとともに設立。その後の活躍は、ご存知の通りです。

 引退会見で宮崎監督は、自らの引退、アニメーション人生、そしてこれからのジブリについて何を語ったのか。発言を分かりやすいようにまとめ、紹介します。

はじめの一言 ジブリは「来年夏」にも新作

宮崎 今回は本気です(会場に笑い)。

鈴木 始まったものには終わりがある。今後ジブリがどうなるのか疑問を持たれる方もいるだろう。高畑勲監督の「かぐや姫の物語」は鋭意製作中。11月23日に必ず公開する。そのほかの企画は発表できないが、来年夏を目指してもう1本製作中だ。

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鈴木プロデューサー(左)と宮崎監督。会見には中国や韓国、イタリア、フランスなど海外メディアも多く詰めかけた

長編の監督を引退することについて

宮崎 (「引退の辞」のコメントを引用し)僕は自由。車が運転できるかぎりは毎日アトリエに行こうと。休息を取らないといけない時期でもある。休んでいるうちに(今後のことは)分かるだろう。

 前作の「崖の上のポニョ」から「風立ちぬ」まで5年かかっている。次の作品は5年では済まないだろう。7年かかれば80才になってしまう。僕の長編アニメーションの時代ははっきり終わった。

――これまでの引退宣言との違いについて

宮崎 鈴木さんに「もうダメだ」と言った。ジブリを始めたとき、こんなに長く続けるつもりがなかったのは確か。(次回作に)7年かかるかもということに、鈴木さんもリアリティを感じたのではないか。

 アニメーション監督は、人それぞれやり方が違う。僕はアニメーター出身なので、描かないと表現できない。だから(メガネを取り机に向かう仕草を見せながら)こうやって、永遠と描かないといけない。どんなに体調を整えても、集中できる時間が減っていくのは目に見えている。今回はポニョの時より、机を離れるのが30分早くなった。次は1時間早くなるんだろうと。

 加齢により発生する問題に苛立ってもしょうがない。やり方を変えればという声もあるが、それができればもっと前にやっている。僕は僕のやりかたを貫く。だから長編は無理だと判断した。

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「こうやって、永遠と描かないといけない」と宮崎監督
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――ジブリの若手作品の監修や脚本といった手助けの予定は

宮崎 ありません。

――引退が決まった時期

鈴木 具体的な言葉は忘れたが、今回は本気だと感じざるを得なかった。ナウシカから30年目。いろいろあった。やめようか、といったいろんな話があったが、ずっと緊張の糸が張っていた。今回、宮さん(宮崎監督)に引退のことを言われたとき、僕自身ほっとするところがあった。若い頃だったら止めようとしたかもしれないが、ご苦労様でしたと。

 会見を開く前にスタジオのスタッフに伝えなきゃという思いがあり、8月5日に伝えた。映画の公開が一段落したあとに対外的に発表すべきと考え、9月の頭になった。

――短編アニメなら作るのか

宮崎 やってもやらなくても、僕は自由。今はそのことに頭を使わない。前からやりたかったことがいろいろあり、そっちをやろうと。それはアニメーションではない。

 ジブリ美術館は10年以上経って展示が色あせていたりする。描きなおしたりしなければ。美術館の展示品というのは、毎日掃除してきちんとしていても、色あせて全体がくすんでいく。そこにキラキラしたものを1つ入れると、そのコーナーがパッとよみがえって、たちまち子どもたちが集まってくる。そういうことが分かっている。

――ほかにもやってみたかった長編作品はあるか

宮崎 山ほどあるが、やってはいけない理由があったからこそやっていないのだと思う。

――今後は休息を優先するのか

宮崎 僕の休息は他人から見ると休息に見えないような休息。好きなことやっていると、大変だけれど休息になる。

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