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空想都市「中村市」へようこそ――地図と想像のはざまで空想地図職人インタビュー(2/2 ページ)

空想都市「中村市」の精密な地図。それは、何気ない日常が描かれた絵だった――。『みんなの空想地図』を刊行した“地理人”こと今和泉隆行さんに空想と想像の世界を聞いた。

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『みんなの空想地図』の楽しみ方

―― 空想地図の鑑賞者はどのような楽しみ方ができるのでしょうか。

今和泉 先述の通り、空想であることで見る人は比較的自由に想像できます。見る人自身の日常や、家族や友人の日常、以前住んだところの日常、他で垣間見た経験の引き出しから、どこか知っているところと似ているところを見つけたり、地図上にある情報から浮かび上がってくる部分を想像したり、例えば「自分だったらどこに住むだろう」と考えると、すっと、しかし深く入っていきます。現実世界での、周囲の人々や仕事の事情、しがらみなどを無意識にリセットして、新たな自分の志向に気づいたり、今の人生と違う人生を空想できるかもしれません。

―― 今後も2冊の書籍の発売が予定されているそうですね。それらと比較すると、本書はどのような楽しみ方ができるでしょうか?

今和泉 2冊目、イカロス・ムック「空想地図の描き方」(仮題)は、実際の空想地図の描き方で、現在用意している中村市の地図全面が登場します。ほか、実際の地図の描き方、考え方を図解しているので、地図に詳しくない人でも空想地図が描けるような本を作っています。3冊目、文藝春秋「空想都市の歩き方」(仮題)は、短編で空想都市でのエピソード(ショートストーリー)が載り、地図のほか、ささいな日常のワンシーンの重なりで空想都市に迫り、実際の地方都市の回り方、コース紹介も予定しています。

 本書『みんなの空想地図』は、これまで空想地図を描いてきたわたしの活動紹介と考察が主な内容です。マニア目線を排し、空想地図を描いたいきさつや、都市を空想するとはどういうことか、地図にするとは何なのか、といったことの本質に迫り、地図好きが抱く暗黙の前提から噛み砕いて解いていくような内容です。

 7歳のときに描いた空想地図、そのほかの空想、図式化、デザインなどのカラー図版を多数収録しつつ、日常目線で都市をつかむアプローチも含めています。読む人の日常目線の延長で、都市とは何なのかを紐解いてもらえれば、と思います。


広がる日常

―― 現実の地図には興味がなくても、例えばRPGなどの地図に興味を持ったことのある人はいるのではないかと思います。『みんなの空想地図』は、そんな方でも楽しめるでしょうか?

今和泉 「都市」や「地図」に興味がなくても、例えば熱中したドラマの舞台、好きな人のいる街、お気に入りのカフェのある街……人が未知の空間に興味を持つきっかけはさまざまです。自分の気になるポイントを見つけて、深堀りしていければ、楽しめると思います。

 RPGの舞台も同じくでしょう。RPGの楽しさってどんなところでしょうか。0から入る新たな世界で、自分自身で足跡を残しながら自分なりの世界、空間を構築していく……というところでしょうか。でしたら、すべては脳内の想像力で膨らませるしかなく、勝ち負けはないですが、似た楽しさがあると思います。

―― そのほか、読者に向けてメッセージがあればお願いします。

今和泉 長々と話しましたが、あまり考えずにパラパラとめくってみても良いかと思います。カラー図版多数で、難しいことを考えずに直感的に見ても、面白いかもしれません。地図や視覚化という道具で、カオティックな都市の日常をシンプルに見るための鍵になれば幸いです。

 ついでに、この機会に空想で地図を描いてみる方がいらっしゃったら、うまい下手関係なく、楽しんで描いてみるのもオススメです。何にしても、見る人に楽しいことが訪れれば、わたしはうれしいです。

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