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ポスターに隠された意味、いま明かされる宮崎駿・高畑勲伝説【ほぼ全文書き起こし】映画「夢と狂気の王国」公開記念鼎談(2/5 ページ)

スタジオジブリの“今”を描いたドキュメンタリー映画「夢と狂気の王国」が公開。プロデューサーを務めたドワンゴ川上量生会長らが撮影の裏側とポストジブリのアニメ業界を語る。

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庵野監督が堀越二郎に決まった瞬間

石井 あとは庵野監督。庵野さんが、主人公の堀越二郎に決まった時がまるまる映っていて、アフレコが終わって鈴木さんの車に乗っているシーンまであって、これは庵野監督が宮崎・高畑さんをどう思っていて、何を受け継ごうとしているのかが結構語られるんですよ。

川上 あのシーンは相当面白いですね。

石井 ちなみに宮崎吾朗監督と川上プロデューサーの対峙シーンは、心臓がドキドキして画面を見られませんでした

川上 僕が怒られてるシーンですね。あれは本当に申し訳ないと思っていて。僕が出てるシーンは全部カットしてほしかったんですが、プロデューサーとしては、砂田さんが演出上必要だと思うシーンには、口出すべきじゃないと思って。

齋藤 そこは、やっぱり吾朗監督と川上さんのシーンみたいに、砂田監督とも同じように薄暗いところでやりあったりしたんですか?

川上 あのシーンはね、すごく怒ってましたよね、吾朗さんね。僕は今回プロデューサーってことなんですが、はっきり言ってあまり仕事してないんですよ。素人だし。

齋藤 それだと映画できないと思いますよ。やっぱり監督とプロデューサー両方いないと。

川上 吾朗さんとも、いろいろやってるんですけど。やっぱり僕があまりにも仕事をしなくて、すごく怒ってるシーンなんですよね。それがね、皆さんご覧になると「僕が仕事してるんだ」って一般的には思われそうなんですよ。それが、すごく心苦しくて(笑)。

石井 でもね、監督とプロデューサーって、ああいう状況になるんですよね。ほんとうに、にらみあいになるんですよ。向かい合って1時間ぐらいにらみあいになったりするじゃないですか。細田さんはもっと長いか。

齋藤 いやいや、そんなことないですけど。うちはそんなことしませんからね。

川上 ほんとですか? さっき、この番組を細田さんが見てるんじゃないかとか(笑)。

齋藤 全世界の人が見てますよ!

石井 ああいう現場が映ってるのはすごいですよね。そういう監督とプロデューサーの対峙する場面みたいなものも入ってて、あれが夢と狂気の「狂気」の部分ですよね

齋藤 やっぱりものを作るって、みんな真剣になって、ひとつのことを積み上げていくみたいなとこがあるじゃないですか。そういう意味でいうと、もっと激しいとこいっぱいあったんじゃないの? とは感じますよね。

川上 仕事が出来るかどうかは別にして、監督とプロデューサーの関係性はある程度分かったと思いました。クリエイターの監督って基本コントロールが効かないじゃないですか。いろんな人が監督と軋れきがあるんだろうけど、そのなかで真っ向から対峙しなきゃいけないのがプロデューサーじゃないですか。対峙できない人と対峙しなきゃいけないことが、プロデューサーの仕事ですよね。

齋藤 目指してるゴールが一緒なら、最終的には意見も一致するとは思います。

「結局は運と縁」――宮崎監督の言葉

石井 これまでのドキュメンタリー番組は夢と狂気をそのまま映していた作品が多かったんですよね。ずっとカメラ構えてれば、宮崎さんが怒るとこも撮れるし、鈴木さんが机をぶったたくとこも撮れる。ただ今回は、ものすごく優しい視点で、小人がジブリの森に迷い込んで、じーっときれいなフィルタで見ながら、でも、やっぱり光の奥に闇があるな、みたいな。すごく心地良いけどヒリヒリするドキュメンタリーになったと思います。

川上 今までは、宮崎駿のドキュメンタリーだったけど、今回は宮崎駿が生きてる世界を描いたドキュメンタリーですよね。

石井 これから仕事を始めようとしてる人には、特に勧めたい。今は仕事を始めると、ついつい自分の夢のために、自分の自己実現のためにとかなりがちじゃないですか。それで、宮崎駿監督のように、世界の頂点を極めた、いわゆる作家ですよ。一番自分にオリジナリティのある人が、実はものを作るときに、誰かのためにとか、他者のためにとか、クライマックスの宮崎さんのセリフが象徴的で、「結局、運と縁なんですよ」と。運と縁がないと良い仕事もできない。この宮崎さんの考えを受け取ると、たぶんすごい豊かな仕事ができると思います。僕もギスギスしていた気持ちを洗われました

齋藤 それは、僕も背筋がシャンとしました。やれることはまだまだあるなと。鈴木さんとか、いつ寝てるの? みたいな感じで。鈴木さんよりずっと若い僕はそういう意味でいうと、寝てる場合じゃないなって思う。

川上 クリエイターは勇気づけられますよね、この映画は。頑張らなきゃって気になりますよね。

石井 1人でもんもんと自分から生み出されるのを待ってるんじゃなくてね、宮崎さんががむしゃらにいろんな人との関わりのなかでものを作ってるっていう。

川上 実際はね、ヤクルト買ったりとかね(笑)。

石井 (映画に)ヤクルトおばちゃんは、出てきすぎですよね(笑)。

齋藤 でも、ウシコっていう、かわいいネコちゃんもいっぱい出てくるからね。ネコファンも、ヤクルトのおばさまファンも含めて、みんなが楽しめる映画ですよ。

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ニコ生の中継も盛り上がった

川上 何をいっぱい出してるんだみたいな、そんな感じですよね。もうすぐ、皆さんご覧になられると思いますので。その前に「パンダコパンダ」がありますけどね。実は、僕も見たことないんですよね。

石井 めちゃくちゃすごい映画です。「トトロ」の原点だし、「火垂るの墓」も入ってるし。そもそも、高畑さんと宮崎さんがやりたかった、あるヨーロッパの原作の許諾がおりなくて、それで絶望して作ったのが「パンダコパンダ」で。「ポニョ」もそう。「パンダコパンダ 雨ふりサーカス」はまさに「ポニョ」ですよ。

齋藤 今は歴代の監督作品がいろんな形で見られるようになってますね。歴史の文脈が埋まっていくと、より作品が楽しめるようになります。

石井 ぜひ劇場で見てもらいたいですね。「かぐや姫の物語」を見る前に見ても大丈夫です。「風立ちぬ」は結構影響でちゃうかもしれませんけど。

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