突然ですが皆さんは「活字」と聞いて何を思い出しますか? 平成生まれ幼少期ガラケーピポパポ世代の私は、「若者の活字離れ」「活字を読む」など文章一般のことだと認識しておりました。それも間違いではないのですが、「ん? 違うよ!」「活版印刷の時組むアレのことでは?」とお気づきの方、その通りです。
上の写真が「活字」。初めて見た時に「わ! お正月スタンプだぁ」と思ったゆとり世代をお許しください。知らない同胞のために説明いたしますと、かつて「活版印刷」という印刷方法が主流だった時代、世の中の印刷物のほとんどは1文字1文字作られたこの「活字」を並べて(組んで)、インクをつけて、紙に刷って印刷されていました。う……ウソだと思うでしょ……本当なんだよ……。
時代が進むごとに見かけることが少なくなった活版印刷、そして「活字」。その活字を作り続けているお店が東京・新宿にあります。大正6年創業の「佐々木活字店」です。
いざ! 鋳造見学会へ
月に一度「鋳造見学会」を開催しているという佐々木活字店さん。活字について学んだところで、「じゃあ新聞とかだと何千個使ってたの!?」「それを1文字1文字つくるってどういうこと!?」という疑問が湧きに湧いたので、実際に見学会へ参加してきました。
この日の見学者は5人。説明してくださるのは佐々木活字店の佐々木勝之さんです。何やら棚が立ち並ぶ1階から、鋳造工場のある2階へと案内されます。ステキな雰囲気にすでにワクワクが止まりません。
「活字」が産まれる現場
2階に到着すると、昔の映画のような光景が目の前に広がりました。
並んでいる機械は「自動活字鋳造機」と呼ばれる機械です。佐々木活字店では全部で12基所有しています、と佐々木さん。実際に機械を動かしていただき、活字が出来る仕組みを学びます。
昭和35年(1960年)から動き続ける「自動活字鋳造機」
鋳造機の電源をいれて、活字作りスタート! カタンカタンとリズミカルな音が聞こえてきました。
活字の原料となるのは鉛・すず・アンチモンの合金です。これが釜で溶かされ、「鋳型」と呼ばれる型に流しこまれます。
流し込まれた合金はすぐに固まり、活字の形となってぞろぞろ出て来ました。
溶けた合金の温度は350度。鋳造機の周りには熱気が立ちこめます。作る活字のサイズによって、流しこむ鉛の量が異なるため、より大きい活字は時間がかかるとのこと。「最近、ひらがな1文字1000本ずつ欲しいという発注を受けました。大きい活字だったので1日ずっと動かしても2文字しか終わらないんですよ(笑)。機械もびっくりしたのか、傷みが激しかった」と佐々木さん。
鋳造機は昭和35年(1960年)製で、現在は生産終了。壊れてしまうと修理するエンジニアももういないため、日々のメンテナンスは欠かせないと説明してくれました。また、それでも壊れてしまった機械は、現状動く機械の部品交換用として保存しておくそうです。部品が壊れても、取り換え用の部品はもう販売されていないのです。
鋳造機の他に、活字作りに欠かせないのは元の型となる母型ですが、母型を作る職人さんももういないとのこと。自店で持っている母型が消耗してしまったら、他の活字店へ注文し合うなど、活字店同士協力して作り続けているそうです。
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