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試されている気がする! マニアックなラインアップにチャレンジ魂が燃える『爆裂折紙作品集』司書メイドの同人誌レビューノート

秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。同人誌の用語を解説していく「ミソノ流ワンポイント用語解説」も必見。

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 一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメやマンガのパロディや、コスプレの写真集などさまざまなジャンルがありますが、こちらの連載では、私設図書館「シャッツキステ」の司書メイド・ミソノが、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心にご紹介します。作家の「好き」が形になった同人誌、その魅力を体感してください。

爆裂折紙作品集
爆裂折紙作品集

紹介する同人誌

タイトル:『爆裂折紙作品集1〜3』

著者:キノシタゴウ

サークル名:爆裂折紙魂

形態:A5 64ページ 表紙・本文モノクロ

Webサイト:http://www.geocities.jp/g_origami/

同人誌入手先:COMIC ZIN

次回参加イベント:コミティア113(スペース:し16b)


 夏の大きなイベントも一段落し、ふと気付けば風が少しだけ涼しくなりました。ああ、夏の終わりだなぁ、とノスタルジックになりながら、思い出すのは夏休みの宿題を抱えたあのころ……。当時の記憶を、この一冊が呼び覚まします!

オリジナルの折り紙作品集

 各巻には、折り紙作品の作成工程図が10作品余り掲載されています。どれも作者・キノシタさんのオリジナル作品ばかり! 折り紙愛好家の方々の中には、古くからの定番の伝承折り紙だけではなく、日々新しい作品を作り出している方もいらっしゃるというのは、図書館で専門雑誌などを見掛けることもあって知っていたのですが、それがこうして同人誌となって目の前にあると「こうやって折り紙を世に広めていく方法もあるんだ!」と、あらためて驚きました。

こんなものまで折りますか!

 あらためて本を見てみれば、表紙にはかっこいいドラゴンや、かわいいリスの姿。これを自分でも作れるのかな? とわくわくしてきます。夏休み、お家で古い折り紙の本を開いて、紙を折って遊んだりしたなぁ……と、思い出が頭をよぎります。さて、何を作ろうかしら。えーと、第一巻のラインアップは――

  • 色鉛筆
  • プラナリア
  • うんこ
  • マンボウ
  • バラ
  • コーカサスオオカブト
  • ラクダ
  • 洋式便器
  • 河童
  • ティラノサウルス
  • トリケラトプス

……!? 何ですか、このよく分からない方向に縦横無尽な収録作品は! 「かっこいい」「きれい」「変わってる」が、怒涛(どとう)のミックスで迫って来るではないですか!

 いやしかし、この品ぞろえ、どこか感じる奇妙な高揚感……。一見、むちゃくちゃなならびに思えますが、何か心に引っ掛るラインアップ……。あ! これ、小学生男子に絶対ヒットする布陣だー!!

こ、これを折りますか!
こ、これを折りますか!

かつて少年だった大人にささげる折り紙の世界

 これは小学生男子が「作りたい!」と目を輝かせるわー……としみじみしながら、「せっかくだから私も作ってみよう」と、紙を手に取りました。迷った末、ほかのおりがみ本では見たことのない「耳かき」に決めました(「耳かき」は3巻に収録)。難易度は星2つですが(最高難易度は星5つ)、シンプルな形だし何とかなるかしら、と折りはじめます。

 しかし、これが意外と難しい! 少年の気持ちを高める作品をそろえておきながら、その制作過程は決してやさしくはない……。むしろ、「この精密さについてこれるかな?」と不敵に笑っているような気配すら感じます! しかし、少年なら投げ出してしまうかもしれない難易度でも、大人になった今なら! 「ふふ……難しくて、やめてしまうと思ったか? もうあのころのオレとは違うぜ! 見よ、『内側に折り込む』や『折り筋でかぶせ折り』といった指示を理解する姿を!」と、立ち向かって行ける……!

 作者さんは巻末に、折り図に関するご苦労を「自分の創作した折紙作品を第三者に伝える際に、『折図』という表記方法は本当にベストなのか? という根本的な疑問が思い浮かぶのである」と、ちらりとのぞかせていらっしゃいます。うーん、作品の伝え方には、どのジャンルの方も試行錯誤なんですね。折図で伝えようとしてくださることに、この折り紙作品を作り上げることで、作者さんと対話している気すらしてしまうではないですか。

 夏の終わり、もう宿題を抱えることはありませんが、ちょっぴりあのころの気持ちを味わえそうな本です。

ミソノ流ワンポイント用語解説

夏から冬は短い

 夏のコミックマーケットが終了しましたね。はぁ……私の夏が終わりました……。戦利品を傍らに、ほくほくしながらページをめくる毎日。しかし! 次回の冬のコミックマーケットへの準備は既に始まっているのです。冬コミのサークル参加費の申込みは、実はもう締め切られているのです。あの日から一週間もたたないうちに、もう冬の動向を決める時期に!

 夏から冬の間は4カ月しかないので、とってもスピード進行です。でも、館内で皆さまのお話を伺っていると、「夏と冬の間が短いと、サークルさんがだいたい予告したカットと同じ内容の本を出してくれるからいいよね」と。確かに。冬〜夏はおよそ7カ月。その間にジャンル変更されていることもありますものねぇ……。

 そして、夏と冬の間には、関西で行われる女性向けの大きな同人誌即売会「SUPER COMIC CITY 関西」や、オリジナル作品の同人誌即売会「コミティア」も控えているので、まだまだほくほくの日々が続きそうですね。


ミソノ:いつでも優しい笑顔で、皆の心をいやしてくれる。普段は大きな図書館で司書をしており、司書ならではの本に関するお話は、日常では知る機会の少ない情報満載で、一聞の価値あり

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