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酷評続出の映画「ギャラクシー街道」、三谷幸喜に何が起こったのか

絶不評のワケを考えてみました。

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 西暦2265年の宇宙にある、小さなハンバーガーショップを舞台に織りなす宇宙人模様を描いた三谷幸喜監督初のSF作品映画「ギャラクシー街道」が荒れに荒れています。これまでヒットメーカーの名を欲しいままにしてきた氏の経歴に初めてといえる大きなバッテンが付きそうです。

 Yahoo!映画での評価も公開初日から急流下りのごときスピードで下がり続けており、11月2日時点での平均評価は1.80点(5点満点)を割り込んだようです。

 参考までに同サイトでの他作品の評価を挙げてみると、原作やアニメのファンから猛攻撃を受けた「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」(2.26点)に圧勝するレベル。さらに、今年公開された作品の中でも評価の芳しくない「夫婦フーフー日記」(2.86点)、「ストレイヤーズ・クロニクル」(2.78点)、「王妃の館」(2.72点)、「極道大戦争」(2.70点)ですら足元にも及ばない、まさに独り負けといってもよい状態。ネット上でも同作に対するネガティブな意見の方が目立ちます。

 公開初週、そして翌週のランキングでは1位を獲得してはいますが、数字はそれほど好調ではありません。映画.comから引用します。

全国433スクリーンで公開され、オープニング週末2日間で動員19万9340人、興収2億7045万7900円を記録。これは最終興収29.6億円をあげた前作「清須会議」(13)の動員比で51.5%、興収比で55.9%という成績。三谷監督初のSF作品ということで注目を集めたが、前作の半分近い出足となり、最終興収は15億円前後が目安となりそうだ。 (映画.com 映画ニュースより引用

 ゆるく下がってきているとはいえ、前作「清須会議」までのオープニング成績は5億円前後だったのが今作は一気に半減ですから、厳しい興行になりそうです。参考までに、ここ10年間で公開された三谷作品の興収も紹介しておきましょう。

  • 2006年公開「THE 有頂天ホテル」 初動5億7000万円→累計60億8000万円
  • 2008年公開「ザ・マジックアワー」 初動5億1000万円→累計39億2000万円
  • 2011年公開「ステキな金縛り」 初動5億円→累計42億8000万円
  • 2013年公開「清須会議」 初動4億8000円→累計29億6000万円

 映画好きの間では予告編の段階で「とてつもない地雷臭がする」と話題で、筆者も「よくあの予告編で初動がこれで済んだな」と思うのですが、それこそが長年培われてきた三谷ブランドへの信頼度の成せるわざなのでしょう。

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「ギャラクシー街道」予告

 今作が最終的に黒字になるか赤字になるかは横に置いたとして、現時点ではっきりと出ている答えがひとつあります。それが、「三谷ブランドの失墜」です。「三谷幸喜(の作品)だから」が今後通用しなくなる。そんな風に思わせる破壊力を「ギャラクシー街道」は持っています。


 なぜこうなってしまったのか。ホップ・ステップ・ジャンプでつまらなくなったのなら、才能の枯渇といえるのかもしませんが、三谷さんの最近のコラムや、公開記念で放送された「スター千一夜」でのトークを見る限り、ちゃんと面白い。枯れた味が出始めていて、このまま行けばウディ・アレン(現79歳)のようなおシャレで粋なおじいちゃん監督まっしぐらだったと思うのです。

 そう考えると、やはり今回はおかしい。三谷さんのファンである筆者は、まだ心のどこかで疑っているのです。「こんなはずがない。何か原因があるはずだ」と。そこで、「ギャラクシー街道」が面白くなかった理由を考察してみました。

考えられる原因その1:小林聡美の影響が大きかった

 二人が結婚した1995年といえば、三谷さんのドラマの中でも特に傑作として知られる「王様のレストラン」が放送された年でした。

 その前年にテレビドラマ「古畑任三郎」がスタートし、翌々年には「ラヂオの時間」で映画監督デビューする三谷さんの黄金期は、まさに小林聡美とともにあったわけです。

 二人の別居は2010年からで、離婚を発表したのが2011年5月23日。同年10月29日に公開された「ステキな金縛り」の脚本執筆や撮影期間中はまだ婚姻関係が続いていたでしょうから、離婚後に初めて作ったのは「清須会議」ということになります。

 この清須会議で、監督デビュー作である「ラヂオの時間」から続いてきた現代劇から離れ、そしてSFの「ギャラクシー街道」を世に送り出します。

 その様子は、ハリウッドで活躍するティム・バートン氏に重なるものが。バートン氏は長らく事実婚関係であったヘレナ・ボナム=カーターさんとの関係を解消してから、それまで続けてきたファンタジー路線から離れ、2014年公開の「ビッグ・アイズ」では、かつて「エド・ウッド」(1994年公開)で見せた、特定の人物にスポットを当てたドラマ重視の作風を見せています。

 多くのファンはバートン氏の変化を称賛をもって受け入れていますが、バートン氏と三谷さんは、離婚を境に評価を激変させたという意味では同じであるといえます。

考えられる原因その2:スケジュール優先で脚本が練り込み不足になった

 三谷作品の最大のウリは緻密な脚本。これは劇団・東京サンシャインボーイズのころから変わっていません。

 10月31日に地上波で放送された「THE 有頂天ホテル」などはその最たる例で、あれほどの大きな建物にたくさんの人たちが動いていて、そのすべてに生活感がある。主要な登場人物だけでなく筆耕係や路上ミュージシャン(これも香取さんでした)にまで人生を背負わせて、大きな物語を形成していました。

 しかし、「ギャラクシー街道」にはそれがまったくといっていいほどない。小さなハンバーガーショップに居るキャラクターたちがバラバラのまま関連性を持たず、伏線回収もない、まるで作りかけのような脚本。

 しばしば言われる三谷さんの遅筆ぶりがいつも以上だった可能性もありますが、我が子にも等しい監督作品で、書きかけの草稿をそのまま映画化するような暴挙には出ないはず。延期をしたくても断り切れない何かがあったのでしょうか。

考えられる原因その3:三谷作品の支持層をほかならぬ本人が読み切れていなかった

 三谷さんは笑いに下ネタを使うことを避けてきたところがありますが、今作は「一体何があったの?」というくらいに下ネタが出てきます。

 三谷作品を支持する女性層の多くは、キャプテンソックス役の小栗旬さんがトイレの個室で「見ててください、すっごく大きくなりますよ」と言っても、喜ぶどころか眉をひそめてしまうような方々。例えばWAHAHA本舗を見に行く層とは明らかに違う。ここを三谷さん本人も読み切れていなかったのではないかと思います。

 断っておきますが、WAHAHA本舗がダメとかいう話ではありません。下ネタで笑いを取るのはお手軽で低レベルと思われがちですが、ギャラクシー街道を見ると、下ネタにも「優れた下ネタ」と「劣った下ネタ」があるのだと思わざるを得ません。

 今作の出演者のひとりである大竹しのぶさんは、10月5日に東京・TOKYO DOME CITY HALLで開催された完成披露試写会の舞台あいさつの壇上で「本当にくだらなくて、なんにもない映画なんですけど」と関係者を一斉にのけぞらせるという離れ業を披露しました。今にして思えば、観客の心情を察した上での言葉だったのかもしれません。


 今作の公開前日でTwitterとInstagramの更新終了を発表した三谷さん、賢明な判断でした。公開終了までは早くてもあと1カ月半、どのような着地となるのでしょうか。

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