アニメ業界に新時代を 2人のアニメ馬鹿が「CHIKA☆CHIKA IDOL」プロジェクトに込めたメッセージ:「とある」シリーズ錦織監督の挑戦(2/3 ページ)
「とある魔術の禁書目録」シリーズを手掛けた錦織博監督が、クラウドファンディングでアニメの制作資金を募る。
―― プロジェクトの環境と作品がパラレルな状況なのですね。
本条 不思議と重なってしまったんです(笑)。我々の活動自体が、言うなれば地下アイドル的な立場。皆さんの支援によって作品を作り出し、低賃金問題に揺れるクリエイターたちにお金を回せる。クリエイターとファンの間の中間的な存在がほとんどありません。この形が最適だと思っています。
―― ある種、株主と従業員のような関係性。
錦織 支援者が作品とクリエイターを支援して、お金を払うことに喜びを感じられる仕組み。このモデルがお金と物を交換するモデルの次に来るビジネスモデルではないかと思っています。一定金額以上の支援者の名前は作品にクレジットされるので、支援者は「おれたちの力で生み出した作品だ」と誇らしく思って欲しいです。「CHIKA☆CHIKA IDOL」の登場メンバーたちには「歌をたくさんの人々に届けたい」という思いがあります。その信念や歌声に、「作品を世界の人々に見てもらいたい」という我々の思いも重ねています。アニメ業界内外の人に、製作資金の集め方、作品の共有の仕方は自分たちの手でゼロから構築できるんだと示したいです。
将来的なVR技術導入や劇場版も見据えて
―― 作品についても聞かせてください。日本国内ではすでに「アイドルマスター」シリーズや「ラブライブ!」シリーズなどが人気を博しています。これら従来のアイドルアニメと「CHIKA☆CHIKA IDOL」の違いは?
本条 地下アイドルを題材にしようと言いだしたのは僕です。今話題に出たアイドル作品はリスペクトしていますし、ほぼ全てキチンと見て、自分自身楽しんでいます。自分が単純に、「やるならアイドルアニメをやりたいな」という願望がありました。もう一つ、アイドルアニメの良さは、音楽を純粋に楽しめることです。
―― 歌やメロディそのものを楽しめる、と。
本条 音楽業界もビジネスモデルの転換点を迎えて久しいです。そんな音楽もアニメと結びつくことでアニメソングが売れているという話や大きなライブ会場を満員にすることもあります。そのような色んな相乗効果が生まれやすいのがアイドルアニメだなと思って興味を持っています。たしかにアイドルアニメは今までたくさんありましたが、僕らがやろうとしている作品はアイドルアニメ特有の「スターになる」という意味での成長ストーリーの要素は強くありません。むしろ、日常生活のなかでアイドル活動をしている女の子を描こうと考えています。それは、大人たちの「業界」に所属するアイドルや業界物ではなく、例えばバンド活動を始めた若者たちのようなイメージで描きたいんです。大人に言われたから、とか、お金や地位のためとか……そういう理由ではなく、彼女たちが「やりたいからやる」「日々のライブ活動が楽しいよね」という純粋な衝動を、視聴者へ感動として伝播させたいです。
―― 「頂点を目指そう!」という成長ストーリーではなく、日常を楽しむコンテンツを目指す。
本条 「水戸黄門」的に長く続けたいと思っています。あともう一つ、3DCGを用いたライブシーンを毎回必ず入れる、というのがコンセプトとしてあります。
© Tokyo Otaku Mode Inc.