株式会社エインシャント代表取締役社長の古代祐三氏(@yuzokoshiro)が、スーパーファミコンソフト「アクトレイザー」やゲームギアの「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」メガドライブの「ベア・ナックル」(洋名「Streets of Rage」)の企画書画像をTwitterで公開しています。古代氏は当時、これらの作品の音楽を担当していました。
「アクトレイザー」の企画書を見せてもらった
Twitterでは企画書をまとめて撮影した画像の公開のみだったため、同氏にお願いして、スキャンした鮮明な画像を特別にいただきました。数が多いため「アクトレイザー」の企画書の一部のみとなりますが、当時プレイした人にとっては大変貴重な資料のはず。
企画書では最初のページのタイトルが「Sacred Master」(セイクリッドマスター)と書かれていますが、2ページ目のゲーム概要では「The World Master」となっています。企画書段階では、まだ仮称の仮称といった感じだったのかもしれません。
また、「SFXの第一弾のソフトであるため、今までにないジャンルのゲームをユーザーに浸透させ、業界にゲームの可能性をアプローチする」「SFXの機能(拡大、回転、縮小、2重スクロール、半透明処理)を最大限に活かし、他のどのホビーマシンでも実現できないようなものに仕上げる」と書かれており、非常に意欲的な作品であったことがうかがえます。
※古代氏いわく、「SFX」はまだ「スーパーファミコン」という名称が正式に発表されていなかったときの、主に開発者間で使われていた仮称ではないかとのこと。
プレイヤーの操作では、企画書段階ではAボタンでジャンプ、Bボタンで攻撃となっていますが、製品版ではBボタンでジャンプ、Yボタンで攻撃になっていました。各マップのイメージは企画書の段階で既にかなり固まっていたようで、雪原(ノースウォール)の氷のソリの仕掛けについても言及されています。
当時の話を聞いてみた
今回企画書の画像を公開してくれた古代氏は、当時どんな思いで「アクトレイザー」の音楽を作成していたのでしょうか。お話を伺ってみました。
――当時はフリーランスだったと思いますが、どのようないきさつで受けた仕事だったのでしょうか
制作チームの一部のメンバーが、私が音楽を担当したイースの開発に携わった方々で、それがご縁で参加いたしました。
――当時企画書を見て、どんなことを感じましたか
実は企画書を見た記憶がほとんど無いのです。当時の私のBGMの作り方が、かなり自由だったこともあって、企画書を見ずに、まずは曲ありきで進めていました。アクションパートとシミュレーションパートがあることや、世界背景がうんぬん、などの大ざっぱな説明は聞いていたと思います。
――「アクトレイザー」の曲について、作曲した当時からここまで評価されると思っていましたか
全く思っていませんでした。ただ、音源のプログラミングに関しては当初からかなり高度なことをやっていましたので、音響的な面でこの迫力を超えられるものは数年は現れないだろう、と思っていましたね(笑)。
――スーパーファミコンの音源に触ってみた印象はどうでしたか
それまでFM音源ばかりやっていましたので、それでは実現が難しい、生々しいストリングスやドラムセットの音が鳴らせたときはとても興奮しました。当時のゲーム音楽の最先端であった、アーケードゲームでもここまでのスペックの音源は無かったかと思います。
――「アクトレイザー」の曲全体を手掛けるにあたって、コンセプトや意識したことなどはありましたか
私は悪魔城ドラキュラシリーズが大好きで、1面のBGMであるフィルモアはそれの影響をかなり受けています。ただ、せっかく生々しいストリングスやブラスが鳴らせるのですから、それを生かしたオーケストラ・ミュージックを作ろうと、当時影響を受けていたアニメや映画の音楽にインスパイアされたものに変更しました。
――古代さんの気に入っている曲、思い出深い曲などはありますか
「捧げ物」(カサンドラの砂漠で男が遭難するイベントの後に「すてきなおんがく」として献上されるアイテムで流れる音楽)、でしょうかね。実は当時の私の恋愛観が反映していたりします(笑)。
――作曲にかかった期間はどれくらいでしたか
当時はスーファミの音源プログラミングツールが最低限のものしか無くて、一曲打ち込むのに数日を要していました。全部で20曲程度ですから、打ち込みだけでも3カ月はかかっていると思います。作曲と効果音の作成も含めたら半年以上でしょうね。それぐらい大変な作業でした。
「アクトレイザー」発売から、26年。今なお愛される「アクトレイザー」の音楽には、当時の最新鋭の技術と、古代氏の熱い思いがこもっていました。
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