唐突すぎだよ! Kindleくん
突如始まった「Kindle Unlimited」のサービス。あまりにも突然すぎてなにごと!? という感じです。前触れはあったものの、告知なしなんだもん、ねえ。
「Kindle Unlimited」とは、日本の12万冊以上の本・コミック・雑誌と、120万冊以上の洋書が、月額980円でいつでも読める、というサービス。最初の月はお試し1カ月無料。Apple MusicやGoogle Playミュージックを使っている方なら、クラウド型の定額配信サービスと仕組みはほぼ同じなので分かりやすいはず。
取りあえず簡単にまとめ。
- 登録すれば「Kindle」で0円で読める(あくまでもKindleの付加サービスで、新しいサービスではない)。
- いつでもって書いてあるけど、同時にダウンロードできるのは「10冊」まで。11冊目をダウンロードしたいときは、1冊消さないといけない。
- 本を消したら、または契約を解除したら、ダウンロードしてようがなんだろうが端末から強制的に消えます。つまり登録した上で端末に保持できるのは、常に10冊まで。学校の図書館と同じだと考えよう。
- Kindleが見られる環境なら、スマホ、タブレット、PCなどなんでもOK。
- 退会するには、「アカウントサービス」→「コンテンツの端末の管理」→「設定」→「Kindle Unlimitedの設定」→「登録を管理」。
- 結構グラビアあります。大人向けえっちなのもそこそこあります。やったぜ。
- 「Unlimited」という名ですが、言うほど無限じゃないです。冊数制限を見ての通り、いくらでも好きな本落とせるぜイエーイ、というシステムではない。永遠に入手できるわけではないところは他のクラウド型配信サービスと同じなので、十分注意してください。
オトクに感じる人、そうでない人
月額980円は、一言で言うと図書館利用料です。オトクな人とそうでない人、真っ二つに分かれるサービスだと思います。
オトクなのはこんな人
「買わないけどあれこれ読みたい」「普段読まない本を手にしたい」「新しいものを読んで勉強したい」「とりいそぎ資料を探したい」という人には、これ以上ないくらい便利なサービスです。「表紙買い」が好きな人ならまず登録して損はない。また「1巻だけ取りあえず読んでから買うか決めたい」人の試し読みとしても実に有効です。
加えて技術書を探している人は、ぶっちゃけ1冊だけ使うにしてもオトク。「はじめての人工知能 Excelで体験しながら学ぶAI」(通常2462円)「基礎Python 基礎シリーズ」(通常2605円)とかだと、元が取れるどころじゃない。特に電子書籍先行型の本がかなーり多い。書店になく、内容も短いスタイルの本がザクザクあるので、この辺はかじり読みにぴったり。
あとはなんといっても雑誌。定期的に読みたい雑誌が2部以上あればがっちり元取れます。恐らく今回のサービス最大の目玉です。
洋書120万冊は……こちらはちょっとすごすぎるので、読む人は問答無用で登録していいのでは。
不向きなのはこんな人
一方で「じっくり全巻読みたい」という人には不向き。というのも、「全巻無料」というのがあまりないから。特にマンガ。5巻までは無料だけどその後は買ってね、というのが多い。そこが「オトク」ではなく、イラッと来る人にはちょっと現段階のサービスでは勧められないです。
また「読んだ本は手元に置いておきたい」という人向きでもない。10冊制限が意外と厄介で、雑誌みたいに読んだら消すというのならともかく、ちまちま消したり登録したりするのがかなり面倒。ある一定の本を買うと決めているのなら、元が取れる取れないを気にせず普通にKindleで買っちゃうほうが、断然よいです。
ここを割りきって「図書館で本を借りて、気に入ったらそのまま買う」と感じられるなら便利なのですが、そこに980円の価値が有るかは判断が難しい。
個人的に困るのが、Kindle Unlimitedの仕様の数々。「読み放題で読む」のボタンと、「1Clickで今すぐ買う」が隣接していること。これほんと、間違って押すから! 特に巻をまとめてクリックしている時、思わず買っちゃうから! Twitterで事故報告もあがっています。要注意。
どこからどこまでがUnlimited対応なのか分からない、検索してもどうにも数が少ない。カテゴリ検索が命だとは思いますが探しづらい……。このへんのUIはもっと改善されてほしいところです。
ぼくはこれで登録しました
12万冊、というのが中途半端。メジャーどころはそろっている、だがかゆいところに手が届かない。
ただ「取りあえず本好きだよ」って人には「取りあえず登録」をすすめます。
なぜなら、「ムー」があるからです。オカルト雑誌の。
だって「ムー」だよ、すごくない?! 「ムー」読み放題ですよ? もともとコラボなどフットワーク軽い雑誌だけど、まさかUnlimited開始から参戦とは。
なぜ「ムー」があることに価値があるのか。それは名前を知っていても読んだことがない層への波及効果があるから。この手の趣味雑誌って、相当ハマってなければなかなか買いません。でも読み放題なら、興味本位で手が出せる。しかもバックナンバーがある程度そろっている。これこそが「立ち読み」的。「ムー」読者のぼくは、普段「ムー」買わない人とムートークをしたいんです。
青年コミック雑誌で一番手に名乗りをあげたのは徳間書店の「コミックリュウ」でした。さすが人外マンガたくさん載っているだけある。ぼくが心底愛していて中とじの1号から買っている雑誌なので、「とにかく見て欲しい」というオススメのハードルが下がりまくりました。とにかく見て。
電子書籍で一気に裾野が広がりつつあるマンガ雑誌媒体で、読み放題にするってのはかなりの決断だと思います。これがうまくいって、さらにマンガ雑誌が「Unlimited」が増えたら、トータルで「読んでもらう人の数」が増えていくはず。「まずは見てもらわないことには始まらない」という第一歩。作家さんの中には「黒船」という言葉を使っていた方もいました。
ラノベはというと、1巻だけというのも多く、まだまだ少ない。「試し読み」の段階。早くいろいろ登録されてほしいのですが、ラノベにしろマンガにしろ「1巻は無料で読める」スタイルはガンガン増やして行けば、このサービスの在り方も変わっていくのでは。
この「読み放題本」がすごい!
その他、せっかく無料なので読んで欲しい本をあげてみます。読んで!
「隣り合わせの灰と青春」ベニー松山
これ80年代ゲーマーだったらみんな知ってるでしょう!? 「ウィザードリィ」を題材にした小説で、1988年に発売。ゲームシステムを現実の設定として描いて、当時のファンタジー好きの間でものすごく話題になりました。文庫化もされましたが、今絶版のこの本が読み放題電子書籍配信されている事実を当時の自分に伝えたい。ベニー松山作品は「不死王」「風よ。龍に届いているか」などもUnlimited入りしています。
「悪魔に魅せられし者 ドルアーガの塔」鈴木直人
よもやこの時代に、ゲームブックが電子書籍化されてるとか、びっくりだよ。ゲームブックとはページをめくっていくと選択肢がでてきて、その選択通りにページを飛ばして読んで物語を追っていくスタイルの本。80年代から90年代にとてもはやりました。いやあ……KindleUnlimited、とんでもないもの掘り起こしてきました。
「月刊MdN」
ぼく普段からこの雑誌元値で買ってたんですって。だから「えらい! さすがやってくれるぜ」という気持と同時に、「無料になるだなんて、先に知っていれば!」みたいな気持で今大変なことになっています。もともとは1234円。これ1冊で1月まるもうけですよ。イラスト・デザインの雑誌で、「イラスト表現の物理学 爆発+液体+炎+煙+魔法を描く」「おそ松さん特集」、と眺めているだけでも楽しい。イラストを描く人・同人誌を作る人は読んで損なし。オススメは2015年6月号「少女の表現史」です。
「CGWORLD」
元は1512円。……読みたい雑誌1つでもあれば、「Unlimited」登録していいんじゃないですかね。この雑誌は本格的なCG技術解説やクリエイターへのインタビュー、VFXやアニメでの使い方など解説した本格的な本。表紙が目立つので書店では見かけたことのある人も多いと思いますが、普段お高いので手を出しづらい本。こういうあたりを狙っていこう。
このサービスがうまくいったら、今後「取りあえず無料で手にとって読んで、ちゃんと欲しくなったら購入する」「定額を払い続けて情報を自由に受け取る」というスタイルが定着していく、はず。あとはAppleミュージックのように、Unlimited内だけの「オススメ」がずらっと提示されたら、ザッピング読みがはかどるでしょう。今は有料のものとごちゃごちゃ。商売的にはまあ仕方ない。けれども。
個人的にはあれこれ落として最大限に楽しませてもらってますが、これ10冊登録じゃなくて50冊登録なら、「オススメ!」って言いやすいんだけどなあ……。
(たまごまご)
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