やしろあずきの調査―― 明らかに燃えそうなことを何でSNSに投稿しちゃうの? 経験者に聞くネット炎上の理由と怖さ(前編)(2/3 ページ)
炎上はネットからリアルへと……。
なんで炎上したの?
「ここからは結構プライバシーにも関わってきちゃう質問になるので、個人が特定されそうなワードに関してはぼかして書いてきますが……どう炎上したのか、炎上の経緯について聞きたいです」
「はい。Twitterを使い始めて少したって、ちょっとずつ使い方も分かってきて……そのころから有名人のアカウントを見たり、その人に対してリプライを送るのにハマってきちゃったんですよね」
「なるほど」
「最初は普通に感想とかをリプライで送っていたんですけど、まあ当たり前ですけど返事は返ってこなくて」
「まあそれはしょうがないですよね。ものすごく有名な人とか絶えずリプライ送られ続けているようなものだし……」
「なんだろう、それで有名人のアカウントって有名人が直接見ているものじゃないと勝手にどこかで思い込んじゃったのか、相手が本当にその人本人なんだっていう意識が欠落していたというか……めちゃくちゃな内容のリプライを送ったり、絶対に嫌がるだろって内容のこととかも送るようになってしまって」
「あー……」
「それでこう、バーっと……」
「炎上したわけですね」
「しましたね……はぁ、やっぱり思い出すと嫌な気分になっちゃいますね。当時の自分に対してですが……」
炎上中はどんな感じだった?
「炎上したって気付いたのはやっぱり通知がすごかったから?」
「はい。でも僕はTwitterの通知を元々切ってたんですよ。なので朝起きたら友達からLINEがめちゃくちゃ来てて、『お前やばいぞ!』って……」
「うわあ、朝起きたときそういうLINE来てると一瞬で心臓が破裂しそうになりますよね。出社を忘れてたときとかよくあったな……」
「出社って忘れるものなんですか? まあ、それで何がなんだか分からずにTwitterを見たら……フォロワーがめちゃくちゃ増えてて、例の……炎上する原因となったツイートもありえないくらいにリツイートされてて……」
「何が起きてるか分からなかった?」
「数分間は携帯の前でどんどん拡散されていくツイートを見ながら呆然としてました……。でも、だんだん頭の中が冷静になるにつれて、ああ……やっちまった……って」
「そこで炎上してしまったっていう自覚が芽生えたわけですね」
「はい、でも正直混乱してて、どうしていいか分からず……友達にLINEで相談したら『とりあえずツイート消せ!』って言われて、すぐにツイートを消しました。ツイートを消すことができるってこと自体忘れるほど混乱してましたね……」
「なるほど、炎上の火の元を消してしまおうと。ツイ消しですね。でもそれで『はい、炎上終了』ってことはないですよね……」
「そうなんですよね。今となってはあの時謝罪もせずにツイートを消したのは間違いだったとも思います。でも当時はツイ消ししてちょっと安心もしてました。消したしこれ以上は大丈夫だろう……という」
「でもそうではなかった」
「はい……むしろ消した瞬間『逃げたぞ!!!!』って認知されたみたいで……いや、実際逃げたんですけど、火の元のツイートのキャプチャー画像とか無限に送られ続けてきたし『逃げるなクソガキ』みたいなリプライももう1分間に何通も来て……自分が悪いって自覚はもちろんあったんですが、めちゃくちゃ怖かったですね……」
「まあ、そりゃ怖いですよね……」
「当日、学校もあったんですがさすがに行ける気持ちじゃなくて、休んでずっと布団の中で携帯を見て震えてました」
「Twitterで謝罪するって考えとかは特になかったんですか?」
「はい……というか、自分からもう発言するのが怖すぎて……ツイ消しだけであんなになってしまったのだから、何か発言しようものならどうなるんだ……って、何もできなくなってしまいましたね。そうしたら友達の1人からLINEが来て『もうアカウントを消すしかない』って」
「垢消しですね。炎上した人は大半こうなる」
「ですね。その友達は『垢消しは最後の手段』みたいな感じで言ってたんですが、多分そいつはTwitterで結構フォロワーとか多いからアカウントの価値観が僕と違ってて……僕はもう『そうだ、消せるんだ!! 今すぐ消そう!!!』って感じですぐにアカウントを削除しました」
「何のためらいもなかったんですね」
「はい。消してしまえば見なくて済むし、拡散だってしようがないと思いまして……でもそんなに甘くなかったです」
「あれ? でもアカウントを消したら完全勝利! とかネットで騒がれて炎上が終わるパターンも結構ありませんか? まだ終わらなかったんだ」
「多分、それは表面上ですね。僕の場合もネットだと『あいつアカウント消して逃亡! 完全勝利!』みたく言われてたと思います。ネット上で一見鎮火したように思えても、こっちはリアルがありますから。ネットの炎上はリアルに燃え移ってからが地獄です」
「そうか……リアルではアカウントとか消しようがないですもんね、逃げられない」
「リアルでアカウント削除といったら自殺するしかないですね」
「めちゃくちゃ怖いこと言わないでよ」
「で、まあTwitterのアカウントを消したあと何があったかっていうと、本名や学校、住所まで特定され公開されたんですね。まあ名前とかは元々自分で公開してたんですが……」
「うわあ……」
「Twitterのアカウントを消したことで終わったと僕は思っていたんですけど……やっぱりちょっと気になって全然適当な名前でTwitterのアカウントを作り直し、自分の名前で検索してみたんですよ」
「ほうほう」
「そしたら、僕の関係者しか知りえないような情報も出回っていて……。真相は分かりませんが、身近な人が情報の出どころなのかもと思って。……もう頭が真っ白になりました」
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