地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」からアメリカ合衆国の離脱を表明したドナルド・トランプ大統領。国内外のさまざまな分野から反発が起こっていますが、とりわけエンターテインメント業界では強い拒否反応がみられます。
この動きには、イスラム圏7カ国からの入国を一時的に禁じたときと同じく(関連記事)、AppleやFacebook、Microsoftなどアメリカの大手企業のCEOらも懸念を表明。ウォルト・ディズニーのロバート・アイガーCEOは「信条により、パリ協定離脱をめぐって大統領の相談役を辞めることにした」とツイートしています。
俳優であり環境保護活動家でもあるレオナルド・ディカプリオは「今日、地球は被害に遭った。これまでよりさらに行動を起こすことが大切になる」とTwitterで発言。Faebookではパリ協定離脱について「トランプ大統領のうかつな決断」と名指しで批判しています。
また、歌手のケイティ・ペリーは「あなたの子孫がこの決断とともに生きることになることを思い出して」とツイート。ミュージシャンのジョン・レジェンドも「俺たちはこのばかを止めなければいけない。2018年(中間選挙で)、投票しよう」と怒りを燃やしています。
セレブの中でも特にトランプ大統領との根深い因縁が生じている俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー元カリフォルニア州知事は、SNS上に動画を投稿。「大統領へのメッセージ」として、最優先すべきことや重大な責任は「国民を守ること」だと主張。大気汚染による被害が現実のものだとする例を挙げながら「未来を選んでほしい」と訴え、民衆にも市民運動などの行動を起こすよう呼び掛けています。
ハリウッドをはじめとするエンターテインメント業界は、選挙キャンペーン時からほとんどがトランプ大統領への反発を隠さず、大統領当選の際には相次いでSNSに絶望の意を表明する投稿も(関連記事)。その理由の1つは、ゴールデングローブ賞で女優のメリル・ストリープがスピーチしたように(関連記事)、エンターテインメント業界ではトランプ大統領が排除するとしている「外国人」が多く活躍しており、さまざまなルーツを持つ人であふれているからだと推測されます。
トランプ大統領の主な支持層とされるのは、生まれ育った町からほとんど出ることのないような保守的な白人層、環境問題に関心を持つ余裕もなく、男女平等や人種差別撤廃の概念からも遠い支持者らに対し「気候変動は中国のうそ」としていたトランプ大統領は支持を堅固なものにするため、公約だった「パリ協定からの離脱」を守らざるを得なかったのではという見方が多いようです。
この決断による国際的な信用の低下は避けられず、米The New York Times紙は、「トランプ大統領の決断は中国にとって戦略上のすばらしいプレゼントだった」などと報じ、他いくつかのメディアもこれからは中国が環境問題においてリーダーとなり、あらゆる面でその恩恵を受けることになるのではとの論調で報じています。
エンターテインメント業界に属するセレブや大手企業CEOらがパリ協定からの離脱を批判するのは、それだけアメリカのイメージや未来を見据えることのできる余裕があるからなのかも。しかし近年ハリウッドは中国の“爆買い”が続いており、その筆頭、中国の複合企業である大連万達集団の王健林会長は2016年に「ダークナイト」「インターステラー」などを制作したレジェンダリー・ピクチャーズを買収した際、「これから中国が映画業界での発言権を広げていく」などとその意図を明確に示していました。
人道家としても知られる俳優のリチャード・ギアは4月に掲載された米The Hollywood Reporter紙のインタビューで、チベットの独立運動を支援し中国をたびたび批判したことなどで同国への入国を禁じられ、ハリウッドから事実上干されてしまった自身の現状について語っており、王会長の発言がハリウッドのリアルであるように想像させられます。自由や人権を重んじる発言の多いアメリカのエンターテインメント業界ですが、それらのありがたさを知る機会の多い業界でもあるのかもしれません。
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