2017年6月8日、アメリカのニューヨークにて起こされていた裁判に判決が下りました。2匹のチンパンジー「トミー」「キコ」の代理人として、2匹に人間と同じ権利を求めた原告側に対し、裁判所は「チンパンジーには法律上の義務を負えず、かつ自らの行動に法的な責任を持つことは不可能。よってチンパンジーに人間と同じ権利は与えられない」との判決を下しました。これによって、原告側の訴えは完全に却下された形となります。
訴えを起こしていたのは、動物愛護団体「ノンヒューマン・ライツ・プロジェクト(Nonhuman Rights Project、以下NhRP)」です。同団体はチンパンジーと人間の共通性を訴え、チンパンジーにも不当に拘束されている人間の自由を回復するための「人身保護令状」を請求する権利があるとして、裁判所に同令状の発行を求めていました。
通常ならば「動物にも幸福を求める権利がある」と訴えるところを、チンパンジーに人間と同じ権利を訴える、というのは異例のアプローチと言えます。NhRPは「チンパンジーはモノではなく、法律上の人間と同等の存在である」として、本件以外にも数多くのチンパンジーの代理人として提訴していますが、それらはことごとく退けられています。
チンパンジーの代理人として法廷に立った弁護士、スティーブン・M・ワイズ氏は「重要なのは裁判の結果ではなく、動物と人間が同じ権利を持っているか否か、という問題が争われたことだ。それ自体が世論がわれわれに味方し始めた証拠であり、裁判を重ねるごとに事態は好転しつつある」と、非常に前向きなコメントを発表しました。現在、NhRPと弁護士は共に事件を見直し上告を検討している、とのことです。
(たけしな竜美)
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