岩手大学がスマートフォンを活用した出席管理システムを試験導入します。アプリは富士通が大学側との話し合いを経て開発したもの。Twitter上では行き過ぎた管理ではないか? と議論の対象にもなっています。導入の経緯やその狙いについて、大学側に話を聞きました。
試験運用の開始は1月からですが、アプリは12月末から既にダウンロードができる状態でした。Twitter上では同大学の学生による、「欠席した場合もGPSから位置情報が特定されるため、生徒が完全管理され、代筆が不可となる完全刑務所化アプリ」という投稿が拡散され、物議を醸すことに。その後、大学側から「説明が不足していたために、位置情報の把握について学生の皆さんに不安と不審を与えてしまいました。申し訳ありません」「アプリでは、位置情報の把握は致しません」と学生たちに向けてアナウンスがありました。
誤解が先行し、否定的な意見も多く見られていますが、実のところどういったねらいがあり、試験導入に踏み切ったのか。岩手大学 学務部 学務企画課長の山崎さんに伺いました。
監視ではなく、確認時間の短縮や情報集約によるサポートが目的
――あらためて確認ですが、GPSによる学生の位置情報の収集は無いのでしょうか?
山崎:ありません。GPSによる位置情報ではなく、スマホと教室に設置されたビーコンとの無線接続で出席確認をする仕組みになっています。
――アプリを導入しようと考えた経緯を教えてください。
山崎:もともとは別件で富士通の方とお話をしていた中で、簡単な方法で出席の管理ができないかという話が出たのがきっかけです。Twitterでは代返の取り締まりが目的ではないかという意見もありますが、そうではなくて、出席管理の効率化や、情報集約への問題意識が根底にあります。
これまでは各教員が点呼や出席表で管理を行っていましたが、100人や200人の大人数の授業では、その作業だけで5分〜10分取られることもありました。また学生が1つの授業を休んでいるだけなのか、1〜2週間来ていないのか、個々の教員による管理では大学側で把握することは困難でした。情報を機械的に管理し、大学側に集約することで、「この日を境に来てないよね」というのが見えてくる。1人暮らしの学生も多い中で、病気や精神的な問題などを抱えてしまった場合に、より早く適切なサポートができるようになるのではないかという期待があります。
――試験導入は1月からとのことですが。
山崎:まずは春休み前まで、試験的に導入します。全ての授業で使うわけではなく、1〜2年生の一般教養科目が対象です。学生のスマートフォン保有率が不明である点と、学生がアプリを問題なく使えるかどうかなど、まだ検討すべきところもあります。また今回Twitterで反対意見が目立ったことからも、学生たちに理解してもらうため、さらに説明していく必要性も感じています。
マイナビの調査によると、大学での出席管理は「出欠表・出席カードに手書き」が45.4%。次いでICカードを用いた管理が28.2%、点呼が18.2%(2017年5月、大学生男女401人に調査)。ITの導入は少しずつ進んでいるようですが、まだまだアナログな方式が過半数を占めているようです。アプリでの出席管理は大学側の適切な個人情報管理が求められるのはもちろんですが、山崎さんが指摘したように学生が必ずスマホを持っているとは限らない点など、他にも懸念点があります。しかしそれをさておいても、メリットが多そうなことは確かです。
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