神様ケン・ブロック選手のとなりに乗って異次元のドリフト世界へ行ってみた:東京オートサロン2018(2/3 ページ)
たぶん世界一ぶっ飛べる、それでいて安全な絶叫マシン。(写真170枚)
どんな姿勢でも、白煙で見えなくても、マシンは彼のコントロール下にある
……ん。あれ。でも、何と正確なマシンコントロールなのでしょう。気を取り直してふと冷静になれたのは、マシンの挙動が非常に安定していたからです。よく見るとステアリング操作をむやみに微調整するようなことがなく、クッ、ピタッと一発で決めています。フットブレーキ、ステアリング、サイドブレーキ、アクセルペダルをリズミカルに操り、スパン、スパン、スパンと次々にドリフトを繰り出していきます。
左右に振り返せば、首や体が「G」に追い付かずにヘルメットがロールケージにゴンゴン当たったりもします。しかし、マシンは実に安定しているのです。それはまるで、フィギュアスケートを披露しているかのような滑らかな動き。前半はびびりまくり、後半はそのあざやかな腕前に惚れ抜き、夢中になりました。
ドリフトの華は、魅せる車体とテクニック、公道ではあり得ないクルマの動き、そしてタイヤの白煙。タイヤから白煙が出るほどの走りは、外から見るとそれはワクワクするすごい光景です。しかし、実は車内からは何も見えなくなります。ブロック様がモンスターエナジーの缶を模したパイロンをグルグルと旋回しだすと、はじめは見えていた窓の風景が、一瞬で景色が、そして車内までもが真っ白になります。
……なぜブロック様はこの状態で運転できるのでしょう。「最初にターンしたときに位置関係を把握し、車速や加速度の感覚とともに、旋回中のクルマの動き、遠くの風景の変化、わずかに見えるパイロンなどを手がかりに方向や位置などを見極めている」そうです。いや、ホントに何も見えないんですけれど。
運転操作の余計な微調整がないことと合わせて、ブロック様は自分の走りを頭の中で組み立てて、そのイメージ通りに、至って普通にクルマを走らせているのだと思います。
思えば彼のYouTube動画「ジムカーナ」シリーズや「クライムカーナ」シリーズは、部隊やコースレイアウト、マシンのセッティングに至るまですべて自分でプロデュースしているそうですから、走りをイメージ通りにして魅せる才能にも長けているのです。だからこそ、彼の走りを神技だとあがめ、みんな魅力を感じるのです。
ブロック様はパフォーマンスが終わると、ベンチレーターとドアを開けて走ることで、室内にこもった煙を換気してくれました。ところが、筆者のときだけピットインしてホッと一息したと同時にテールスライドをかまされる、いらぬサービスも。なかなかお茶目な神様ケン・ブロック選手でありました。
1回3分ほどの異次元の世界へ行けるパフォーマンス。でも、これを2回繰り返しただけでリアタイヤはボロボロで終了です。600馬力のパワーでタイヤから白煙を上げ続けるドリフトは、物理的にも、そして観客を熱くさせる力としても、そこまですごいエネルギーを持っています。
近い将来、完全自動運転が実現したとしても、神様ブロック選手の手によるこの体験までは再現できなさそうです。今、「たぶん世界一ぶっ飛べる、でも安全な絶叫マシン」はこれでしょう。
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