「性か死か」勝てば種付け、負ければ食肉行き……過酷すぎる「種牡馬」の生涯 モテない馬はどうしてる?(後編)(4/5 ページ)
夢の舞台は、数々の犠牲の上に成り立っている。
ラムタラ、世紀の大失敗! 種牡馬価値は120分の1に……
当時馬産地として斜陽を迎えていた日高が種牡馬に迎え入れたのが、ヨーロッパから33億円で購入したラムタラ。4戦4勝で英ダービー・キングジョージ・凱旋門賞を連破したスーパーホースでした。
初年度の種付け料は1500万円、112頭の繁殖牝馬を迎えての華々しいスタート。しかし大きな期待とは裏腹に、ラムタラの仔はまるで走りませんでした。きら星のごとき名牝たちを交配相手に迎え入れたのにもかかわらず、中央の重賞レースを制したのはわずか2頭。これはもう……とんでもないレベルの大失敗です。
日本での最終年に迎えたメス馬はわずか31頭、種付け料20万と、完全に失敗と見られてしまいました。結果、2750万円と購入時の120分の1ほどの価値に下がり、イギリスへ売却されていきました。
突然のインポで廃用の危機……セントクレスピンを救った整体術
天皇賞馬2頭や英オークス馬を輩出した名種牡馬、セントクレスピン。実は彼、来日した際に「インポテンス」という、種牡馬としては致命的な症状に冒されていました。
原因も分からず手の施しようもなく、関係者が頭を抱える中、彼を救ったのが馬の整体術の権威であった矢野幸夫調教師。
患部への触診と矯正を要する椎骨への打槌や、獣医師の立ち会いのもとに細胞活性剤の注入を行い、針を数本打つと、セントクレスピンの性能力はなんと復活。数日後、種牡馬としてのおつとめを無事果たしました。しかも一連の治療行為をボランティアで行ったといいます。
矢野氏はこの他にも、ダービー馬バンブーアトラスを輩出したジムフレンチも、同様に復活させました。男の気持ちが分かる男性に救われた彼ら。そんなあかひげ先生の名前は競馬史に残り続けます。
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