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人工子宮に入った兵士たち――機械仕掛けの女性が語る“すこしふしぎ”な未来の物語(1/2 ページ)

ちょっとした時間に味わえるショートショート。

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 コーヒーブレークに、またはベッドで眠りにつく前に、「百万光年のちょっと先、今よりほんの三秒むかし――」から始まる短い物語はいかがでしょうか? 集英社から発売された書籍『百万光年のちょっと先』のとあるエピソードが興味深いので紹介します。


百万光年のちょっと先 古橋秀之 矢吹健太朗 SF ショートショート 小説 「百万光年のちょっと先」

 紹介する物語のタイトルは、西洋のことわざを思い出す「卵を割らなきゃオムレツは」。機械仕掛けの美しい女性がおとぎ話をするように語るその物語は、大規模で長い戦争が行われていたある惑星が舞台のお話で、登場するのは“まだ生まれていない”兵士たちです。

 それは兵隊の補充のための施策として考案された「誕生前徴兵」という制度により誕生した、人工子宮を兼ねた装甲服に入れられた受精卵による装甲兵。18年の兵役が終わるまで生まれることはなく、それにより“流産”はあっても“生まれた人間は1人も死なない”という世界が描かれます。

 この設定だけ聞くと衝撃的で重いSF作品という印象ですが、結末に待っているのは思わず「おっ」と声が上がる意外できれいなエンディング。強烈な内容からの思わぬ展開が胸に来る、そんな“すこしふしぎ”な未来の物語となっています。また“彼女”の優しい語り口による読みやすさも特徴と言えるかもしれません。


百万光年のちょっと先 古橋秀之 矢吹健太朗 SF ショートショート 小説 矢吹先生のきれいなイラスト

 同書籍は、『ブラックロッド』三部作や『ある日、爆弾がおちてきて』などの作品を執筆する、知る人ぞ知る実力派作家・古橋秀之氏の9年ぶりのオリジナル新作。2005年〜2011年まで雑誌『SFJapan』に連載されていたショートショート集で、『To LOVEる』でおなじみの人気漫画家・矢吹健太朗氏がカバー&本文イラストを描き下ろしてそれらの物語に色を添えています。

 今回紹介したエピソード以外では、笑わされるような少し陽気なものから、恐怖を感じるもの、また驚かされたり、時には思わず涙を流してしまうような物語も。「三倍返しの衛星」「恋文ロボット」「パンを踏んで空を飛んだ娘」「ドロン猫と猫獲り名人」など、そのタイトルからもバラエティーの豊かさが伝わるかもしれません。

 単行本に収録されている物語は全48話。過去の連載作に加えて新作ショートショート1本とエピローグが追加されています。価格は1300円(税別)で、すでに書店やAmazonなどで発売中です。



「百万光年のちょっと先」 著者:古橋秀之 イラスト:矢吹健太朗

卵を割らなきゃオムレツは

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