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自動車部品メーカー・東プレはなぜ高級キーボードを作り始めたのか 「REALFORCE」17年の進化の歴史(2/2 ページ)

なぜREALFORCEは、「高級キーボード」という概念がなかった時代に生まれたのか。

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持ち運びしやすい「ワイヤレスREALFORCE」は実現する?

―― デザイン面での進化はありますか?

 近年は薄くて小さいキーボードがトレンドで、実際、そのような要望も少なくありません。省スペース化は開発方針の1つになっていて、電子部品の改良などにより実現しています。並べてみるとよく分かりますが、上部がかなりコンパクトになっています。


REALFORCEらしいシンプルなデザイン


古いモデルと比較すると、かなり小さくなっていることが分かります。角部分はデザインの変化でシャープになっています

 また、今はキーストロークが浅いキーボードも多いですね。REALFORCEは4ミリなのですが、Apple社製品だと1.8〜2ミリくらいだったり。静電容量方式の場合は、バネを小さくすると入力検知が難しくなってしまうのですが、こちらも課題と考えています。

―― 技術的な側面が、デザインにも影響しているんですか。REALFORCEは全て有線ですが、それにも理由がありますか?

 REALFORCEは、内蔵のマイコンでキーの入力状況をスキャンするようになっているんですが、その分電力を食います。電気代に大きく響くほどではありませんが、乾電池だけで長期間動かそうとすると厳しいんですね。

 ですが、「ワイヤレスモデルを出してほしい」という要望はお客さまから上がってきていて、現在、開発中です。

―― 無線のREALFORCE、実現しそうですか?

 ワイヤレスでも使えるレベルまで省電力化できそうだな、という段階まで来ています。改良点はいろいろあるのですが、一例を挙げるなら、入力状況のスキャンを行う間隔をタイピングしていないときは頻繁に、そうでないときはゆっくりにするとか。キーボードの使用状況に応じて緩急をつけて、無駄な電力消費を抑えようという考え方です。

 最初は単三電池2本が約3週間しかもたなかったのですが、今は3カ月くらい。さらに開発を進めて、倍の半年まで伸ばしたいですね。


 REALFORCEが世に出て約1年後の2002年7月、ITmediaニュースは東プレに取材し、「自動車用プレス部品メーカーが作るPC用キーボードが、マニアの間で話題になっている」と記事を公開しました。


ねとらぼの隣の編集部、ITmediaニュースによる16年前の記事。ちなみに、「高級キーボード」という表現は一度も使われていません


一部店舗で入荷即完売するほどの売れ行きを記録し、好評を集めていたものの、東プレはその反響をどう捉えたらよいものか迷っていたもよう

 それによれば、「Realforce 106」は発売から約半年で、販売数が予定の数倍にまで拡大。ネット上では増産を求める声などが現れていましたが、当時の担当者は「現在の引き合いが、一部のマニアだけからのものなのか、それとも本当にこのようなキーボードを求めているユーザーからの声なのか」と慎重な姿勢。半年ほど販売状況を見てから、増産、バリエーション強化といった今後の方針を立てるとしていました。

 2018年現在、高価格、高品質をうたうキーボードは「高級キーボード」と呼ばれ、東プレはその代表的なメーカーとして知られています。また、eスポーツの隆盛を受け、REALFORCEはゲーミング分野にも参入。業務用キーボードの技術は「遊び」あるいは「かつては存在しなかった“ゲームをする”という仕事」に活用されています。

 約15年でキーボードの世界がこんな風に変わるとは、半年間考える時間があった当時の担当者もさすがに予想できなかったのではないでしょうか。

マッハ・キショ松

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