えぇ!? 「ローカル私鉄が新幹線の高架線を走ってる!」 もうすぐ終了「福井の珍現象」を楽しむ:月刊乗り鉄話題(2018年5月版)(1/3 ページ)
えちぜん鉄道の「珍現象」はもうすぐ終了。島根の難読木次線は「♡」でじわり話題に。未体験の人はぜひ!【写真29点】
福井県のローカル鉄道「えちぜん鉄道」の電車が、開業前の北陸新幹線の高架線路を間借りしている……!? こんな珍現象が起きているのをご存じでしょうか。
この珍現象は、2015年9月から始まり、2018年6月23日まで起こる限定施策。2015年の開始時は一般紙でも話題になったほどです。なぜこんな珍しい現象が起きているのでしょう。その理由はえちぜん鉄道の立体交差工事にあります。
鉄道線路の立体交差工事は大掛かり。でも工事中も運休するわけにはいきません。そこで例えば、工事中のみ使う迂回線路=仮線を作って列車の通行経路を確保する手法が取られます。その上で元の線路に沿って高架線路を作り、完成後に切り替えます。完成後、用が済んだ仮線は取り壊されます。
しかし、わざわざ仮線を作らなくても、仮線として使える施設が既にあるならば「それを借りちゃえばいいんじゃない?」という事例もわずかながらあります。仮線が借線、そんなの貸せんなんてダジャレか。いや、真面目な話です。過去に東海道新幹線の高架施設を阪急電鉄京都線が借用した例がありました。東海道新幹線を建設するときに、併走する阪急電鉄京都線の線路も高架化することになりました。1963年、完成はしていたがまだ開業していなかった東海道新幹線の高架線を阪急電車が借りて運行しました。新幹線の高架上にちゃんと阪急電鉄の駅を作って運行したのですね。「東海道新幹線の線路で最初に営業運転した電車は、阪急列車だった」というトリビアは覚えておいて損はないでしょう。
そして時は流れて2015年9月。「新幹線の高架を私鉄が走る」という珍現象が再び起こったのが今回のお話です。現場は福井県福井駅付近。えちぜん鉄道が福井駅と福井口駅の間を高架立体交差するために、仮線として北陸新幹線の高架施設を使っています。
福井県は北陸新幹線(2023年に金沢〜福井〜敦賀間が開業予定)の計画具体化に併せて、福井駅周辺の鉄道立体交差化を中心とした都市計画に着手しました。新幹線の高架駅建設に合わせて、JR在来線とえちぜん鉄道の福井駅の高架化、周辺の渋滞を招いていた5つの踏切の廃止、27カ所の交差道路設置などを行い、鉄道によって東西に分断されていた街を一体化する計画です。
福井駅JR在来線の高架化は2005年に完了しました。次にえちぜん鉄道を高架化するに当たり、先に完成する北陸新幹線の高架線を借用することになったのです。
新福井駅で降りてみた。完成された高架駅に見えるけれど、実は地上との乗降口が上り線側しかない。下り線と上り線は構内踏切で行き来する。高架駅でありながら構内踏切だなんて! 皆さんもぜひ体験してみてもらいたいところ
えちぜん鉄道の高架工事は2018年6月23日に完了。翌日の6月24日から、えちぜん鉄道は新しい「自社の高架線」を走り始めます。
つまり、えちぜん鉄道の電車が北陸新幹線の高架を走る「珍現象」を体験できるのは6月23日までです。未体験の人、急ぎましょう!
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