趣味人には好きなものがたくさんある。それが足を引っ張ることもあれば、趣味人だから人とつながるものもある。
「ヲタクに恋は難しい」は、好きなものがある人間たちの、恋なのかなんなのかわからないモヤっとした感情を描いたラブコメディ。ヲタクのみならず、いろんな若い人の背中を押してくれます。
受け攻め問題の溝は深い
桃瀬成海はBL漫画を自分で描いているほどの腐女子。小柳花子も同人誌即売会ではカリスマコスプレイヤーとして活躍する腐女子。BL好き同士ですっかり最近は意気投合しています。
アニメや漫画の話もすいすいできるよき友達関係。今までこそこそヲタクを隠していた成海には、大切な親友です。
ただし、一点地雷がありました。カップリングの好みが、普段からどうしても噛み合わないこと。
小柳は主人公×ライバル派。成海はライバル×主人公派。
この掛け算、基本的に前に来るのが「攻め」(相手に詰め寄る方)、後ろに来るのが受け(詰め寄られる方)です。
カップリング問題が食い違うと血を見る、みたいによく言われますが、実際に大げんかになるのは最近はそんなに無いような気がします。裏で有るのかな? 「そこは触れない」という暗黙の了解が守られているからかも。静かに距離を置くのがベスト。
ここで、成海の彼氏・二藤宏嵩と、小柳の彼氏・樺倉太郎のカップリング論争がはじまります。
お互いの彼氏が恋愛状態になるのはありか? 違うんだな。カップリング妄想と現実は別物。想像力をフル活用した遊戯であり、BL好きとしての信条を確認する作業です(まあこれはBLに限りませんが)。
ぼくは圧倒的に宏×樺派です。まず「気が強くて口が悪いキャラ」は、受けにしたい。折れるところが見たい。少年漫画的熱血漢は日常的には攻めっぽいんだけど、実は2人きりだと押しに弱い、ってところ重要。特に今回年上ってのも大事なポイント。ついでに「好きなキャラは受け」にしがちというのもある。
一方で「無口で感情が読めないキャラ」が迫ってきた時の圧は、魅力的。背の高い宏嵩はまさにうってつけ。かつ年下。ここ大事。年下が普段と逆転して攻めに転じると、力関係が逆転する。あと宏嵩は能力が全体的に高く「できる男」なのも要素的に重要。ね、宏×樺はいいぞ。
とはいえ、樺×宏の「正統派的な強さ関係と不器用な優しさで押していく」というのも魅力的。まず美形(とする)な宏嵩が、やんちゃな樺倉に押された時の反応がどうなるかは高ポイント。普段からワイワイうるさい方が攻めに回ると、日常の流れで凍った宏嵩の心を、不器用な樺倉の心が溶かしていく……あっこれめっちゃよくない?!
はい、絶対噛み合わないですね。答えないし。
あんまりやると喧嘩になるのでよろしくないのですが、気さえあえばこういう議論自体はとても楽しいものです。
こんな2人の彼氏ですが、それぞれ受け流し方が違います。
宏嵩は基本「相手の趣味に干渉しない」スタンス。でありつつも、趣味に没頭して楽しんでいる成海が好きなのと、趣味嗜好に偏見がないので、なんでも吸収する。だから成海の話はちゃんと聞いてくれます。
一方樺倉ははっきりしており、基本BLに興味がない。BL本を買う小柳を見て、それに付き合うつもりもなく、さらっと自分好みの漫画コーナーへ。おたがい文句を言わずOKしているので、それはそれで楽。
やっぱりお互い、趣味を最大限に分かち合える相手です。興味ある人・無い人、真逆の思想のカプ論の間柄、うまく交わしながら、お互い楽しい方向に話をもっていき、あとは踏み込みすぎないのが、ヲタクとしてクレバー。
男子はそういえば百合カプでこういうのあんまりないですね。受け×受け多いからなあ。
ネトゲをやろう。
ファンタジー系のネトゲをやることになった4人。個性の強い4人のことです、作ったキャラの方向性はバラバラ。
- 成海:エルフのふわふわかわいい系アバター。でもジョブは前衛で突っ込んでいくアサシン。
- 樺倉:人間男子の、正々堂々正面に立つ剣士。
- 小柳:エロかっこいいセクシー魔術師。無(理のない)課金勢。
この中だと実は成海がレベル82と飛び抜けて高い、というのがいかにも「らしい」。成海はハマるとのめり込むタイプだから…。
ではゲーマー宏嵩はというと「他人との交流がめんどくさい」「ソロプレイヤーに優しくない」という理由で、そこまで好きではない様子。別の回によると、彼自身はソシャゲやRPGのようにキャラが育つよりも、アクションゲーのように自分が訓練してうまくなる方が好きだそうです。
とはいえ「やることはやっている」のでこうなる。
- 宏嵩:変態ネタ装備+廃人武器の、効率重視スゴテク弓使い(レンジャーかハンターかな?)
ネトゲって弓強いこと多いよね。
気になるのは、こういうゲームを普段やらなそうな小柳がログインしていること。実際コスプレイヤーらしく課金装備はしているものの、レベルは全然あがっていません。じゃあなぜ、ネトゲをやろうと思ったのか?
樺倉「お前ら見てて うらやましくなったかな」
毎日リアルで会っている成海と宏嵩、樺倉と小柳。しかしオンライン上で、ネトゲでも会いたい、という感覚(ちなみに小柳は気が強い割に超絶寂しがりや)。
なんでわざわざ、と思うかもしれませんが、そんなに複雑なものではないと思います。例えば恋人と一緒にいたとしても、Twitterは相互フォローでいたいとか、LINEはついついスタンプ連打しちゃうとかと同じ。ネットでもつながっていたい、と思うのはそんなに珍しい感覚ではないです。
自分のアバターを持ってネトゲで会いたい、となるのもある意味必然。極端に束縛するわけじゃない、ちょっとすねた距離感でログインしてくるのが、小柳らしい。
一方、成海がログインしている時に、普段入ってこない宏嵩はすぐさま駆け付けました。彼女は「ゲーヲタだから」と片付けているので、このシーンでも「…なんかしたっけ?」という感想になります。
気づけよ! お前に! 会いたいんだよ! 成海よぅ! ……そういうところが好きなんだろうなあ宏嵩は。かわいいやつよ。ただのゲーヲタじゃないんだよ。
なおネトゲでのコミュニケーションは、今後別のところで大きくピックアップされるようになりますので要チェック。
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